ん？私に何か・・・って、ああ君ですか

授業はとっくの前に終わりましたが、まだ帰らないんですか？

私とお話していても退屈でしょうに

この本ですか？

ええ、最近気に入っている小説です

作者は有名なお方というわけではありませんが　とても素敵な文章を書かれる方で

書店で新しい本を探しているときに偶然見つけて

思わず買ってしまいました

それでこうして家でも学校でも　この本を読んでいるんです

とても幸せで心弾む時間です


「幸せそうに見えなかった」ですか？

まあ、感情が表情に現れることは滅多にありませんから

口元を緩めることもなければ、眉をピクリと動かすことも、涙を浮かべることもない

喜怒哀楽のない冷たい女だと思われるのは　致し方ないことではあります

ですが　私からすれば君も変わり者です

こんな無愛想で　教室の隅で本ばかり読んでいるような女に声をかけるなんて

よっぽどのお人好しか変人か　そのどちらかでしょうね


ところで　私たちが初めて話した時に貸した本は読み終わりましたか？

もうだいぶ経ちましたが

「読み終えたけど持ってくるのを忘れた」？

（溜め息）

それでは仕方ありませんね　では行きましょうか

「どこに？」って

君の家ですよ

近いんですよね　学校から


ふむ　少し散らかっていますね

「女の子が来るとは思っていなかったから」？

そういうことを期待して年頃の男の子は部屋を綺麗にしていると思っていましたが

本の読みすぎだったようですね

それで　私の貸した本は・・・っと

ん？何ですかこの薄い本は・・・

クールな女の子とあんなことやこんなこ・・・って　ああ！

何ですか急に、そんな慌てて本を取らなくても・・・

お好きなんですか？　そういうの

頷くだけじゃわかりません　ちゃんと声に出してください

えっ

私のことが・・・好き・・・？

何をそんな馬鹿なことを

からかうのも大概にしてください

私のような女が人に好かれるなんて・・・ましてや君に・・・


ああもう！

なんで私みたいなのにそんな優しくしてくれるんですか

なんで私のことをそんなに見てくれるんですか

なんで私といる時にそんな楽しそうな笑顔を見せるんですか

君と放課後お話ができることを楽しみに待ってしまう自分がいる

寝る前に布団の中で君の笑顔を思い出して眠れなくなってしまう

朝の憂鬱も君を思えばどこかに吹き飛んでしまう

君と会えることを楽しみにしてしまう

君の声が聞きたいと望んでしまう

家が近いことも君が友達とそんな話をしていたのをずっと聞いていたから知っていた

（一呼吸置く）

私は無愛想でつまらない女だから君には相応しくないと諦めていたのに

それなのになんでそんなことを言うんですか


「幸せそうだね」・・・って

だから　その　もう！

（溜め息）

ずっと隠し通すつもりでしたが言ってあげます

私も、君が大好きです

これだけ恥ずかしい思いをさせられたんです

一生をかけて責任を取ってもらいますからね

その・・・彼氏さん

・台本（ゆるボイ！）
気になるクールな同級生と過ごす放課後の時間
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・台本制作者
羽衣ロロモン