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【男性向け】わたしだけのご主人様【ヤンデレ】
written by 平 朝臣
  • ヤンデレ
  • メイド
  • 幼なじみ
  • 年上
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年08月28日 15:34
文字数
3786文字(約 12分38秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
メイド
視聴者役柄
主人
場所
現代
本編
(ドアをノックする音)

...失礼します、ご主人様。

(ドアを開ける音)

...夜遅くに申し訳ありません。

就寝なされる前に、一度お姿を見ておきたいと思ってしまい、つい...。

...?

どうなされたのですか、ご主人様?

...中々寝付けなくて困っている、でございますか?

もしや、3日後に控える、許嫁様とのご結婚式のことで不安になっておられるのですか?

...やはり、そうでございましたか。

...でしたら、ご主人様がお眠りになられるまで、わたしがお側で見守っております。

ですから、ご主人様は安心して、お眠りになって下さい。

...それだと、わたしが大変だから駄目、でございますか?

ふふっ...心配には及びません。

ご主人様のためなら、この程度のこと、苦にはなりません。

むしろ、ご主人様のお役に立てることができれば、それがわたしにとっての至福となるのです。

ご主人様が気に病むことはありませんので、何なりと申し付けてください。

...え?

なら、眠気が来るまで、話し相手になってくれ...でございますか?

ふふ...分かりました。

では、そうですね...。

せっかくですので、ご主人様とわたしの数奇な人生について、少し振り返ってみましょうか。

...元々、わたしは、旧華族の流れを汲む名家の一人娘として、この世に生を受けました。

もっとも、旧華族の中では、家柄も資産も下のレベルでしたので、そこまで裕福な生活を送っていたわけではありませんでした。

唯一恵まれていたのは、旧華族の中でも上位の家格を持つ旧清華家...すなわち、ご主人様の家と結びつきがあったことでしょう。

特に、わたしの父はご主人様のお父様とご学友だったこともあり、公私で付き合いがあったそうです。

その関係の延長で、わたしとご主人様も、幼い頃からよく顔を合わせていたことを覚えています。

...懐かしいですね。

わたしの方が年上であるにも関わらず、ご主人様に何かあっては一大事であるので目立つことはするなと、当時は父から繰り返し言われておりました。

一方で、ご主人様はそんなことを露知らず、年相応の元気さで、1日中遊び回っておりました。

わたしはご主人様から目を離さないようにするのが精一杯でしたので、半ば従者のように振る舞っていました。

今思えば、ご主人様のメイドとしての経験は、この頃に養われたのかもしれませんね。

疲れはしましたが、年下のご主人様をメイドのように見守る感覚は、当時も今も変わりませんから。

ですが、そんな日々は、唐突に終わりを告げました...。

わたしの10歳の誕生日に、わたしたち家族は火事に襲われました。

両親がわたしを優先的に逃がしてくれたおかげで助かることはできましたが、両親は燃え盛る家の中で焼死したと後で知りました。

あの日、一夜にしてわたしは、両親と住む家を失ったのです。

その後、わたしはご主人様の家に一時的に身を寄せることになりました。

ですが、当時は心の傷が癒えておらず、学校にも行かず、1日中、部屋に閉じこもっていました。

あの時、わたしも死ねればこんな辛い思いをせずに済んだのに...。

そんなことばかりを、ひたすら考えていました。

しかし、そんなわたしを見て励まそうとしてくれた人がいました。

それが、ご主人様でした。

ご主人様は塞ぎ込んだわたしを積極的に誘ってくださり、あの手この手で元気付けようとしてくれました。

正直に申しますと、最初は鬱陶しく思っていました。

でも、どんなに拒否されようとも諦めないお姿を見て、ふと想起したのです。

生前の両親が見守る中、わたしがご主人様と駆け回っていた記憶を...。

そして、初めて、気がついたんです。

わたしは、あの時からご主人様から頼りにされ、同時に見守る役目を与えられていたことを...。

そんな折、ご主人様のお父様から、今後の生活について尋ねられました。

他家に養女として引き取ってもらうことも可能であると言われましたが、わたしはどうしても納得できませんでした。

それに、ご主人様と離れ離れになってしまうことが嫌でしたので。

わたしは、何とかこの家に残して欲しいと切望しました。

すると、ご主人様のお父様から、わたしを養女とするかわりに、ご主人様のメイド役になって欲しいと頼まれました。

当時、雇っていた家政婦が高齢で病気を抱えていたこともあり、その後継者として、わたしに白羽の矢を立てたとのことでした。

それに加えて、ご主人様とわたしが気心の知れた幼馴染同士であり、将来的にも良い関係を築いてくれると見越した上での判断でした。

わたしはご主人様と一緒にいられれば、どんな体裁でも構わないと思っていたので、その場で了承しました。

こうしてわたしは、戸籍上はご主人様の義理の姉となりながらも、実質はご主人様専属のメイドとして、新たな人生をスタートしました。

その後も多少の紆余曲折はありましたが、ご主人様とメイドという関係は変わらず、今に至るというわけですね。

...振り返ってみますと、本当に色々なことがありました。

ですが、この関係も、もうすぐ終わりを告げます...。

ご主人様が許嫁様とご結婚なされれば、わたしはメイドの役を降りなければなりません。

本来は義理の姉であるわたしがご主人様の家庭まで踏み込むことはできませんし、あの嫉妬深い許嫁様がそれを許すはずもありませんからね。

...でも、だからこそ、これだけはお聞きしたいのです。

ご主人様は、わたしをどう思ってるいらっしゃるのですか?

メイドとしてではなく、義理の姉としてでもなく、一人の異性として、わたしをどう見ていらっしゃるのですか?

ご主人様のありのままのお気持ちで、どうか、お聞かせください...。

...っ!

それは、まことですか...?

本当に、信じてもよろしいのですか...?

...ありがとうございます。

そのお言葉が聞けただけで、わたしは満足です...。

...って、もう、ご主人様ったら...。

そんな大きいあくびを人前で見せたら、はしたないですよ?

もう...。

ふふっ...ですが、ようやく眠れそうで、少し安心しました。

では、わたしは、これで失礼させていただきます。

おやすみなさい...ご主人様。

(ドアの開閉音)



...やっぱり、ワタシと弟君は相思相愛だったのね。

そもそも、弟君はワタシと結ばれるべきだったのよ。

お義父さんも、口に出さずともそれを望んでいたのに...。

あの女が、お義父さんが亡くなった直後に、親の力と金を使って強引に婚約をねじ込んでくるまでは...。

成り上がりの娘の分際で、よくもそんな厚顔無恥な真似ができるわね...。

それどころか、手切れ金は渡すから弟君には近づくなですって?

どこまで、弟君とワタシを愚弄すれば気が済むのかしらね、まったく...。

...でも、そんな横暴が許されるのも、今日までだわ。

明日、あの女はすべてを失う。

かつてのワタシのように、親も家も、そして、弟君さえも...。

といっても、放火なんかしないけどね。

恋敵を蹴落とすために足が付くようなことをする人は、ハッキリ言っておバカさんだわ。

むしろ、世間的に言えば、ワタシが為すことは正義よ。

そして、それを可能にするだけの証拠も揃えてあるわ。

あとは、明日の報道を待つだけね...。

フフフ...楽しみだわ。



(翌朝)

(ドアをノックする音)

...ご主人様、失礼します!

(ドアを開ける音)

...起きたばかりにも関わらず、申し訳ございません。

それよりも、朝の報道番組は見ましたか?

手元のスマホでも構いませんから、ニュースを確認してみてください。

...驚きましたか?

金融商品取引法違反の疑いにより、許嫁様のお父様が保有している企業本社と自宅の強制捜査が行われたのです。

しかも、特捜部による内偵よりも前に週刊誌にタレコミが入っており、内部告発者とそれに親しい人物がいたことが伺えます。

おそらく、有価証券報告書の虚偽記載と偽計及び風説の流布が主な容疑となるでしょう。

これに付随する形で、日経平均株価が暴落し、投資家の間でも大きな話題となっております。

こうなると、予定していた結婚式も中止せざるを得ませんね...。

むしろ、早急に婚約を解消し、我々の無実を訴えるための準備を整える必要すらあります。

ですから、ご主人様、早めに許嫁様にご連絡を入れた方が...ご主人様?

...なぜ、ニュースサイトにも載っていない情報を知っているんだ、でございますか?

...ふふふふ。

そんなこと、どうでもいいことではありませんか。

だって、あの女の父親は、容疑者になったんですよ?

有罪か無罪かはさておき、十中八九、逮捕から立件、そして、裁判まで行われるでしょう。

そうなれば、社会的に死んだも同然です。

地位も、お金も、なにもかも失うでしょうね。

そして、それはあの女も同じです。

たとえ親が無実だったとしても、その後の人生は苦難に満ちたものとなるでしょう。

ですが、それは不特定多数の人間が下す社会的制裁であり、どうしようもできない問題なのです。

わたしは、その引き金を引く一助になっただけに過ぎません...。

むしろ、なにがいけなかったのですか?

もし、少しでもわたしが動くのが遅れていれば、ご主人様はあの女と結婚していたはずです。

そうなれば、ご主人様の経歴に傷がつきますし、離婚後も悪影響が及んでいたことでしょう。

ご主人様を守る...わたしにとって、動機はそれだけで十分なのです。

...ご理解いただけましたか?

では、ご主人様に変わって、わたしが直々にあの女に婚約解消を言い渡しますので、これで失礼します。

...それと、もうひとつ、申し上げておきます。

わたしも、ご主人様を愛しております。

メイドとしてではなく、義理の姉としてでもなく、一人の異性として...。

(ドアを閉める音)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【男性向け】わたしだけのご主人様【ヤンデレ】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
平 朝臣
ライター情報
タイラ トモオミ
 初めまして。
 平朝臣と申します。
 ヤンデレを題材にしたシリアスな作品が多めですが、耳かき系も少数ながらありますので、どうぞお楽しみください。
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