真面目で成績優秀、誰からも好かれる貴方の幼馴染──その正体は貴方の身を護る忍者の棟梁であり、アナタの許嫁でもあった。
名家の生まれであるアナタと、現代社会に紛れる忍びを束ねる幼馴染……そんな二人は、どういう訳か見知らぬ部屋で同衾していた。
状況が呑み込めないアナタと何かを必死に隠そうとしている忍び、そして開いたままになっている部屋の扉……この状況は一体？

うぅ、どうしてこんな事に……アイツら、酔った勢いでこんな事をするなんて……私だけならまだしも、よりによって主君（しゅくん）にも薬を盛るとか……流石にちょっと、度が過ぎてますよ。
でも、元をただせば私が奥手過ぎたのが原因、今の立場に甘えて成り行きに任せようとしたのが事の発端（ほったん）な訳で……はぁ……このままこうしていても埒が明きませんね。
主君の様子は……まぁ、この様子なら気付く事もないでしょうね。

それでは失礼します、主君……もし起きているのなら、天井の染（し）みでも数えててくださいね。




あ……起きましたか。
おはようございます主君、本日もよくお眠りでしたね。
本日は学校も休みですし、お家での予定も……はい？どうかしましたか？
ここは何処か……まったく主君ったら、此処は忍衆（しのびしゅう）の館ですよ。覚えてないのですか？
昨日からお屋敷の大掃除が始まって、護衛も兼ねて主君は此方に寝泊まりをする事になった……思い出しましたか？
そろそろ朝食の時間になるそうなので、一緒に食堂まで──はい？私の服装が乱れてる？
あぁ、えぇとこれは……そ、それより早く食堂に行きましょうよ！私もうお腹が空いてしまって……ほらほら……はい？
「窓の外は真っ暗」ですか……あ、えっとその……そ、そうでした！朝食じゃなくて夕食でした！
あはは……私ったら寝ぼけてたみたいです、ごめんなさい！
まぁとにかく、皆が待ってますから……ってちょっと、なんで扉を閉めちゃうんですか！？
せっかく開いたのに……って、その張り紙は見ちゃ駄目です！
み、見られてしまいましたか……この部屋、どうやらその張り紙に書かれてる内容を達成しないと出ることが出来ないらしいんですよね。
部下の忍び達が「棟梁（とうりょう）は奥手過ぎるんだ」って、酔った勢いで主君と私をこの部屋に押し込めたんですよ。
主君の許嫁（いいなずけ）であるという立場に甘えて「その時がくれば成り行きでどうにかなるだろ」って気を抜いてた私を見かねた部下たちがこんな事をしたんですよ……まったく、時代が時代なら全員残らず切腹ですよね。
……はい、此処から出る為に僭越（せんえつ）ながら主君の事を抱かせて頂きました。
守るべき人の寝込みを襲うなど護衛（ごえい）としてどうなのかと思いますが、今回はそれしか選択肢がありませんでしたから。
最も、主君がその扉を閉めてくれちゃったせいで、私の勇気ある行動は無駄になっちゃったんですけどね……ってちょっと、どうしてベッドに戻るんですか？
いや、この部屋を出る為だっていうのは分かりますけど……え？
「そっちばかり楽しんだのはズルい」……って、別に楽しんでた訳では……いえ、その……
そ、それでは今度は主君が……はい、分かりました……それではその……どうかお手柔らかに、お願い致しますね。

・台本（ゆるボイ！）
護衛の忍者と「〇〇しないと出られない部屋」に閉じ込められた……筈なのだが
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹