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【両性向け】幻(現)想ディレッタント【微ヤンデレ×甘々】
written by Nora
  • 告白
  • 純愛
  • シリアス
  • 切ない
  • 百合
  • 年上
  • ヤンデレ
  • お姉さん
  • ダウナー
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2022年05月24日 22:45
文字数
3405文字(約 11分21秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
画家
視聴者役柄
かつての仕事仲間
場所
アトリエ
あらすじ
美術品を扱う仕事をしていたあなたは、ある画家の女から「あなたの絵を描かせて欲しい」と頼まれ、彼女のアトリエを訪ねた。北向きのアトリエは薄暗く、絵画や画材が所狭しと置かれている。あなたの来訪に気づいた彼女は笑顔を見せるが、その瞳はどこか遠くを見つめているようで……。

~Noraより~
この物語が最後になるかもしれないので、一応ご挨拶を……。
心の中に湧いてきた物語を、拙いながらも綴ってきました。たくさんの投稿作品の中から、私の作品を見つけて読んでくださった全ての方々に、心より感謝を申し上げます。現在、世の中は大変な状況ではありますが、時には妄想の世界に避難しつつ(これ大事)、乗り切っていきましょう。引き続き、台本としての使用報告などはDMかコメント欄までいただけると嬉しいです。それでは!
本編
今日はお休みの日なのに、わざわざ出向いて来てもらっちゃって、悪いわね。最近は忙しいみたいだけど、仕事は順調?……そう。それはなによりね。

……私?私は何も変わらないわ。ここでひたすら絵を描いて、誰とも口をきかずに一日が終わる……毎日がその繰り返し。今も仕事の関係で訪ねてくる人はいるけれど、必要以上の会話はしないもの。だからね、私……あなたがここに来ていた頃のことばかり思い出しちゃうのよ。

ねえ、異動があるのは仕方がないとしても、今まで一度も顔を見せてくれなかったのはどうして?「仕事上での関わりはなくなっても、また会いに行きます」って言ってくれたのが嬉しくって、私、ずーっと待ってたんだけどなぁ。……結局、その台詞は単なる社交辞令だったってことよね。

……別に、謝る必要なんてないのよ。これくらいのことで、あなたを恨んだりはしないから。……それに、これからはもうあなたを指折り数えて待つ必要はないんだもの。今からあなたの面影を生け捕りにして、キャンバスに閉じ込めて……これからはずっと、私のそばにいてもらうの。

絵の中に閉じ込めてしまえば、あなたは永遠に私だけのもの。心変わりをすることも、誰かに取られたりする心配もなくて……いつも私のことだけを見つめて、何でも話しかけてくれる。……ねえ、それって素敵なことだと思わない?

……なーんて。もっとリラックスしてもらうための冗談だったんだけど……逆効果だったかしら。ふふっ、もう……そんなに困った顔をしないで。

だってあなた、さっきから表情が固いし、ずっと黙っているんだもの。別に、話しながらでも絵は描けるから、もっと楽にしてちょうだい。……うん、そう、そんな感じ。

……それにしても、あなたは大人しく座っててくれるから、作業がはかどって助かるわ。……ほんと、「あの子」のときとは大違いね。

……ああ、あのね、もうずいぶん昔の話になるんだけど……かつての恋人のことを思い出していたのよ。その時も、その恋人をモデルにして絵を描こうとしていたんだけど、その子ったら落ち着きがなくって、ひとときもじっとしていられないのよ。それで、終いには喧嘩になったりして……そんなことがあったっけなあって。ふふっ、笑っちゃうでしょ。

……ん、なあに?……あなたと前の恋人が似ているのかって?いいえ。性格、容姿、仕草……どれをとっても全く似ていないわ。むしろ真逆のタイプじゃないかしら。

あのね、誤解しないでほしいんだけど、私は別に、あなたを昔の恋人に見立てているわけではないのよ。確かに手痛い失恋ではあったけれど……それはもう過去の話だもの。

それにね、彼女が離れて行ってしまったのは、きっと私のせいでもあるのよ。あの子は自由奔放で、新しい物好きで……私の腕の中でじっとしているような子じゃないって、最初からわかっていたはずなのに……当時は、彼女を自分のところに留めておこうと毎日必死だった。

……だけど、気ままな彼女にとっては、そんな私と一緒にいる生活が窮屈だったんでしょうね。ある日突然家を出て行って、それっきり、どれだけ待っても戻って来ることはなかった。……あんなに……愛していたのに……。

(彼女はふと手を止め、唇をかみしめるようにしてうつむいてしまう。)

恋って苦しいものよね。自分の心をすり減らしてまで恋愛にのめり込むなんて、ばかばかしくて、くだらなくって、もううんざりって思っているのに……好きになっちゃいけないって、わかってるのに……どうしてこんなにも、触れてみたいと思うのかしら。

(気遣わしげに見つめるあなたの視線に気づき、我に返って)

あ……!ご、ごめんなさい。私ったら、一体何を言ってるのかしらね。……さ!暗くならないうちに描き上げちゃわないと。悪いけど、もう少しだけ付き合ってちょうだい。



(夕方。あたりは既に暗くなり始めている……。)

今日はありがとう。あなたの元気そうな顔も見られたし、来てもらってよかったわ。それから……はい、これ。少ないけど、今日来てくれたお礼。これで好きなものでも買ってちょうだい。

……いらないの?どうして?遠慮することなんてないのよ。……え?「代わりにこの絵が欲しい」って……?……それはいくらなんでも困るわ。だって、これをあげちゃったら、何のためにあなたに来てもらったのかわからないじゃないの。

……そんな、いくら私の顔を見つめてもダメよ。これはもう、私のもの。だから、そんなに詰め寄って来ないでちょうだい。あっ、ちょっと……だめよ、何するのっ……!



……え?……私の顔に……絵の具がついてるって……?



…………はぁ、なんだ、そんなこと……。もう、びっくりさせないでちょうだい。いったい何事かと思ったじゃないの。……あ、あの……拭いてくれるのは嬉しいんだけど、あとで顔を洗ってくるから、大丈夫よ。あなたのハンカチが汚れちゃうし、それに……。

……「幻想の恋人は、こんな事出来ないでしょ」って……あなた、今……そう言ったの……?

(彼女は呆然とあなたを見つめていたが、やがて視線をそらし、背を向けてしまう。)

……悪いけど、今のは聞かなかったことにするわ。だから、今日はもう帰って。……そうね、あなたの言うとおり、こんなことは間違っている。でも、仕方ないじゃない。いつかあなたを失って苦しむくらいだったら、最初から自分のものになんてしない方がいいもの。

……あなたはまだ若いし、これから新しい出会いも、楽しいこともたくさんあるでしょう。毎日がめまぐるしく過ぎていって、そのうちに私のことなんて忘れていくに決まっているもの。実際、あなたは今までずっと会いに来てくれなかったじゃない!

(彼女の声は、かすかに震えている……。)

……私、もう傷つきたくないのよ。だからお願い、勝手だと思うかもしれないけど、今日はもう一人にしてくれるかしら。

……?「その絵を手放す決心をするまでここにいる」、ですって……?

(彼女は、困ったように微笑んでいる……。)

……私は、幻想のあなたを捕まえるつもりだったのよ。それなのに、現実のあなたに追い詰められることになるなんて……これじゃあまるであべこべじゃないの。

……私はただ、「あなたがずっとそばにいてくれたら」って願いを叶えたかっただけなの。誰かを傷つけることも、自分が傷つくこともない方法でね。……でも、こんなことをしていたら、私は永遠に……前に進めないままね。

……ねえ、もし、私がこの絵を手放したとしても……あなたはずっと、私のそばにいてくれるかしら。その……つまり……私の、私だけの……現実の恋人として。

(あなたはうなずく。)

……ふふっ……!私がとっくに諦めていた「愛」を、あなたはちゃんと持っているようね。……それなのに私は……自分を守ることに必死で、こうしてあなたを困らせて……なんてみっともないのかしらね。

(彼女は一点を見つめ、じっと考え込んでいる……。)

……もう二度と、愛する人に触れることも、触れられることもないと思っていたけれど……。

(彼女は意を決したように、手をこちらに差し出す。)

ねえ、私の手を握ってくれる……?うん……ありがとう。少しだけ……このままでいさせて……。

(彼女はあなたの手を握ったまま、じっと目を閉じている……。)

……私、ずっと怖かったのよ。目の前のあなたを本当に好きになってしまったら、またあの時みたいに、不安と嫉妬に苛まれる毎日に逆戻りだって。でも、こうしてあなたに触れている今、空っぽだった心が満たされていくようで、気持ちがとっても安らぐの。……これって、どうしてかしらね。

ありがとう、前を向かせてくれて。あなたと一緒なら、私はまた歩き出せるから。



……いつまでもこうしていたいけど、外はもう真っ暗なのね。このあたりは人通りも少ないし、心配だから駅まで送っていくわ。……ねえ、近いうちにまた会えるかしら。その……今週末とか、どう?私と一緒にお出かけしない?……ふふっ、よかった。

……行き先?そうね……久しぶりに、賑やかな街に出て散歩がしたいわ。それでね、えーっと、何っていったかしら……あっ!そうそう、「タピオカミルクティー」っていうの?あれを一度飲んでみたいのよ。今、若い子たちの間で流行ってるんですってね。

あっ!ちょっと、どうして笑うの?……えっ……タピオカブームはもう終わり?今は、バナナジュースが人気なの?……そう……最近の世の中は忙しくって、ついて行くのは大変だわ。

……だけど、本当は目的なんて何でも構わないのよ。あなたの隣で、同じ時間を過ごせることが、何よりも嬉しいの。……もう、大げさなんかじゃないわ。あなたがここに来なくなってからは、あなたを想わない日はないくらい……恋しくてしかたがなかったんだから。

(彼女はあなたをしっかりと見つめ、晴れやかな笑顔を見せる。)

可愛いあなたの手を引いて、どこまで行こうかしらね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【両性向け】幻(現)想ディレッタント【微ヤンデレ×甘々】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
Nora
ライター情報
 どうも、Noraです。一応「フリー台本」というジャンルで投稿してはいますが、「自分が主人公になれる読み物」としても楽しんでもらえたら嬉しいです。

 なお、私の台本は、全て女×女を想定して書いていますが、男性向けとしても対応できるかと思います。違和感のある部分は、あらすじを変えない程度に改変してくださって構いません。
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