久しぶり…その、元気してた？

う、うん…お邪魔します…



お茶、ありがとね。

わたしが好きな茶葉、覚えててくれたんだ。

あぁ、うん…今日は、えっとね…

君と直接会ってお話ししたいなって思って…

相変わらずそっけないね…わたしとしては少し寂しいかな…

部屋、けっこう綺麗にしてるんだね。

か、彼女とかに掃除してもらってたり…？

あぁ、まだ独り身なんだ…そっか…

あ、お菓子…うん、いただきます。



え、わたし？……うん、それなりに上手くやってるよ。

旦那さんもその家族の人もいい人だし…

自分から人の近況聞いといて、あんまり興味なさそうだね…

ちょっと気になっただけ？

そっか…君にとってわたしって結局、その程度の存在なんだ…

何が言いたいって…別に何も…

用がないならさっさと帰れって…本当に冷たいね、君は。

昔から何も変わらない。その周りを寄せ付けない態度。

今もそういう態度ばっかりとってるから一人なんでしょ？

一応関係あるよ。これでも幼なじみで元カノだし。

なんで…なんで君はいつもそういうことばっかり言うの…？

わたしがここに来た本当の理由、わかってるくせに。

違う…違う違う違うっ！！！

その意固地な態度、もうやめてよっ！！！

なに俺は一人でも生きていけるみたいなツラしてんの⁉︎

本当はすっっっごい、寂しがり屋のくせに！！！

自分が周りを不幸にしてる？あんなの全部ただの偶然に決まってる！

一家離散も会社倒産も親友が亡くなったのも、君のせいなんかじゃないっ！

家族がバラバラになったのは、元々お父さんとお母さんがの仲が不和だったからでしょ⁉︎

会社も君が入社してからたまたま倒産しただけじゃない！

君の親友だって…君のどうしようもない境遇を案じて、君を支えようとしてくれてたんじゃない！

その帰り道に交通事故で亡くなったのは、君のせいじゃない！

あれはどう考えても前方不注意の運転手が悪いよ！

自分が周りを不幸にしてるなんて、自意識過剰もいいところだよ！いい加減にして！

わたしは……ッ、あの時、君が苦しんでるのを見て見ぬフリしてた。

ううん、むしろ自分のことばっかりで、君のことなんか少しも理解しようとしなかった。

君が急に冷たい態度をとるようになった理由なんて考えもしなかった。

昔の君を考えればすぐわかったはずなのに…バカだよ、わたし。

気づいてないとでも思った？

君、昔から自分の身の回りで嫌なことあると、すぐつっけんどんな態度とってたよね。

直接因果関係なんてないのに…自分が関わったってだけで、周りが不幸になってるって思い込んでる。

自分が関わった人が軒並み不幸になったのを目の当たりにしたら嫌でもそう思う？

だったら…わたしともう一度、寄りを戻して。

心配しなくていいよ。さっきのアレ、嘘だから。

そう、旦那さんと上手くやってるよってやつ。

別れたよ。元々親同士が勝手に決めた結婚だし。

うん。財産も全部投げ出して、ここに来た。

大丈夫だよ。子どもはいないから。

なんでそんなことをって、まだ君のことが好きだからに決まってるじゃん。

うん、あの時の嫌いって言葉は撤回する。

恥知らずって思われても構わない。

君になんて思われてようが、わたしの君への気持ちは変わらないから。

寄りを戻してどうしたいんだって…証明するんだよ、君が疫病神じゃないってことを。

わたしが君のそばにいて不幸にならなければいいんでしょ？

無茶じゃない！君の思い込みなんて、わたしが打ち破ってみせるから！

ほら、おいで？もう一人で頑張らなくていいから…

ったく、最後まで意地張っちゃって…はい、ギュー。

一回は君のこと最後まで信じられなかったけど…今度こそ君のこと、信じ切ってみせる。

うん…いいよ、泣いても。

どんなに挫けそうでも、君が一人で頑張ってきたこと、わたしは知ってるから。

よしよし……辛かったね、苦しかったね…

もう大丈夫。わたしがそばにいるから…

君に冷たくあしらわれたのは辛かったけど…君の抱えてる苦しみに比べたらなんてことない。

うん、わたしも君のこと全部許す。

代わりに、と言っちゃなんだけど、君もわたしにもう一度チャンスをくれる？

ありがとう……二人でもう一度、やり直そ？

うん…こちらこそ、またよろしくね。

・台本（ゆるボイ！）
幼なじみの元カノは俺のことを誰よりも理解していた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎