兄と一緒に夕飯をとる妹。
両親は幼馴染み同士の再婚で、遅い新婚旅行にいったのだが、その夜……

#風呂
#幼馴染がお兄ちゃん

〇リビング（夜）

　　　兄、妹の用意した夕食を食べる。
妹、既に食べ終わり食器を片付けている

SE　夕食、食器や箸のカチャカチャ音

兄「なあ、そういえば、親父とお袋は？」

　　　妹、少々びくつきながら「二人で旅行だよ」と言う。

兄・心の声「なんだ？　ビクつきやがって……」
　　　と、少し不審に思う。

兄「旅行って……ああ……」

　　　兄、両親が新婚旅行に行くと言っていたことを思い出す。

兄「そういや新婚旅行っつってたな。
　……ったく。
　新婚っつっても再婚だし、
　ご近所同士の幼馴染みじゃねーか。
　今さら旅行とか、流行んねーっての」
　　　と、ご飯をかき込む。

　　　妹、両親を羨ましいという。

兄「あ？　うらやましーか？
　幼馴染みだし、再婚だぞ？」
　　　と、おかずを口に含みつつ妹を見る。

　　　妹、少々怯え気味になるも、まっすぐ兄を見る。

兄「なんだよ？」
　　　妹、空のお茶碗を指し、
　　　ご飯のおかわりは？と訊く。
兄「……あ、飯、おかわり？
　……くれ」

SE　炊飯ジャーを開ける音

　　　兄、ご飯茶碗を受け取る。
兄「……サンキュ……」

　　　兄、妹、無言でご飯を食べる。
　　　少し重い空気が漂う。

SE　箸、食器のカチャカチャ音

兄「……ごっそーさん。
　風呂、入ってくる」

しばらく、間

○お風呂場

SE　シャワー音

兄・心の声「なんだよ、あいつ……
　幼馴染みなんてそんないいもんかあ？
　くされ縁だし、ずっとついてくるし、
　何かするとピーピー泣くし……」
　　　兄、妹と兄妹になる前の事を思い出す。

兄「……って、オレとあいつはもう兄妹なんだっての。
　……もう、幼馴染みじゃ……ねぇし……」

SE　シャワーを止める音

SE　風呂場のドアを開ける音

　　　兄、ドアを開けると、目の前に妹がいて、
　　　一瞬思考が停止する。

兄「……あ？」

　　　妹、顔を真っ赤にして、
　　　走って風呂場から出ていく。

SE　走り去る音

　　　兄、ぼんやりと妹の走っていった方を眺める。

兄「……あー……見られた……
　ま……妹だし……いい……か……？」

　　　兄、だんだん自覚し、
　　　今の状況が恥ずかしくなる。


兄・心の声「いいわけねぇだろぉがああああ！
　は、早く服！　ふ、服を！」

SE　服を着る衣擦れ音

SE　階段を上がる音

〇妹の部屋

SE　慌てたノック音

　　　兄、ドア越しに妹へ話しかける。

兄「お、おい、大丈夫か？」

兄・心の声「大丈夫て何がだよ!?
　オレの方こそ大丈夫か!?」

　　　妹、ドア越しに、さっきはごめんという。

兄「は？　ごめん？　オレのを見たことかっ？」
　　　兄、声が上ずる。

兄・心の声「オレのアホ！」

　　　妹、着替えを置こうとしたら、
　　　鉢合わせになったという。

兄「あ？　き、キガエを？　あ、着替えな！」
　　　兄、慌てすぎて『キガエ』のイントネーションが狂う。

兄「き、きき気にすんなっ。
　オレら、兄妹だしなっ！
　こーゆー事もあるって！」

SE　ドアの開く音

　　　妹、部屋のドアを開け、
　　　泣きながら兄に抱きつく。

兄「おい、なに抱きついて……って……
　……は!?
　おまっ……なんで泣いてんだ……!?」
　　　と、さらに狼狽える。

　　　妹、声を振り絞って
　　　「私、兄妹なんて嫌」という。

兄「……は？　嫌って……
　……オレと兄妹なのが……そんなに……嫌なのか……？」
　　　兄、ショックで脳内の処理が追いつかず。

　　　妹、「ちがうっ！」と強く否定する。

兄「違うならなんで――」

　　　妹、兄にキスする。

兄「っ!?」

SE　リップ音

兄「っは……お前……！」

　　　妹、「こんな形で一緒になんて、
　　　なりたくなかった」と泣きじゃくる。

　　　兄、それを聞いて、妹がいつもと違う
　　　理由を理解。

兄「……そっか。だからお前……いつもと様子が違ってたのか……」
　　　兄、妹の頭を撫でる。

兄「…………オレだって、こんな形で一緒になるなんて、思ってなかったさ」

兄・心の声「父さんと母さんの再婚は別に嫌なわけじゃない。
　それは妹も同じ気持ちだ。
　だけど――」


兄「お前さ、オレと兄妹だから……
　もう兄妹になっちまったから、好きになれないか？
いやか？

　　　妹、首を横に振る。
　　　好き、と、言う。

兄「オレも……好きだよ」
　　　兄、妹をぎゅっと抱き締める。

SE　衣擦れ音

兄「なあ、今度の休み……遊園地に行かないか？」
　　　妹、「遊園地？」と、兄を見上げる。

兄「そ。ちっせぇ頃、家族ぐるみで行ったろ？
　オレ、実はあまり乗り気じゃなかったんだけどよ……
　お前がすっげぇ楽しそうにはしゃいでたもんだから、つられて楽しくなったの、思い出した」

　　　兄、妹の頭を優しく撫でる。

SE　頭を撫でる音

　　　兄、妹と顔が近いので急に照れる。
兄「あ……よ、よかったらで……いいんだけど」

　　　妹、嬉しそうに「行く！」と言う。

兄「じゃあ、決まりだな。行くなら土曜か日曜か……
　バイトの休み申請しとかなきゃだな」
　　　妹「楽しみ♪」と嬉しそうに言う。

兄「ああ、楽しみにしてろ♪
　それと……」

　　　兄、妹を抱き締めたまま部屋へ入り、
　　　鍵を閉める。

SE　ドアを閉める音、鍵をかける音

　　　兄、耳元で、
兄「このことは……
　……二人だけの秘密……な」
　　　と言って、妹にキスする。

SE　リップ音

-END-

・台本（ゆるボイ！）
幼馴染みがお兄ちゃんに。お風呂からあがった兄に妹が……
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
神塚わひろ