【環境音　雨音】

こんにちは……もしかして、貴方も雨宿りですか？
えぇ、実は私もなんです……ビックリですよね。
さっきまであんなに晴れていたのに、急に降り出して……おかげでびしょ濡れになっちゃいました。
はやく雨が上がってくれれば良いですけど……この調子だと、しばらくは止みそうにありませんね。
そういえば、貴方は何か大事なご用事でもあったんですか？
だってこの辺り、どこを見ても畑や田んぼばかりで、貴方のような人が訪れる理由があんまり思い浮かばなくて……
もし良ければ、教えてもらえたりします？
「景色を見ながら散歩をしていた」……なるほど。
確かに、言い方を変えれば風光明媚（ふうこうめいび）って感じですからね──私ですか？
えぇ、私はこの辺りに住んでる者ですよ。
この辺り、景色は良いですけど住んでる人なんてほとんど居ないんです。
ですから今日は、こんな田舎に足を運んで下さりありがとうございます♪
人が居ない理由ですか？
実はこの辺り、少し不気味な言い伝えがあるんです……それを怖がる人が多いせいか、今でも滅多に人が寄り付かないんです。
うふふ、気になりますか？
でしたら、雨が上がるまでの暇潰しに教えてあげましょう。

貴方は濡（ぬ）れ女子（おなご）、という怪異をご存じですか？
彼女はとても惚れっぽいようで、自分との話に付き合ってくれた男性に付きまとったり、時にはどこかへ連れ去ってしまうんだとか。
それはそれは執念深く、一度気に入られてしまったら命を絶つ以外に逃げられる方法は無い……昔からそう伝えられているのです。
因みに「濡れ女子」というのは彼女が雨の日に現れたり、もしくは彼女が現れると雨が降るからだそうです。
彼女は傘を持たず、雨宿りを口実に気に入った男性に近付くんだとか。
そう、ちょうど今の私みたいに──


うふふ……捕まえた、もう逃がしませんよ♪

・台本（ゆるボイ！）
雨宿りと濡れ女子
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹