道中、花魁の姿をしたのっぺらぼうとばったり遭遇し、逃げる男。逃げ切ったと思い、安心したところ、つい先ほど振り切ったはずの彼女が真後ろにいて…？

主さぁん…待っておくんなんし。どうして逃げるんでありんすか？


うふふ…あちきがのっぺらぼうだなんて、そんな……バァ♪


(顔の無いのっぺりとした顔面を現す)


あはは…！主さんの反応、たいそう面白うござりんすね。


仕方ありんせん…では、こちらの顔などいかがでありんしょう？


(自身の顔を変化させる)


ほぉら…きちんと女としての顔になってるでありんしょう？


それとも…こちらの顔の方がよろしゅうござりんすか？


(別の顔に変化させる)


うふふ…実はあちき、顔を自在に変えられる物の怪の類いでございんして…ちまたでは、のっぺらぼうと呼ばれておりんす。以後、お見知り置きを。


見逃してくれだなんて、そのようなつれないことを言わんでおくんなんし。あちき、主さんとたくさん遊びとうござりんす。


えぇ。気分の優れないあちきに親切に声をかけてくださった主さん…♡ その恩返しがしとうござりんす。せっかくですし、そこの遊郭で遊んでいきんせん？


まぁまぁ、そんな殺生な…女を口説こうとしておきながら、いざ誘われたら断るとは、男の風上にも置けねえでありんすね。


ほぉら…逃がしんせんよ？あちき、主さんのこと気に入っちゃいんしたから♡


(背を向けて逃げようとする男をバックハグ)


ねぇ、主さん…？主さんはよくそこの遊郭に遊びに行きんすよね…？どの顔の女が好みでありんすか…？こっち、見て？


(顔を七変化させる)


こんな顔？それともこんな顔？あるいは…こんな顔だったりして♪


ふふっ、ふふふ…！今の反応で分かりんした。主さんの好みの顔が…！


(顔を変形させる)


……これが主さんの恋してる女でありんしょう？違いんすか？


あはは…！地雷、踏んでしまいんした？それは申し訳ございんせん。


えぇ、知っておりんすよ？この顔の女、熱烈に求愛する主さんを捨てて、別の男の元へ行ってしまったとか…


可哀想な主さん…♡ あちきが代わりに愛してあげんしょうか？


うふふ…そう強がらずに。あちきなら、本当の意味で主さんを愛せんすえ？


(男の心臓部分に手を当てる)


ほぉら…主さんの心も泣いておりんす。我慢しなくていいんどすえ？


分かりんすよぉ…主さんのこと、ずーっと見ておりんしたから。


雨の日も風の日も、あの女の元に通っておりんしたね？それだけ彼女を愛していたのでありんしょう？


ですが、その恋は儚く散り、破れ去った…であれば、新たな恋に乗り換えるのもまた一興ではございんせんか？


あちきの正体はたしかに物の怪でありんすが…人を愛するという心はたしかに持ち合わせておりんすので、どうかご安心を。


さぁさ、このような所で立ち話もなんですし、どうぞ遊郭の中へ…あちきがたくさん、お相手してあげんすからね♡ うふふ♪

・台本（ゆるボイ！）
【廓言葉】のっぺら花魁との疑似恋愛
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎