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幽霊お姉さんと過ごす一夜(廃墟ver.)
written by 松平蒼太郎
  • ヤンデレ
  • 人外 / モンスター
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
1996文字(約 6分40秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
やあ、少年。こんばんは。

そんなに驚かなくても…人をなんだと思ってるんだ?

いや、そんなことよりもだ。

こんなところになんの用だ?ここは廃墟だぞ?

なるほど、最近退屈すぎて肝試しにやってきたと。

それは感心しないな。たしかに人は住んでいないが、君のやろうとしていることは立派な不法侵入だぞ?

ん?そういうお姉さんはここで何をしてるのかって?

なに、大した理由はない。周りに誰もいない、この夜の空気が好きなだけさ。

こうして何もせずに一人でボーッと過ごすのも乙なものだよ。

君のようにべつに廃墟に侵入しようとしてるわけでもないしね。

ははっ、そうだな。君の言う通り私は変わり者だ。

いや、はたから見たらわたしも不審者だな。違いない。

ん?一人でいるのを邪魔しちゃ悪いから、今日は帰りますって、まぁ待て。

たしかに一人でいるのもいいが、こうして誰かと会話をするのも嫌いじゃない。

むしろ好きな方だな。そういうわけだ、少し付き合ってくれ。

もし付き合ってくれなかったら、君が廃墟に不法侵入しようとしたこと、親御さんにうっかり口を滑らせてしまうかもしれないな。

ふふ、いい子だ。物分かりが良くて助かるよ。

お姉さんは何か悩みとかありますか?か……

基本的にはないが…そうだな、強いて言うなら人とあまり関われないことかな。

少し訳ありでね。私が相手を認識しても相手が私を認識しないんだ。

こちらからの声も届かないし、少し大袈裟な動作をやっても反応してもらえない。

リアクションがないというのは結構寂しいものさ。

だが、君のようにこうして気づいてくれる者もたまにいる。

まぁ大抵はお化けを見たような顔で逃げ出してしまうがね。

自分で言うのもなんだが、こんな美人に声をかけられて逃げるという神経が理解できないな。

逃げられる理由?そうだな…それはわたしがこの世ならざる者だからだな。

(目の前が暗くなる)



やあ、目が覚めたかい、少年?

ここはさっきの君が入ろうとしていた廃墟の中だよ。

どうしてそんなところで膝枕されてるのかって?

ふふ、いいじゃないか。膝の上で君のことを愛でてみたくなったんだ。

これからはずっとこうしていられる。永遠にね。

それはどういう意味ですか、ねぇ………

気付いていないのか?自分の身体をよく見てみるといい。

あぁそうだ、透けて見えるだろう。君は私と同じ幽霊になったんだ。

そう、幽霊。君はもうこの世の者ではないんだよ。

どうしてこんなことにって、そうだね、混乱するのも無理はない。これは私の仕業だよ。

君の肉体から魂だけを無理やり抜き取ったんだ。

君の精神が疲弊していたところを見計らってね。

君の肉体は廃墟の前に転がってるよ。

いいや、君はもう二度と自分の肉体に戻ることはできない。

私が君の肉体と魂の繋がりをほぼ完全に断ち切ったからね。

ん?………ふふ、そうだ。察しがいいね。

わたしがこの廃墟に出ると言われている幽霊だ。

わたしはこの家の元住人でね、まぁこんな大きな屋敷に住んでるくらいだから、お嬢様なんて呼ばれていた。

全然そんなふうには見えないだろう?

そんなことはない、か。なんだ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。君のこと、ますます気に入ったぞ。

死んだ理由?なに、大したことじゃないさ。

わたしは元々体が弱くてね。そんなに長く生きられないだろうとは医者から言われていた。

そう、病死だ。持病が悪化してあっさり死んだよ。

この世への未練は…もう言わなくてもわかるだろう?

あぁ、人と接する機会がほとんどなかったことだ。

ずっと病気がちで屋敷に篭もっていてね。

会う人間といったら、爺やと召使い、あとは親戚ぐらいだった。

まぁあれから何年も経ってるし、皆死んであの世に行ってるだろうが。

その、笑わないで聞いてくれるか…?

わたしには夢があった。えと、その…運命の人と添い遂げること、だ…

わ、笑わないとさっき言っただろう!まったく…

ん?……あぁ、結局夢は叶えられずに終わったよ。

わたしは一人寂しく死んでいった。

爺やも召使いも、わたしの持病が急激に悪化した時にはその場にいなくてな。

誰にも看取られず死んだ、というわけだ。

だから死んで何年も経った今もなお、成仏できずにこんなところにいる。

同情しなくていい。たしかに今までは寂しかったが、もう私の隣には君がいる。

いきなり命を奪ったのは悪いと思ったよ。

けど寂しくてどうしようもなくて…気持ちを抑えられなかった。

私とちゃんと会話して、私を理解してくれる存在は君しかいない。

少なくとも今の私はそう確信している。

あぁ、その通り。君が私の運命の人だ。

君にはこれからずっと私のそばにいてもらうぞ。

すまないな…君が泣くほど辛い思いをしてるのは理解しているつもりだ。

だけど…それでも私は君と添い遂げたい。

たとえ、君の生きたいという思いを踏みにじってでも、私は君と一緒にいたいんだ…!

寂しかった、話がしたかった、温もりが欲しかった…

もう君は私のモノだ。絶対に手放したりはしない。これからよろしく頼むぞ…
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
幽霊お姉さんと過ごす一夜(廃墟ver.)
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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