これまで数々の鬼を封印してきた手練れの巫女は、かつて己の手で封印した鬼童丸という名の鬼の様子を見に行く。ヘラヘラした態度を崩さない彼を黙らせようと、清めの札をその口に貼り付けるが、これが彼に逆転の一手を与えることになってしまい…？

な〜…姐さんよぉ、いい加減こっから出してくんね？俺もう悪さしないからさぁ…


うわ、辛辣ぅ…そこまで言うことなくね？俺泣いちゃうよ？まじで泣くよ？


はは…とりつく島もねえってか。流石『鬼封じの巫女』。俺程度の雑魚鬼の相手をする気もねえってか？


へ〜…姐さんも苦労してんだな。けど、なんやかんや鬼相手に無傷って凄くね？姐さん、ホントに人間？


(口に無理やりお札を貼り付けられる)


むごっ⁉︎ むむむ⁉︎ んー！んー！


(お札を自力で剥がす)


うぉい！いきなり清めの札貼るとか酷くね⁉︎ これが鬼に対する仕打ちかぁ⁉︎


あ、そっすよねー…姐さん、その辺の鬼より冷血じゃね？ちゃんと人の血流れてる？


はは…んな睨むなよ。変な性癖、芽生えんじゃん？


でもさー、こうしてなんやかんや、俺のテキトーな話に付き合ってくれる姐さんって、実はめっちゃ優しい？


へ〜…なるほどぉ？俺が悪さをしないように、見張ってる…つまり、姐さんは俺のことが好き？


あ、嘘嘘、冗談。清めの札構えないで？それ、地味にキツイんだから…


でもさー、姐さんみてーないい女に捕まるなら、男としちゃ、普通に本望だよな。ちょっとしたご褒美的な？


ははは…救いようがない？そりゃそうだ。俺は鬼だし…救いなんて求める種族じゃねえよ。


あ、そういや姐さん…さっき俺の口に貼った清めの札、さっさと処分した方がいいぜ？じゃねえと…


(自身にかけられた封印を破る)


…こうして悪〜い鬼が解放されちまうからなぁ？


どうしてって…さっきの清めの札にこっそり俺の妖力移して、札そのものを俺専用の起爆札に変えただけ。


清めの札自体は強力な霊力を持ってるからなぁ…それに鬼の穢れを移しちまえば、もうそれは完全に俺の物。封印を破るための爆発物として利用するのは、お茶の子さいさいってこった。


はははっ！もう一度封印する？この俺を？


残念ながら、そりゃ無理だぁ…なぜならっ…！


(巫女の首を片手で絞める)


こっちが先に姐さんの動きを封じてしまえばいいんだからなぁ…！


おいおい…余計な抵抗すんなよ。ますます興奮すんじゃん？


(もう片方の手で腹パン)


ふぅ…片手で絞めて、片手で殴る。超合理的な喧嘩の仕方だろ？


(腹を抱えてうずくまる巫女に顔を近づけて囁く)


いいザマだなぁ、姐さん…どうだ？見下してた鬼に屈従させられた気分は…？


ははっ…！そんな涙目で睨んでも、なーんも怖くねえよ？さっきまで俺を見下してた冷酷な目とは大違いだ…


せっかくの機会だ…姐さん、俺に穢されてみない？他の鬼の相手なんてしないでさ、これからは俺だけの相手シてくれよ。な？


いやぁ…姐さんのこと、気に入っちまったしなぁ。今までずっと俺を冷たくあしらってきた姐さんが、俺に靡いたらどんなに可愛いだろうなって思うと、なんか興奮するし。


だから…姐さんは今日で人間卒業。俺と同じ鬼になろっか？俺の血を飲んで、さ…


平気だよ…姐さんならきっと俺の血に適合できる。俺、姐さんとなら相性バッチリだって確信してっから。


(自分の指を切る)


ほら…俺の血、舐めて？指先軽く咥えるだけでいいから…な？


(彼女の口に指を突っ込む)


は、ははっ…！姐さんが俺の血で穢されていく…！さいっこうだなぁ！あははっ！


(鬼と化した巫女を見て歓喜)


……鬼化、完了ってな。姐さん、どう？鬼も案外、悪くねえだろ？


そうそう。俺ら、もう同族だから。争う必要ねえよな？


……え？姐さん、今なんt……ぐごっ！


(鬼巫女の妖術でぶっ飛ばされる)


姐さ〜ん…いきなり何すんだよぉ…痛えじゃん…


…マジ？俺の上に立つって？鬼になっても俺のこと、尻に敷く気満々ってこと？


ははっ…！さっすが姐さん！俺の見込んだ女はやっぱ違うねぇ！そうこなくっちゃぁ！


(立ち上がる)


んじゃあ、改めまして自己紹介を…俺は鬼童丸。酒呑童子の息子にして、次期最強の鬼…になる予定。またよろしく頼むぜぇ…鬼の姐さん？きひひっ♪

・台本（ゆるボイ！）
己の手で封印した鬼童丸という名の悪鬼にいっぱい食わされる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎