縁のないあなたは、出会い系で異性に不慣れでも愛してくれる人を求めて会うことに。
一見明るくてあなたを優しく受け入れてくれそうな彼女は、その心の奥に重い感情を宿していた……

おっまたせ～！！

一応確認するけど、私と待ち合わせしてるのは君で合ってるよね？
さっき送ってくれた格好と同じだし、うん、おっけ。
直接会うのははじめてだね。

結構、待たせちゃったかな？
待ち合わせ場所このホテルの前って言ったの私なのに迷っちゃって！　えへっ。

待ってない？

そんなそんな、さっきこの辺ぐるぐる迷ってた時に君の様子、ちらっと見えたけど、退屈そうにスマホ見てた気がしたよ～？

あっはは～、な～んて。
わかってるよ？
そーゆーの、優しさなんだもんね？
嬉しいよ。ありがと。

なになに～？
私、写真よりきれい？
そ、そうかなぁ～？
えへへ～！

でもそうなら、もしかしてもしかして～、君とのデ・ー・ト、だから私も気合い入っちゃったってことなのかも！

そうだよ～？
き・み、だからだよ～？

あっはは～顔真っ赤っかだぁ！
お顔は正直なんだね～！
かっわいい。

でもでも君も、今までのメッセージのやり取りしてた時に想像してたよりいい感じだよ？
てかあんまり自撮りとか慣れてないでしょ。
結構かっこいい。

そーゆーとこも含めて、かわいいし、なんというか……信用できる？　って感じ。
私、君みたいなかわいい男の子、大好きだし。

かわいいって言うなって？
そーゆーとこだよ？

ねえ、まだ君、女の子には慣れてないでしょ。
彼女とかまだって言ってたもんね～。

あっはは～強がらなくたっていいんだよ？
余計に慣れてない感すごいし。

手、出してくれる？

ぎゅっ。

ほら、慣れてない。

手ぐらい、これからいっぱい繋いじゃうのにね。
これじゃ、今夜すらもたないぞ～？

あははっ、君のウブいじりもほどほどにしなきゃだ。
これからいっぱい慣れていくんだもんね～？

そうだ、それよりさ、今日はいきなり予定変更しちゃったのにありがとね。
この前メッセージで「今夜のプランは全部俺が考える！」って言ってくれてたのにさ。

さっき急に、「なんか食事とか買い物とかいろんなことするより、素直に行くとこ行っちゃいたい気分」だって送っちゃって。
ふつーに迷惑で無理なお願いなのはわかってたし、もうほんと全然、ダメって断っちゃってよかったのに、それでも私に合わせてくれるんだもん。
嬉しいな。
好きになっちゃう。

せっかくプラン考えてくれたのに、わがまま聞いてくれてありがと。

な～んて、最初から予定通りだったり？
誠実そうでも、男の子は男の子だし、そういう一面も……？

その顔は、図星？
図星なのかなぁ～？

ふーん、ちょっと想像はしてた、かぁ～。

あはっ、これ以上追及しちゃったらかわいそうだよね。
はい、このお話はおしまい！

それじゃそれじゃ、君も待ちきれなくなってることだろうし、お部屋にゴー！だね！

こっちだよ。

はい、君の大人の扉、オープン～！

ど？ど？
雰囲気すごいっしょ？

……って、大丈夫？
君、すっごいガチガチじゃん。

お部屋まで来ると、いよいよだな～とか、思っちゃう感じ？

まあ、それもそっか。
いいよいいよ、誰だって緊張はつきものだもん。
よしよ～し。

こーら、落ち込まない落ち込まない！
男のくせに情けないとか、別に思ってないから。
最初だよ？
むしろ絶対上手くやってやる！とか変な力入るのはよくあることだよ。

あっはは！　嫌いになるとかないから。
ほんと、ないない！
だって、予想通りだし。

私は君のそういうところ、好きかもしれないよ。

かもしれないって何って、君は細かいこと気にするな～。

う～ん、そうだなぁ～。
前にいたんだよね、ウブなふりしてたんだけど、蓋を開けてみれば女を見下してるようなきっもち悪いヤツが。
男の方こそ、いいときは尽くしてくれるけど、やっぱり人の都合なんて考えないし、本能でしか動いてない勘違い猿ばっかなくせにさ。

あっ、いやっ、違うの！
ご、ごめんね！？
君の前で、他の男の人の話なんてしちゃいけないよね！
それに、君のことそんな風になんか思ってないからね！？
私、君のこと大好きだし！

そうは言われても、不安、かな？
（囁き）君の目の前で他の男の人のこと考えちゃうわるーい私のこと、君以外考えられないようにさせなきゃだね。
にしし。

な～んて、君にはハードルが高すぎるかな？

大丈夫、無理なこと求めないから。
出来る女ってのはね、ヤワな男の子をその気にさせるのも大事なスキル。
任せんしゃい！　ってね！

そうだ、お話、聞かせてよ。
私、君のことが知りたいんだ。

どうして私を選んでくれたの？

自分みたいな男性がタイプだって書いてあったから？

そうだね～、君みたいなかわいいのが好きかな～。

ってことは、自分のことちゃんと愛してくれる人と会いたかったんだ？
誰だって愛されたいもんね～。
もちろん、私は君のこと、愛してあげるよ～？

じゃあさ、私のこと好き？
出会ったばかりだけどさ、ど？
好きになれそ？

わ、わぁ～っ！
嬉し～！

……よかった。

それなら、話は早いね。

相思相愛ならさ、結婚しちゃおっか。
私たち。

どしたの？
そんなに驚くことかな～？

それともそれとも、恋愛経験ほとんどないから、結婚とか、そういう話になるのも慣れてないのかな？
そっか、そうだよね！

いいんだよいいんだよ、プロポーズは男の方からとか、そういうのってくだらないと思ってるの私。

たぶん、君から言われるのなんて、待てないから。

早すぎる？
早すぎないよ？

私はね、いっぱい知ってるんだ。
男の都合よさっていうのを。

君にはまだそんな気なんてないってわかってるんだよ？
というか、君がそんなんじゃないってわかってるから会ってるんだよ。

でも、信じて裏切られるくらいなら、離さないようにしてしまいたいの。

だってさ、いくら純粋そうな君だって、アプリで出会い探して私と会ったわけじゃん？
そんなんじゃ、軽い気持ちかもしれないし、私じゃないとダメなんて思ってそうに思えないし。

ねえ言ってくれる？
私じゃないとダメだって。
私以外もう一生愛せないって。
だから責任取ってくれって。

困らせちゃったかな。
まいっか、焦る必要はないし。

どうしたのって、最初から私はこのつもりだったんだけどな～？

一晩の相手なんてするだけ虚しいんだよね。
終わってみれば結局私のことなんて興味なさそうなのばっかりだし、いい感じって思った男もすぐ離れてく。

私がね、今度いつ会える？　って連絡したって向こうは何にも答えないんだよ？
何回も何回も何回も何回も聞いたのに、黙ったまんまなの。

私って一体、何者なんだろう。

私が誰かから愛してもらえる方法なんてこれぐらいなんだけどね。
でも、好きって、愛してるって、独りよがりのまんま返ってこない気持ちほど死にたくなるものはないかな。

だからさ、受け止めてくれる人じゃないとやだし、いないなら無理にでも受け止めてもらおうって決めたんだ。

ね？
結婚して、一緒に住んで、ずっとずっと私のことだけ想ってくれる人がいたら、ずっと愛してもらえるでしょ？

ちょっと都合が悪くなっただけでいなくなったり、私のことを一生拒んだりとかさ、なんかもう、やってらんないんだよね。
疲れた。

ねえ、愛してよ。

嫌かなぁ？
そんなのやだよ。
さっき私のこと好きだって言ってくれたじゃん。

また君も裏切るの？
やだよ？
私は何度捨てられればいいの？
どれだけ傷付けば許されるの？

そうだね～君にはそういうの関係ないかもね。
んふっ、恨むなら世の中の男の人を恨んでね？

私は悪くないの。

可哀想だと思わない？
生まれてから、愛してくれる人なんて誰一人いないんだ私。
弄ばれてるんだよ。
幸せどころかしょうもない快楽の踏み台としか思われてない。
たぶん人として思われてない。

私さ、別に私である必要ってないよね。
生まれてなくても何の影響もないでしょ。

でも、君が私に毒されてくれるなら、はじめて、私が私で良かったなって思える気がする。

生きてる意味になれるよ。
たったひとつ、私の。

生きてるって、何なのかな。
こんな世界でさ。

君は優しいね。
突き放さないんだ。

でも、言葉だけならいくらだって優しい言葉、知ってるよ。

結婚、しよう？
そしたら私にだって、生きてる意味あるって、信じてみてもいいかなって思う。

お互いのことよく知らないから、かぁ～。

私はね、ちゃんと君のこと知ってるよ？
言い訳のつもりか知らないけど、逃がさないから。

そりゃあね、私だって誰でもいいわけじゃないよ。
だって、私のこと愛してくれない人しかいないんだもん。
そんなのお断りだからね。

君と会うって話してから、よ～く調べたんだ。

ほんとの名前に住んでるところ、恋人とか身の回りの女の存在、もちろん過去の経験も含めて調べたし、逆に君のことを好きな人がいないかとかも全部、ちゃんと。
あと生活サイクルとか悩み事とか趣味とかでしょ？
隠し事なんてされたらやだもんね。
それに君の好きなモノは異性のタイプにシチュエーション、フェチとか言われたい台詞とかそれはもうとっことん。
私と全然違うのが好きだったら困るし、あと、出来れば合わせてあげたいじゃん？

最後の方のやつは、なんだか調べてて恥ずかしくなるし、他の女のこと考えてるんだろうなって痕跡もあったけど、それは、まあ、私に会うまでのことだし？　大目に見てあげたけど。

でもね、君のことを調べれば調べるほど、私のための王子様なんじゃないかなって気がしてきたんだ！

浮ついた様子もなく一途になってくれそうで、私から離れないでいてくれるんだろうなぁ～って、これから何十年も一緒に愛し合う姿が簡単に想像できるの！

もうさ、君しかいないんだよね。
確信しちゃった。

ね？
だから結婚しよ？
私も君のことだけを愛すから、君も私のことだけを一生愛してよ。

嫌？
そんなこと言わないでよ。
やだ。
君の口からそんな言葉聞きたくない。
君に拒絶されたくない。
君に嫌われたくない……！

私はこんなにも愛してるのに。

それとも、私が言葉だけじゃ信用できないみたいに、君も言葉だけじゃない愛の証拠、求めてるのかな。そうだよね私イジワルしちゃった。

十分じゃないよ？
そもそも私の気持ち、これで全部じゃないんだ。

見て。
私の本気。

何って、見れば婚約指輪だってわかるでしょ～？
でも、ビックリしちゃうとそんな反応になっちゃうものか。

なんでって、だから、君のことを調べた時に確信しちゃったって言ったでしょ？
そしたら用意するものは用意するよね普通。

中途半端に伝えて私の気持ちが届かないのが、一番怖いことだもん。
出来ることは、何だってするよ！

だから。

じゃ～んっ！
婚姻届！

ん、そだよ？
最初から私はこのつもりだったよ？

だって私は君を愛してるから！

答えが変わんないんなら、待つことなんてないもんね。

末永い将来を誓い合って、その喜びのまま、愛し合う。
それがね、私が今まで叶えられなかった夢なの！

どれだけ幸せか、どれだけ気持ちいいか……
想像なんかきっと超えちゃうんだろうなって思ってるんだ！

もう、疑心暗鬼の恋愛ごっこなんてしたくない。
信じられる愛に、溺れたいよ……

やーだ、帰ろうとしないで。
今日は、ここで一夜を過ごす約束でしょ？
そしたら、そのまま役所に行って、晴れて結ばれたら、ひとつ屋根の下でさいっこうの日々を過ごしていくの！

そうだ、挙式の話がまだだったね！
こればっかりは君に相談しなきゃって思ってたから。

君が望む限り、盛大に開いてあげるから！

何の心配もいらないよ！

……私のお金が、素敵な思い出になるって思えば少しは救われるから。

と～に～か～く～、何でも君が心配することはないの！
その分だけ、ずっと一緒にいてくれるって誓ってくれればいいんだよ？

誓えない？

（囁き）大丈夫、誓わせてあげるね。

どしたの？
首に何か当たってる？

そうだね、はさみ、だね。
たまたま携帯してたから、つい。
小さいけど、血管は切れると思うんだ～。

あ～違うの、切るのは君のじゃないよ？

これを、私の首に当てて……

君の罪。

君にすら見捨てられるなら、もう、生きる理由とかないから。
どうせなら、君に見せつけてあげる。

だって、君が選んだことなんだよ？

止めたいなら、誓ってよ。

指輪、はめて。
婚姻届、書いて。

さん……
に……
いち……

ほんと！？

うん、手、出して？

　（指輪をはめる）

綺麗……

今まで生きてきた中で、一番綺麗な光景だ……

うん！
君のこと、信じるよ！

でも、ちゃんと、こっちも書いてね？

　（婚姻届記入）

わ、わぁ～っ！
君が、本当に誓ってくれた！

嬉しい！嬉しい！嬉しい！嬉しい！

幸せ～！

……幸せ。

私ね、君のこと、思う存分愛したい気分なんだ！
ドキドキしててゾクゾクしてるの！

だって、だって、今から、夢が叶うんだよ！

君の身体、抱きしめたい。

はい、ぎゅ～。

もう、離さない。
もう、どこにも行かせない。
もう、ずっといっしょだから。

んふっ。

・台本（ゆるボイ！）
ウブ彼歓迎☆好きになっちゃえ！誓っちゃえ！
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩