【職員室】

せんせー、教室の掃除終わったよー。

あ〜、つっかれたー！マジ肩凝るわー！

あー、はいはい。学級日誌ね。どぞー。

ん、それでオケまる？

よっしゃ！じゃ、ウチは帰るねー……

なーんて言うと思った？

ウチが先生を前に大人しく帰るわけないっしょ。

そそ。察しがいいじゃん。

じゃ、この時間なら誰も確実に来ない、旧校舎のテキトーな空き教室に行こっか。



【旧校舎の空き教室】

さーて、そんじゃ、いつもの始めますかー。

オッケオッケ。先生はいつも通り服脱いでね。

ねー、毎回思うんだけどさー、先生怖くないん？

なんでって、そりゃあ先生、今から怖ーいグールって化け物に自分のお肉を喰われるんだよ？

いつものことだろって、そりゃそうだけどさ…

ま、先生がいいって言うんならいっか。

先生のご厚意に甘えて遠慮なく、いただきまーす♪


んはぁ……あー、うっま！

いやー、まさか死んだ人間の身体がこんなに美味しいなんて思わなかったぁ。

けどお腹いっぱいだからもういいや。

サンキュー、先生。この恩は出世払いで返すわ。

別に要らないって、あはは！

相変わらずかったいねぇ、先生は。

にしても先生、相変わらず再生力半端ないね。

どこ食いちぎっても余裕で再生するじゃん。

伊達に長くゾンビやってないって、え？生きた年数で再生力って変わるもんなん？

多少は上がる？ふーん、なるほどね。ロジックは全然意味不だけど。

あー、食い残しの肉片の片付け？

先生、手伝って〜。これ一人で全部片付けんのしんどい〜。

そりゃゾンビは死体だから、喰っても血が出ないだけマシだけどさ〜。

サンキュ！マジ助かる！

さっすが先生、話分かるー！

(体を寄せて耳元で囁く)

なんかぁ、ウチィ、先生に惚れちゃったかも？

えー、無反応？つまんねー。

はいはーい。今片付けますよっと。

(片付け中)

………前から思ってたけど先生ってなんでそんな無感情っつーか、反応が淡白すぎるん？

やっぱあれ、ゾンビだから感情も磨滅して死んじゃったとか？

もう忘れたって、えー！何年ゾンビやってんのー⁉︎

そんな忘れるほど歳食ってたっつーこと⁉︎ウケる！

あー、オモロ……先生、うちが先生の肉食ってる間もまったく反応しないもんね。

痛みとか全然ないんだっけ？死体だから？

へー…じゃ、こーしてウチが抱きついても何も感じないわけだ。かわいそ〜。

え？……あ、マジかー。もう門限ギリじゃん。

へいへーい、わかってますよーっと。

ちゃちゃっと支度して帰りますからー。

よいしょっと…じゃ、先生バイバイ。また明日ねー。



【職員室】

せんせー！ウチ、今ピンチなんだけど！

そう、期末！マジヤバいって！

う…先生の言う通り、勉強してないからなんだけどさ…

可愛い生徒を助けると思って！このとーり！オナシャス！

やった！先生、マジ神！助かる〜！

え？職員室では静かにしろ？

は〜い、すんませんっしたー。

とりあえずどっか移動しよ。

ここ、人の目多すぎて集中できねーし。

オッケ。じゃ、いつもんとこで！

ウチ先に行ってるからね！待ってっから！



【旧校舎の空き教室】

へ〜、なるほどなるほど。

え？う、うん、マジちゃんと理解したから。

あ、この問題？え〜と……テヘペロっ☆

あ、スルーしないでよ！

反応ないのが一番傷つくんだから！

は〜い。真面目にやりまーす…


んあ〜！つっかれたー！肩凝ったー！

せんせー、肩揉んで〜。

え？マジでやってくれんの？冗談のつもりだったんだけど。

あ、うん。じゃあお願いします…

先生、肩揉むのうまいね。気持ちいーわー。

この調子で胸も揉む？

あ、えっと、ウソウソ！マジ冗談だから！アメリカンジョークだから！

は〜、ドキドキした……や、なんでもない！

あー、うん。肩揉みはもういいよ。サンキュー。

先生はこれから残って仕事？

あー、メンゴメンゴ。ウチのせいで仕事進まなかったよね。

別に今からやれば間に合うって…ふーん、ならいいけど。

けど帰り遅くなったら家族の人とか、あとは…彼女とかに心配されない？

どっちもいない？そっか……

先生、彼女つくったりしないん？あと結婚して家庭持つとか。

興味ない、ね……ううん、なんでもない！

じゃ、またね、先生！今日は友達と遊ぶ約束してっから！

はいはい、帰って勉強もしますよーっと！じゃね！



【駅付近】

せんせー、みーっけ！

いやー、休日にこんなとこで会うなんてマジ偶然！何してんの？

散歩と買い物？へー、だからこんな駅近くまで来てんだ。

あそこのショッピングセンターに入ってるスーパーとか百貨店、安くてお買い得だし、見ての通り駅近だし、マジ便利だよね。

あ、そーだ！ここで会ったのも何かの縁ってことで、今からデートしない？

そそ！そこのショッピングセンターで新しい服買いたいと思ってたところだからさ！

いや、要る要る！荷物持ちと男の人の目線的な意味で！

へへっ、ありがと！お礼に後でなんか奢ったげる！




【ショッピングセンター(服屋)】

これなんかどう？……ふつうってそればっかじゃん！

他になんかないの？可愛いーとか、似合ってるーとか。

あー、はいはい。先生に期待したウチがバカだった。

ん……ありがと。荷物持ちよろしく。

あ、そうだ。昼メシ食いに行こーよ。ちょうどいい時間だし。

え？別に食わなくても平気って、それは先生だからでしょ。ウチは食わないと死ぬから。

あれ？けどそーいや、先生普段は学校で何食ってんの？

特に何も食ってない？まー、そりゃそうか。

つか、ゾンビって消化器官どうなってるん？

あ、そう。構造的にはあるけど働いてないから物食うのは無理？

ま、とりあえずさ！ここまで来たんだし、せっかくだからお昼付き合ってよ。



【ショッピングセンター(フードコート)】

ん〜まっ！ステーキってマジうんまい！

へ？いや、そりゃ食えるよ。

(小声で)

一応、人間の肉以外も結構好みだしね。

そそ。ウチは肉食系女子ってわけ。

先生にもこのおいしさを分けてあげたいなぁ〜。はむっ！

(咀嚼音)

んー？……え、奢るって、いやいや！流石に悪いって！

いーよ、それくらい！自分で出せるし！一応バイトもやってるし！

それに先生には世話になりっぱなしだからさ。

主に先生の肉食べる的な意味で。

そうそう。だから気にしなくていーの。

先生は付き合ってくれるだけで十分だから。

ん？……あっ、やべ！友達来た！

えっと、その、先生！ちょっと、これがそれで、その…

あ、ありがとー！じゃ、ちょっくら行ってくる！またね！

(うひー！流石に休日に先生と一緒にいるの友達に見られんのはまずいって！マジごめん、先生！)



【某所】

あ、ウチこっちだから…うん、じゃねー！バイバイ！

あー、楽しかった。先生とも友達とも遊べたし。

あー、帰って期末の勉強しないとなー…めんどくさ〜。

へ？ウチ？ウチになんか御用でs…ッッ！

い、いきなりなにするわけ⁉︎

は？お前が人を喰う化け物だってことは調べがついてるって…ち、ちげーし！

たしかにウチはグールだけど、生きてる人間を食べたことなんて一度もねーから！

きゃっ！ちょ…！

(取っ組み合い)

は、な、せ、よっ！このっ！

いっつ…！あー、もうしつこい！どっかいけ！


はぁはぁ……あー、なんでこんなことに…マジついてねー…

(咳き込む)

あー、やべ……マジ死にそう。てか死ぬ…血ィ出すぎ…

ッッ、誰⁉︎……って、せんせー…こんなとこで何してんの？

う、ウチ？いやー、これはその、なんつーか、のっぴきならない事情がございまして…

あー…そうそう。ウチ、今追われててさ。

退治屋だかハンターだか知んないけど、そーいう類の連中に。

あはは、マジ勘弁してほしいよね〜。

こーいう展開は漫画ん中だけで十分だってのに…

そそ、もう近くにいるっしょ？今絶賛大ピンチってやつ？

(咳き込む)

ヤッバ……マジ長く保たなそう…

せんせー、ウチのことはいいからさ……さっさとこの場から離れた方がいーよ。

なんでって、んなモン決まってんじゃん。先生も巻き添え食らうからだよ。

ほーら、わかったらさっさとどっか行って。

ウチは一人で大丈夫だからさ。

これでも逃げ足には自信あるし、チャチャっと逃げて家帰るわ。

うーん、そこはまぁなんとかするって。たぶん…

(咳き込む)

あー、シンド…つかウチもバケモンで再生能力あんのに、毒くらうとさすがに治り遅いなぁ…

あっ…えっと、それはまぁ、うん…そいうこと。

いや、まぁたしかに友達と遊んでたんだけどさ…帰り道にいきなり襲われてさ…

はあ〜あ…やっぱ人間って怖いなぁ。

自分と違う存在を見つけただけで排除しようとするし。

怖い…ホント怖いよ…

ねぇ、先生…ウチ、なんか悪いことしたかな？

そりゃあテストの成績は悪いし、学校でも素行が良いとは言えないけど…

殺されなきゃいけないくらい悪いことはしてないよね？

先生なら信じてくれるよね？ウチ、生きてる人間の肉なんて食ったことないよ。

生きてる人間食べるんだったら、そもそも先生に肉食わせてくれって頼むわけないし。

(咳き込む)

あー…なんか頭ボーッとしてきた…

うん…毒のせいかな。なんか心なしか呼吸苦しくなってきたし…

そ、毒。さっき攻撃食らった武器に仕込まれてたみたい。

あ、あはは…武器に毒仕込んでまでウチのこと殺そうとするなんて、殺意高すぎじゃん…

え……いや、攻撃されたのはつい3分前くらいだけど…

ちょ！いきなりはやめっ！んっ、んん〜っ！

はぁはぁ…傷口にいきなり口突っ込むなって！ビビるじゃん！

へ？………あ、ホントだ。すげぇ…体ん中から毒無くなった感じする…

とりあえずこれで出血抑えとけって、ありがと……って、先生、何する気…？

い、いやいや！そんなん無理ゲーでしょ！

アイツら、マジ危ないって！武器もヤバいの持ってるし！

俺は絶対に死なないから大丈夫って、もう死んでるからでしょ…

てかそーいう問題じゃなくて！ホントに危険なんだってば！

先生が危ない橋渡ることないじゃん！

何も見なかったことにして、さっさとどっか行けばいいの！

そしたら先生の日常は守られるからさ…

だからお願い。早くこっから逃げてよ…

たとえ死なないってわかったとしても…先生がウチのせいで傷つくのを見んのは耐えられない…

え？お前らしくないってどういう…？

いつもどおり助けを求めればいいって、いつもと状況全然違うじゃん！

ッッ、先生…！その言い方は卑怯だし…！

期末くらい頑張るし！今回こそ絶対赤点回避してやっから！

先生こそちゃんと無事で帰ってきてよ！約束だからね！


あーあ…マジで行っちゃった。

ホント、あんなんだからウチもすぐ頼っちゃうんだよ…バカ。

あー…今まで認めてこなかったけど、これってやっぱアレだよね…死にかけてるってのに心臓の音うるせーし…

うん…ちゃんと伝えよ。ウチの正直な気持ち。

せんせー…早く帰ってきて。

そんでまた、先生のこと食べさせてよ…ホント、一生のお願い、だからさ…




【某所】

せーんせっ！やっほ！おっひさー！

にしても先生…こんな橋の下でなんつー格好してんの？ホームレスみたいじゃん。

ふーん…今も連中から逃げてるんだ。そっかそっか。

(ハグする)

無事でよかった…！マジで心配したんだからね…！

あれから何年経ったと思ってんの⁉︎10年だよ、10年！

あの日から先生ずっと学校来ねーし、いつのまにか退職してることになってて…！

どんだけ探しても見つかんねーし、マジで何してんの⁉︎って思った。

あれからウチ、期末テスト頑張ったんだよ…？

赤点全部回避してさ…先生がいなくなったからって、落ち込んでる場合じゃないって思って…

先生があの時言ってくれたから。

「せめて今度の期末くらい赤点全部回避してから俺に偉そうな口を聞け」って。

進路？高校卒業して美容の専門学校行って、今は美容師やってる。

いやいや！普段はこんな口調じゃねーから！

お客さんの前ではちゃんと丁寧に喋ってるし！

んなことより先生…よかったらさ、うちに来ない？

なんでって、そりゃ先生には昔から助けられっぱなしだったし、その恩返し的な？

ほら、出世払いするって昔言ったじゃん？

あと久々に先生のこと食べてみたいし。

永らく先生のこと食べてなくて欲求不満だったんだよねー。

先生より美味しい肉に全然出会えなかったし。

ま、今の先生は汚すぎるから、ちゃんと洗ってから食べないとだけど。

髪の毛もヒゲも伸び放題だし、ちゃんと切って整えてあげる。ウチ、これでも美容師だし。

いーの！初回は無料サービスってことでやったげるから！

あとあと、それから……ッッ、あー、緊張するなぁ！どうすっかなぁ⁉︎

あーもうっ、言っちゃえ！

ウチ、先生のことが好き！だから一緒にいたい！

理由？わかんないよ、そんなの！

気持ちが確定したのは、あの日助けてもらった時だけど…それより前からずっと好きだった！

どんなわがまま言っても全く嫌がらずに淡々とこなしてくれるし、見返りも全然求めてこなかったし！

この人ならウチの良いとこも嫌なとこも全部見せて平気かなって思った！そんだけ！

ううん、そんなことない！

先生に心がないなんて全く思わない！

そりゃはたから見たら、機械的にウチの言うこと聞いてるようにしか見えないかもしれないけど！

ウチのことを助けてくれたときに確信した。

先生にも人の心があるんだって。

だってそうでしょ？あの時だけはウチのわがまま聞いてくれなかったし。

生徒に赤点取らすわけにはいかなかったからって、ほら！それがウチのためを思ってやってくれてることじゃん！

うん、それが心ってやつ。誰かのためを思って行動するのがそう。

無感情なのとか、そんなの全然気にならないし。

むしろウチだけがわかる先生の良さ的なもんだから、全然あり。

大丈夫！逆に来てくれない方が精神的に迷惑被るから！

それとも…先生はウチと一緒に暮らすのは嫌…？

あ………ふふっ♪そう来なくっちゃ♪

連中から追われてる問題も、先生が社会復帰する問題も全部二人で一緒に考えよ？

あと、これから先生の心も体も全部ウチがもらうから。

今のうちに覚悟決めといてよね、せーんせっ♪

・台本（ゆるボイ！）
ギャルなグール女子高生と無感情なゾンビ教師の物語
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎