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従順な召使いとヤンデレな魔女
written by 松平蒼太郎
  • ヤンデレ
  • 人外 / モンスター
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
3358文字(約 11分12秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
(ノック音)

失礼いたします。ご主人様、コーヒーをお持ちしました。

はい、それではこちらに。(カップを置く)

あの、ご主人様。顔色があまりよろしくないように見えますが…

差し出がましいようですが、少しお休みになられてはいかがでしょう?

そう、ですか…あまりご無理はなさらないでくださいね。

何かあればすぐにお呼びください。

どうしてそこまでって、何をおっしゃるんですか。

わたしはご主人様の召使いなんですよ?尽くすのは当然のことです。

それにわたしにはご主人様にご恩がありますから。

はい、記憶を失ったわたしを、こうしておそばに置いてくださったというご恩です。

だからご主人様がつらいときは、必ず支えになります。ご主人様のお役に立ってみせます。

い、いえ。気になさらないでください。

わたしはただ、ご主人様の力になれればそれで良いんです。

長話が過ぎましたね。お仕事の邪魔をしてすみませんでした。

はい……それでは失礼します。


ご主人様⁉︎今の音は一体…⁉︎

ご主人様、大丈夫ですか⁉︎しっかりしてください!

ひどい熱…!早くこちらへ!


あ、ご主人様。お加減はいかがですか?

そうですか。少しは落ち着きましたか…

え?わたしですか?いえ、なんともありませんけど…

って、わたしのことはどうでもいいんです。今はご自分の心配をなさってください。

え?自分はもうすぐこの世から消えるって、な、なんの冗談ですか、それ…面白くもなんともないですよ…

も、もうやめてください!ご主人様が死ぬなんて考えたくもありません!

こんなのただの風邪です!安静にしていればきっとすぐ良くなりますから!弱気にならないでください!

え?あれ?おかしいな…ご主人様の体が透けて見える…わたしも疲れてるんでしょうか…

それ、どういうことですか…?禁術が成功した代償に自分が消えるって…

禁術って一体なんなんですか⁉︎どうしてそんなものに手を出したんですか⁉︎

わ、わたしを助けるため…?それはどういう……あ、ご主人様…また寝てしまわれましたか…


今のうちにご主人様を助ける手がかりを探さないと…

禁術の研究はこれですか……あれ?この研究の資料、どこかで見たことあるような…

けど違う。これは禁術の資料じゃない。どこにあるんだろう…

(資料を漁る)

これも違う、これも、これも…早くしないとご主人様が消えてしまう…

ダメだ…どれも禁術を扱った資料じゃない…一体どこにあるの…

…?あ、ご主人様!ダメじゃないですか!安静にしてないと!こんなところまで出てきて!

え…?これをわたしに…?これってご主人様が大切にしていた銀の懐中時計ですよね?どうしてわたしに…

形見に持っていてくれ、ですか…

わかりました。ご主人様のご命令とあらば。

…!痛い…!何これ…⁉︎あ、頭が割れそう…!

痛い、痛い…!……………いいえ、心配いりません、ご主人様…いいえ、貴方。

(押し倒す)

うふふ…あははははは!わたしはこの時を待ってたのよ!

えぇ、そのまさかよ。貴方のおかげで魔女としての記憶を取り戻せた。礼を言うわ。

ふふ。信じられない?そうね、貴方の計画は完璧だった。ある一点を除いては。

そう、この懐中時計。これでわたしの魔女としての記憶を永久に封印するつもりだったんだろうけど、それを逆に利用させてもらったわ。

何が何だかわからないだろうから、一から順に説明させてもらうわね。

まず貴方は、この世界で好き放題やって人々を恐怖のどん底に陥れた魔女…このわたしを倒そうとして失敗した。

次に貴方が考えたのがわたしの力を封印すること。けれどこれも失敗。

だから最終的に思いついたのが魔女そのものを無力化すること。

一時的に記憶を奪うという形でね。そして実際にそれは成功した。

けど貴方はわたしのことを知っていくうちに、わたしに同情してしまった。

欲しくもなかった魔女の力を与えられ、人々に恐れられるしかなかったこのわたしを。

だから記憶を奪った後も生かしておいてくれたのでしょう?召使いとして、ね。

そして最終的にはわたしの記憶を完全に封印しようとした。

わたしが二度と魔女として復活しないように。

その代償が貴方が消えることなんでしょう?

ふふ、その様子だと正解のようね。

だから先に手を打っておいたの。

えぇ、その懐中時計にわたしが記憶を再び取り戻すための術式を仕込んでおいたわ。

そうね。貴方が懐中時計をわたしに手渡してくれなかったら、わたしは記憶を取り戻さなかったでしょうね。

けど貴方は不安だった。何かの拍子にわたしが記憶を取り戻してしまうんじゃないかってね。

だから禁術に手を出してまで、わたしの記憶を完全封印し、普通の人間としての生活を送れるようにしようとしたのでしょう?

見た目も整形させて魔女だった頃の面影はないしね。自分の顔を見てちょっと驚いちゃった。

記憶を消し、見た目も変えてしまえば、誰もわたしを魔女だとは気づかない。

一か八かの賭けだったわ。貴方が後生大事にその時計を持っていたなら、わたしは平凡な召使いとして人生を終えたはず。

けど貴方はこうしてわたしを呼び覚ましてくれた。

本当に…本っ当にありがとう!ふふ、あはは!

あはは…なあに?わたしが答えられることならなんでも答えてあげる。

これからどうするつもりだ、ですって?

そうねぇ…その前に消滅しかかっている貴方の体を治すほうが先ね。

この時計の中にある完全記憶消去の術式を壊せば、貴方の体も元に戻るはずよ。

ふふ、できないと思う?まぁ見てなさい。

(術式破壊)

ほら、どう?簡単にできたでしょ?

あらあら、そんなに驚かなくても。

一介の魔術師に過ぎない貴方と違って、わたしは全知全能の魔女よ?これくらい朝飯前だわ。

さて、これからどうするかっていう問いの答えだけど…

(キス)

貴方を手に入れる。今のわたしの望みはそれだけよ。

あら、それは貴方の一方的な思い込みよ。

わたしは貴方を敵視したことなんて一度もないわ。

貴方は他の人間と違って、わたしを倒すことを諦めなかった。

そうよ。強大な力を持つ魔女に対して最後まで抗ったのは貴方ただ一人。

それと比べて他の人間ときたら…恐れるばかりでわたしにまったく手を出そうとしない、チキン野郎ばかりだったわ。

つまり、貴方はわたしが認めた、たった一人の人間だということ。

えぇ、貴方を禁術の呪いから解放したのもそのため。

貴方を死なせるわけにはいかなかったもの。

なに、もう一つ質問?いいわよ。

そもそもどうしてこんな回りくどいやり方をしたのか、ね。

そうね、たしかに貴方を殺すことは簡単だったわ。

けどそれじゃ、面白くないじゃない。

せっかくわたしに刃向かってくれる人間が現れたのよ?

これは楽しまないと損だとは思わない?

その感覚はわからないって、そう…

まぁ要するに、ちょっとした駆け引きでスリルを楽しみたかっただけよ。

貴方はわたしを十分楽しませてくれた。わたしの期待に応えてくれた。

それだけじゃなく、わたしに恋心というものを教えてくれた。

えぇ、わたしは貴方のことが好きよ。もう他のものなんてどうでもいいくらいに。

さて、ここからは取り引きなんだけど……

貴方が大人しくわたしのモノになるというのであれば、わたしは他の人間には一才手を出さない。約束するわ。

信じられない?けどさっき言ったはずよ。

貴方を手に入れることだけが今のわたしのただ一つの望み。他の人間には興味ないって。

まぁ断っても構わないわよ。結局わたしのやることは変わらないもの。

ふふっ、あははははははっ!!!

やっぱり最後まで抗うのね。いいわ、ちょっと遊びましょうか。

はい、残念。同じ手は二度と食わないわ。

記憶消去の魔術はもうわたしには通用しない。

これまで楽しませてくれたお礼よ。受け取りなさい。

(キス)

あはは、苦しい?さっきのキスと違って、わたしの魔力を貴方の体の中にたっぷり流し込んだもの。拒絶反応は出て当然よね。

(抱きしめる)

大丈夫よ。今ので貴方はわたしの眷属となった。

永久に逃れることはできない呪い…これがわたし(魔女)の力よ。

安心しなさい。約束通り、もう他の人間には手は出さないから。そもそも興味もないし。

さ、わたしのお家に帰りましょうか。

しばらく帰ってなかったから荒れてるかもしれないわね。

ん?……ふふ、別に何もしないわ。

ただ貴方をそばに置いて愛でるだけよ。

けどしてほしいことがあったら、可能な限りしてあげる。

前みたいにご主人様呼びで呼んであげてもいいわよ。

ねぇ、ご主人様…?ご主人様はわたしのこと、愛してくださいますか…?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
従順な召使いとヤンデレな魔女
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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