不審者に襲われ命の危機に瀕していた貴方。
そんな貴方を助けてくれたのは、半年以上も行方不明になっていた後輩だった。

ふぅ、間に合った……先輩、お怪我はありませんか？
そうですか、それなら良かったです。
この女ですか？
えっと……見ればわかると思いますけど、殺しました。
出来るだけ血が出ないように、だけど確実に殺せるように……あ、私の事は気にしないでください。
これくらい、何ともありませんから。

それより、まずはここを離れましょう。
この時間帯は人も少ないですけど、もし見られたりしたら厄介な事になります。
死体の後処理はどうにでもなりますけど、一度疑いをかけられた人を白にするのは難しいので。
だから今は──あ。
先輩、やっぱり少しだけ待ってください。
えっと、その……先輩のシャツ、血がついてます。
返り血は極力抑えたつもりだったのに……
そのまま外に出たら、きっと目立つので……とりあえず、それは脱いでください。
わ、私は目、閉じてますから。
と、とりあえず脱ぎ終わったら、汚れてない上着……それを着てから、ここを出ましょう。

よし、ここなら一息付けそうですね。
えっと、それじゃあ改めて。
お久しぶりです、先輩……元気にしてましたか？

私はまぁ……とりあえず、毎日そこそこ充実してます。
まぁ、元いた場所には二度と戻れなさそうですけど……
あー……さっきの、やっぱり話さないとダメ……ですよね？
先輩も間近で見てたから分かると思いますけど、あの不届き者には死んでもらいました。
なんで平然としてられるんだって言われても……
私、自分に関わりのない人を殺す程度じゃ何とも思いませんから。
むしろ、私の先輩を危険な奴から守ることが出来て、心の底から安心してます。
だって私……人を殺すの、初めてじゃないですから。
えっと、驚かないでくださいね？
私、最後に会った時に「バイトを始めた」って言ったじゃないですか。

実はあれ、人を殺すバイトなんです。

実は私、この仕事を始める前に一回、ダル絡みしてきた酔っ払いを……その、勢いで殺しちゃったんです。
普通に振り解こうとしたつもりだったんですけど、相手は思いのほか、あっさり死んじゃいまして。
その時にですね、たまたま居合わせた現役の殺し屋さんからスカウトされたんです。
私には人を殺す才能があったみたいで、その死体はうちで処理してあげるから、その代わりにバイトしてみないか……って。
今日だって、依頼された人を殺して来たんですよ。
その帰りに先輩が襲われてるのを見つけて、慌てて駆け付けたんです。
間に合わなかったらどうしようかって、すっごい不安でいっぱいだったんですけど──
（着信音）
あ、ちょっと待ってください。
この番号は……常連さんです。

（通話開始）

もしもし、この電話番号にかけて来たって事は──はい。
あぁ、この間の女……処分しちゃっていいんですね。
はい……はい……分かりました、それじゃあ方法はこっちで決めちゃいますね。
そうだ……えっと、あの……もし良ければ、今度どこかで、一緒にご飯を食べませんか？
久しぶりにゆっくり話したくて……ふふ、ありがとうございます♪
それじゃあ、処分が終わったらまた連絡を入れますね。
はい、失礼します。

（通話終了）

すいません、お待たせしました。
さっきの電話の人、いつも私に依頼をくれるんです。
歳の近い同性っていうのもあって、仕事以外にも色んな事を話せて……
先輩程ではないですけど、彼女も私にとって、大切な人の一人です。
先輩との約束通り、先輩以外にも大切な誰かを作ることが出来たんです。

さてと……それじゃあ名残惜しいですけど、仕事が入っちゃったので、これで失礼しますね。
えっと……今の私は、先輩の側にいるには汚れ過ぎちゃいました。
だから……だから多分ですけど、顔を合わせるのはこれが最後です。
本当はもっと一緒に居たいですけど、私は表に居て良い人間じゃないので、きっと先輩に迷惑をかけちゃうと思います。

だから……寂しいですけど、これでさよならです。

その代わり、先輩にもしものことがあったら、その時は必ず駆けつけます。
あの時、私の事を守ってくれたみたいに……今度は私が、先輩のことを守ってあげます。
まぁ、そんな日は来ない方が良いんですけどね。
それじゃあ先輩、どうかお元気で──さようなら。

わがままかもしれないですけど……私の事、忘れないでくださいね。

・台本（ゆるボイ！）
【後輩/離別】久しぶりに再会した後輩は殺し屋になっていて「サヨナラ」を告げられた
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・台本制作者
霜月鷹