広大な庭園に囲まれた館、そこに住まう彫像のような女主人。口元には常に微笑を浮かべているものの、その瞳は底なしに暗い。閉ざされた館、果てしない従属の日々。

～Noraより～
上流階級系の突き抜けた狂気を書いてみました。本当は、幸せな話をもっと書けるようになりたいと思うのですが、なかなか筆が進まないので、ついヤンデレに走ってしまいます……。

（「主人」はあなたを鏡台の前に座らせ、背後で髪をとかしている）


……ねえ、昨日はよく眠れた？……そう、良かった。

……ん？なあに？……ああ、今日はね、とってもお天気がいいから、あなたとお庭でお茶でもしようかと思って。だから、今日はそのお茶会にふさわしい身なりにしてあげる。あなただって、たまにはお日様の光を浴びないとね。

……ところで……その服、気に入ってくれたかしら？あなたのために、特別に作らせたのだけど。あなたって本当、お人形さんみたいに可愛くて、何を着せても様になるわね。……だから私、あなたの顔だけは傷つけないようにしているのよ。


……返事がないみたいだけど。聞こえなかったのかしら。


……まあいいわ。私は別に、相思相愛なんて求めていないのよ。……だけど、私の愛は、嫌と言うほど思い知らせてあげなくてはね？そのためには、あなたを優しく抱いて愛でるだけなんて、生ぬるいんだもの。

（不意に肩に手が置かれる。ぞっとするほど冷たい手に驚き鏡を見ると、暗く鋭い目であなたを見据える主人が映っている……。）

…………ねえあなた、私のこと、狂っていると思う？私、一体いつからこうなってしまったのかしら。…………もし私が狂っているんだとしたら、私はどうすれば元の私に戻れると思う？

……私ね、ときどき、あなたが壊れてしまったときのことを想像してみたりするのよ。そしたら、私は目が覚めるのかしらってね。……でもね、そのとき自分が一体どうなってしまうのか、想像もつかないの。動かなくなったあなたを前にして、取り乱して泣き叫ぶのか、それとも…………無上の恍惚を覚えるのか………………。



……なんて、冗談よ。本気にしちゃったかしら？私はあなたを壊してしまうほど間抜けじゃないから、安心なさい。あなたが愛おしくて、いじめ過ぎちゃうときもあるけど……それでも限界はちゃんと見極めているもの。

（肩に置かれた手が強く握られ、激痛が走る。鏡に映る主人の瞳には、異様な光が宿っている……）

………………だけどね…………やめてほしいからって、この前みたいに気絶したふりなんてもう通用しないわよ。せっかく楽しんでいるところに水を差すようなことをされたら、いくら温厚な私でも、カッとなって取り返しのつかないことをしてしまうかもしれないわ。……あまり、私を困らせないでちょうだい。いいわね？…………うん、いい子ね。

……そうそう、あなたに言っておかなければいけないことがあったわ。私、今度、しばらくここを留守にするわ。あなたと離れるのは寂しいけど……でも、どうしても行かなくてはいけない用事があるの。……いい子でお留守番、できるわね？

……念のために言っておくけど、その間に逃げようなんて無駄なことは考えないでね。そんなことをしたら、どこにいようと見つけ出して、もう二度と自由に動けない身体にしてあげるわよ。……まあ、そもそも行く当てなんてあるとは思えないけど。

……いいこと？あなたの主人は私よ。街であなたに魅入られてから、どうしても私のものにしたくて、やっとの思いで手に入れたんですもの。……お金で奪えないものはないって、本当よね。……あなたはね、ずっとずっと、この館で、私と二人きりで暮らすの。絶対に、逃がさないわ。


………………ねぇ、あなたは…………あなただけは……私を独りぼっちにしないでちょうだい。


……ほら、こちらを向きなさい。（頬に手を添えてキスをする）……今夜もたっぷり可愛がって、いじめて、泣かせてあげる。私が留守にしている間も寂しくないように、また新しい痛みを刻みつけてあげるわ。このあいだの傷はもうとっくに癒えているはずだものね。

傷が疼いて、熱くなるたびに、あなたは私を思い出す。目を閉じても、耳を塞いでも、私を感じることができる。……心配しなくても、痛みが癒える頃にちゃんと帰ってくるわ。

……ねぇ、お土産に何か欲しいものはない？あなたが望むものなら、何だって買ってきてあげるわ。お洋服でも、お菓子でも、本でも、何でも。……だから、ちゃんといい子で待っているのよ。





………………いいわね。

・台本（ゆるボイ！）
【両性向け】 無情の鏡 【ヤンデレ】
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・台本制作者
Nora