ん……あれ、私……そういえば仮眠をしようと思って──いけない、少し寝過ぎちゃった。
これ、アシスタント君の上着……私に貸してくれたんだ。
アシスタント君の服、やっぱり良い匂いがする……えへへ、なんだか落ち着く。
私みたいな地味でパッとしない子を「先生」って呼んでくれて、私の事をいっつも気遣ってくれて。
最初は短期間のアルバイトだったのに今じゃ私の為にって毎日色んな事をしてくれて──あんなに優しくされたら私、本当にアシスタント君の事が好きになっちゃうよ。
我ながら本当にチョロいなぁ……でも、流石にあんな事されたら私じゃなくても好きになっちゃうんじゃないかな。
好きになるって……私以外の人が？アシスタント君の事を？
なんかそれ、ちょっと嫌だな。
あの子は私だけのモノじゃないけど、それでも──あれ？
そういえばアシスタント君……上着だけ置いて何処に行っちゃったんだろう？
荷物は置いてあるし、まだ帰ってはないよね……買い物にでも行ったのかな。
アシスタント君の事は気になるけど、そろそろ締め切りも近いんだし私も本気出さなきゃ。
それじゃあまずはコーヒーでも淹れてこようかな──って、うわぁ⁉
うぅ……久しぶりに転んだ……痛い。
これ、アシスタント君の鞄に躓いて……うわぁ、中身が散らばっちゃった。
早く片付けないと……何かの書類っぽいけど、アシスタント君ってば管理の仕方が雑だなぁ。
散らかしちゃったついでに、私が整理しちゃおっか。



あれ……この内容……嘘……



あ、おかえり～上着、貸してくれてありがとね。
それと、荷物を置きっぱなしにして何処に行ってたの？
コンビニまで買い物……それにしてはけっこう時間が掛かったね、道中に何かあった？
「知り合いからの電話が長引いた」……なるほど、それで帰りが遅くなっちゃったんだ。
因みにだけどその電話って、鞄に詰め込んでた書類に関係あったりする？
盗み見るつもりはなかったんだけど、アシスタント君の鞄に躓いた時に中の書類が飛び出しちゃって……その時にちょっとだけ。
アシスタント君、就職先が決まったんだね……おめでとう♪
でも、バイトの期間は「就職先が決まるまで」だったし……これでアルバイトもおしまいだね。
なんか寂しいけど、大切な人の努力が実ったんだから私は、私は──

ごめん、やっぱり私……喜べないかな。
だってさ……その書類に書いてある通りならアシスタント君、すっごい遠くに行っちゃうじゃん。
そうなれば私はもうアシスタント君に会えなくなっちゃうし……私、そんなの嫌だよ。
ねぇ、今からでもその内定辞退してさ、私専属のアシスタントになってよ！
お給料ならたくさん出せるし住むところも私の家に二人で一緒に住めば良いから……！
おねがい、私と一緒に居て……私を置いていかないで……！
ねぇ……なんで謝るの？
ご、ごめんね……私、どうしてアシスタント君が謝ってるのか、よく分かんないや。
だって、私は君が居ないとダメなんだよ⁉
それなのに、君は私のアシスタントを辞めようとするの……？
そんなの──そんなの絶対に認めない！

えへへ……ご、ごめんね。ギュって首を絞められて、苦しいよね？
でもね、私だって今、君と同じくらい苦しいんだよ！
ずっと傍に居てくれた人が、大好きな人が私を置いて遠くへ行こうとしてる……そんなの、私はそんなの絶対に認めない！
私は君の事、絶対に離したりなんかしない！
あのね、首を絞められて死ぬ時って息が出来ないのが原因じゃなくて首の骨を折られちゃって死んじゃう事の方が多いんだって♪
あんまり力の強くない私にはそんな事出来ないから、しばらくはこのままでも大丈夫だよ♪
だから私の気持ちが伝わるまで、絶対に楽にはしてあげないから！
だからお願い……君が窒息しちゃう前に私の事を選んで。

私はこんなに君の事を愛してるから……だからお願い、君も私の事を愛してよ……

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレな小説家さんはアシスタントさんを窒息する程愛してます
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹