うぅ…もうダメ…お腹空いたよぅ…
あ、人間だ…だけど…もう…無…理…


（倒れる音）


う…ん…？
あれ？ここは…どこかの部屋…かな？
すごく広くて綺麗…
私、確か外にいたはず…だよね…？
う〜んと…記憶が曖昧だ…


（ノック音）


え？あ、ど、どうぞ？
あなたは先程の…
私が倒れたのを見つけて、ここに運んだ…のですか？
た、助けていただきありがとうございます！
是非お礼を


（お腹が鳴る音）


〜〜〜〜！
す、すみません！これはその…
実は少し前にお仕えしていたお屋敷をクビになってしまって…もう何日も食事をしてなくて…
行くあてもなく彷徨って、それで倒れてしまったんです…


しばらくここにいていい…？
そ、そんな！ご迷惑ですよ！
それに、私は


（お腹が鳴る音）


あぅ…で、では…お言葉に甘えて…
でも、その前に一つ言っておかなければならないことがあるんです
私は…吸血鬼なんです


普通の吸血鬼なら、信頼できる人間に正体を明かしてパートナーになったり、無理矢理捕まえたりして血を確保しているんですが…
私は昔パートナーだった人間に裏切られて…
どこかの人間からお金を受け取って、私を売ろうとしたんです
その時はたまたま気付いて、逃げ出せたんですけど


その後は、先程言ったお屋敷で住み込みで働いていたんです
同僚の子にお願いして血をもらってたんですが…
そのことがご主人様にバレて、追い出されました…


なので、ここにお邪魔しても迷惑かと…
え？血を吸っていい？
ダ、ダメです！ただでさえご迷惑をかけて…いるのに…
あ…美味しそうな首筋…
ハァ…ハァ…


ごめんなさい！


（血を吸う音）


プハ…ハァ…
あ、ごめんなさい！ちょっと吸いすぎました！
私ですか？はい…お腹いっぱいです…


でも、なんでこんな無茶をしたんですか！
もし私が悪い吸血鬼だったら、あなたが死んでしまっていたかもしれないんですよ！


そうじゃないのを知っていたから？
な、なんでそんなこと分かるんですか！
え？今日会う前から私のことを知ってた…
まさか…私の前のパートナーにお金を渡した人間って…あなた…だったんですか…？


あの人間がそういうことをすると知っていたから、話を聞いて…それで…


（泣きそうになりながら）
そんなの…私が…馬鹿みたいじゃないですか…
こんなに優しいあなたを…悪い人間だって勘違いして…
私、ここにいていいんですね？優しいあなたがいる…ここに…


（泣き止む）


今後どうするか、しばらく休んでから教えて…ですか？
もう大丈夫ですよ！元気いっぱいです！
それに、ここであなたのために働くと、もう決めました！
前にいたお屋敷で家事全般は教えてもらいましたからね、さっそく今からお仕事しますよ〜！


これからよろしくお願いしますね、ご主人様♪

・台本（ゆるボイ！）
【フリー台本】拾われ吸血鬼とご主人様
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
アイゼン