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【男性向け】後妻打ち【ヤンデレ】
written by 平 朝臣
  • 嫉妬
  • 敬語
  • 浮気
  • 歴史
  • ヤンデレ
  • 中世
  • 平安時代
  • 古文
公開日2022年02月20日 04:04 更新日2022年02月20日 08:15
文字数
1605文字(約 5分21秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
視聴者役柄
場所
平安時代の日本
本編
※《》内は、ナレーションです


《祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり》

《沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす》

《おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し》

《たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ》

(『平家物語』巻第一・祇園精舎より抜粋)

《ここ日の本にも、都におきて、ある一門がいきほひを振るうとてありき》

《一門の一人は、『この一門にあらざらむ人は、皆にんぴにんなるべし』と言ひのけきといふ》

《されど、栄華も長くは続かず》

《やうやう、かの者どもの力にも、陰り見ゆべくなる》

《物語はうつろひて、ある国に、一組の夫婦めおとありき》

《男は、かつて一門に負け、流罪となりし人なれど、女は、かぞそむきに逆らひてあひきといふ》

《されど、ある日、騒動は起こりき》

《そは、男が、女に黙りて他行たぎょうせるほどのことなり》


(しばらく間を空ける)


(夜、某州、妻の邸宅にて)


#不安げに、大きいため息を吐く

はぁ~...。

旦那様は、今、どちらにいらっしゃるのでしょうか...。

もうすぐで、うしの刻になろうというのに...。

わたくしは、不安でなりません...。

もしや、物の怪の類いに襲われたのでは...。

#かぶりを振る

っ...!

いいえ、あり得ません...。

旦那様は、武家の棟梁とうりょうの血を引くお方...。

あやかし如きに、遅れを取るはずがありません...。

それよりも、心配なのは、旦那様を略奪せんとする女でございます...。

#深刻そうな顔で

旦那様から寵愛を受けることは言うに及ばずですが、万が一にでも、嬰児みどりごを産むようなことがあれば、その時は...。

#一旦力を抜き、軽くため息を吐く

...はぁ。

これ以上は、考えても栓無きことです...。

今は、旦那様がお帰りになられるのを、待つしかありませんね。

その間に、母上からいただいたふみに、目を通すといたしましょうか。

SE:妻が手紙を開く音

#目を見開きながら

...っ!

そ、そんな...!

旦那様が...私の知らぬ間に...っ!

#歯軋りをする

っ...!

#嫉妬で怒り狂いながら

おのれ...おのれ、おのれ、おのれぇっ!

SE:文を破り捨てる音

めかけ風情が、旦那様を誑かすだけに飽き足らず、懐妊まで企むなど...!

許さぬ...断じて、許さぬっ!

かくなる上は...っ!

SE:襖を勢いよく開ける音


(しばらく間を空ける)


(翌晩、某州、某氏の邸宅にて)


SE:炎が静かに燃え盛る音(指示があるまで流し続けて下さい)

#ハイライトの消えた笑顔で

...うふふっ。

どういたしましたか、旦那様...?

そんなに、慌てなさって...。

...あぁ、これでございますか...。

実は、私の母上から、全てを聞き及んだのです。

旦那様が、私と出会われる前から、別の女に手をつけていたこと...。

そして、私をめとった後も、その女と密かに逢瀬を重ねていたことも...。

故に、後妻打うわなりうちを行った後、屋敷に火を放ったというわけでございます。

無論、逃走を図ろうとした女も、その場で引っ捕らえさせていただきました。

ですが、旦那様の子を身籠っていると、その女がしきりに訴えていたのが、少々気がかりでした。

なので、念には念を入れて、女の腹を裂いてみました。

すると、中には赤子どころか、何一つ入ってなかったので、ようやく安堵したという次第でございます、うふふ...。

#キョトンとしながら

...あら?

どうして、そんなに怯えてらっしゃるのですか...?

#冷たい笑みを浮かべながら

別に、私は、旦那様を咎めようとは考えてはおりません。

むしろ、毒婦に惑わされた、可哀想なお方だと思っております。

だからこそ、私がこうして、あの女を始末したのです。

何故なら、それが、本妻である私の務め...。

そして、旦那様への献身でございますからね...。

#狂気に染まった顔で笑う

ふ、ふふっ、ふふふ...あはははっ!

SE:炎が静かに燃え盛る音がフェードアウトしていく


《狂ひきべく笑ふ女を見つつ、男はただ、おののく他なかりき》

《以来、男は、妾を取ることをやめきといふ》

《後に、男は『右大将軍うだいしょうぐん』、女は『御台所みだいどころ』と呼ばるべくなれど、その者らと一族もまた、栄枯盛衰の理よりは逃れられざりき》

《されど、げに恐ろしきは、天道よりも、女子おなご悋気りんきならざらむや》

《あな恐ろしや、恐ろしや》
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【男性向け】後妻打ち【ヤンデレ】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
平 朝臣
ライター情報
タイラ トモオミ
 初めまして。
 平朝臣と申します。
 ヤンデレを題材にしたシリアスな作品が多めですが、耳かき系も少数ながらありますので、どうぞお楽しみください。
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