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巫女に化けていた山神様に攫われる
written by 霜月鷹
  • ファンタジー
  • ヤンデレ
  • 巫女
  • 神隠し
公開日2022年10月01日 15:39 更新日2022年10月01日 15:39
文字数
2208文字(約 7分22秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
巫女に化けた神様
視聴者役柄
踊り子
場所
山奥の神社
本編
戻られましたか、今年の舞も見事な物でしたよ。
今までよりもずっと優雅で流麗で……私、思わず魅入ってしまいました。
うふふ、お世辞などではありませんよ♪
私は貴方様の舞が大好きですから、一瞬でも長くこの目に焼き付けておきたいのです。
貴方様が踊り子を勤めるのも今年が最期……ですから尚の事、しっかりと。
さてと、貴方様のお召し物は此方でお預かりしているので、まずはお着換えをどうぞ。
衣装はそのままで結構ですよ、後で私が洗っておきますから。

(襖の開閉音)

お着換えは終わったようですね。
それでは此方の衣装、私がお預かりいたしますね。
そうだ……もし宜しければこの衣装、貴方様に差し上げる事も出来ますが……かしこまりました、では私の方で保管をさせて頂きますね。
これでようやく、一息付けますね……せっかくですから、最後にお茶でも飲んでいきませんか?
まだ時間はあるでしょうし、それに……私にとっても貴方様と二人きりで過ごせる最後の一時ですから。
はい、ありがとうございます!


あら、もうこんな時間……そろそろお帰りになられます?
畏まりました。
では……聞き飽きたかもしれませんが、それでも最期に忠告を。
私達の別れの挨拶と言えば、これですからね。

帰り道は決して振り向かず、真っ直ぐ家にお帰り下さいませ。

ここに祀られている神は踊り子である貴方様を大層気に入っております故、貴方様がその素振りを見せてしまえばきっと、あちら側へと連れ去られてしまうでしょう。
ですから今日は、どうか休みなくお帰り下さいませ。
私に未練がないと言えば嘘になりますが……それでも、貴方様には無事でいて欲しいですから。
はい、ではまたいつか……此方へ帰って来る事があれば、その時には顔を見せてくださいね。


(足音)


あら……うふふ、あれだけ振り向いてはいけないと申したのに、此方を向いてしまいましたね♪
もしかして、私への未練が残っていたのかしら……何にせよ、嬉しいことですわ。
えぇ、貴方様の後ろをついて歩いていましたよ。
ピタリと、一瞬たりとも離れぬように。
貴方様が振り向くことなく家に帰れば、今までのように大人しく諦めるつもりでいました。
貴方様とはついぞ縁が無かった、そう踏ん切りをつけてこの地で大人しくして居ようと……

しかし貴方様……いや、お主は此方を……妾の事を見てくれた!

寂しそうな顔で後ろを振り向き、妾にその目を向けてくれた!
あぁ……この時をどれほど待ちわびた事か!
祭が終わり、お主が里へと降りていく姿を見送る事しか出来なかった日々がようやく終わる……
お主が妾以外の者と仲睦まじくしている姿に嫉妬する事も、妾の傍らにお主が居らぬ悲しみに嘆く必要もない……あぁ……なんと素晴らしい事か!
おや、何やら呆けた顔をしているようじゃが……あぁそうか。
済まぬな、ようやくお主が振り向いてくれたので少々舞い上がってしもうた。
こうして元の姿をお主に見せるのは初めての事じゃし、きっちりと自己紹介をせねばなるまいな。

今日に至るまで舞を奉納してくれて感謝しておるぞ、人の子よ♪
妾はこの山を治める──ここまで言えば、賢いお主は気付いてくれるじゃろ?

何やら後ずさっておるようじゃが……ふふ、そちらに行っても出口は無いぞ?
山は妾の一部も同然、こうして山道を塞ぐなど造作もないのじゃ♪
ほれそう逃げるでない、妾はお主を取って食おうとしている訳ではないのじゃ。
ただこうして──お主の事を、抱擁したいだけなのじゃ。
あぁ……実に良い……
お主の温もりを腕の中に感じる……これだけでも、巫女に扮してお主の気を惹き続けた甲斐があったわ。
いつまでもこうしておりたいが、此処に居ってはお主の体が冷え切ってしまう。
冷え込まぬうちに、早う社まで帰ろうか。
ん、まさかお主……妾と行くのを拒んでおるのか?

案ずるでない、お主には不自由などさせぬ──じゃから大人しく、妾のモノとなれ。

妾は気が長い方じゃが、それでもあまり手間取らせなんでおくれ。
愛しのお主を前にしておると、妾はどうしても堪え性が無くなってしまうらしいからの。
そういえばお主、明日にはこの里から出て行くつもりのようじゃったな。
悪い事は言わぬから、それは止めにしてしまえ。
どうせ外に出たところで、やがては人の世を回す歯車に成り果てるだけ。
それならば妾と共にここで暮らし、悠久の幸せに浸っておった方がお主の為じゃ。
安心するがよい、お主の幸せは妾が約束する……じゃから頼む!妾の前から消えないでおくれ!
はは……そうか……妾がこれだけ必死になっても、お主は覚悟を決めてくれぬのじゃな。

ならもう良い……もう、お主の同意など求めぬわ。

本当なら穏便に事を運びたかったのじゃが、こうも拒まれてしまうとな。
さ、共に帰るとしようか……ん、どうした?
妾はお主の手を取っただけじゃぞ?
なのにそんな、悶え苦しむかのような顔をしおって。
妾、それほど力を込めてはいないのじゃがなぁ……ま、人間は非力じゃからのぉ♪
うっかり力を入れ過ぎて、その綺麗な手を砕いてしまったら──その時は、笑って許しておくれ♪
少し痛むかもしれんが、その時は責任をもって妾が治してやるからな。
さて……立ち話もこれくらいにして、そろそろ行くとするか。
お主は自ら歩み出す気が無いようじゃし、妾がこうやって手を引いてやろう。
怖がる必要はない、これからお主が行くのは妾との安寧に満ちた場所じゃ。
俗世の下らぬ事全てを忘れ、ただ心安らぐ時が過ぎていくだけの理想郷……素敵じゃろう?
大丈夫、お主は妾に全てを委ねればそれでよいのじゃ。

だからどうか、妾の物となっておくれ……永遠にな♪
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
巫女に化けていた山神様に攫われる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹
ライター情報
主に女性演者様向けの台本を書いてるタヌキ的な「何か」です。
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