0
【奇譚】ヤンデレ妖に人生をまるごと支配された。
written by ゆあ
  • 監禁
  • 色仕掛け
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 少女
  • ヤンデレ
  • 人外 / モンスター
  • 敬語
  • 洗脳
公開日2021年06月29日 23:50 更新日2021年07月01日 11:26
文字数
2393文字(約 7分59秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
ヤンデレ妖(あやかし)
視聴者役柄
少年期 成人期 高齢期 男性
場所
昭和初期? 雑木林 廃神社 人里
あらすじ
人見知りの少年はひとり遊びが好き。
ある時、雑木林の中の廃神社で遊んでいると、ヤンデレ妖と遭遇してしまう……。
本編
【シーン1 幼少期:境内】
《玉砂利を踏み歩く音》
《風が吹き、林が揺れる音》

もし…… そう、そちに聞いておるのじゃ……。
情けがあるなら、その籠の中の……蛙を離してはくれぬか……?

よいよい……。小さき者にも命がある……そのまま放してやるがいい……。

ところで、そちの顔は知っているぞ。
このやしろによく来ては……池で遊んでおるのう……。

いつも一人じゃ……。
そちのことを好いてくれる友はおらぬか……?ふふ……。

わらわ……?ふふ……わらわはわらわ…… そちにしか見えぬ者……。
わらわもさみしい……誰ぞこの手を握りしめてくれる者はおらぬかと、願っておった……。

まるで狐につままれた様子じゃのう……そちの顔に書いておるぞ。
わらわは夢か幻か……魂を抜かれるやも知れぬ恐怖と、人の子とは似ても似つかぬ姿に……怯えておる様だのう……。

ふふふふふ、如何にも………。
わらわに呼ばれ、わらわに振り向いた時点で……即ちそれは『負け』なんじゃ……。
どうして一人でこの林に入った……!
あれ程に大人達からは忠告されたであろう……あの神社の主は化物だ……子供は決して近づくな、と……!

だがのう……目的はむしろその逆か……。
本当は興味があって通っていたのじゃろう……。
はて……そちの思う『怖い化物』には出会えたかのう……?……クククク

《スッとすぐ側に立つ》

“うしろの正面だあァれ”……。
わらわを当てたそちの負けじゃ……。
そちはもうわらわのもの……!わらわだけのものじゃあ……ヒヒヒ
では、この糸をそちに進ぜよう。片方を小指に結んで、もう片方はわらわの小指に……こうじゃ……。

これでわらわとはつがいになった……。
二度とはほどけぬ術じゃから……そちはのう……誰を好きになろうと叶わぬ夢よ……。
ずっとずっとわらわの糸に絡まり、引き戻される運命じゃ……。

その魂は、わらわの『慰み物』じゃからなァ……!
んん?そちめ……今頃泣き出しても遅いぞ!……わらわのものじゃ!……わらわのもの……わらわのもの……。ははははは……!

【シーン2 成人期:結婚初夜】

あなた様…… お布団を敷きましたので、奥の座敷へどうぞ。

《襖を閉める音》

今宵はあなた様と初めて迎える夜……。
いかがなさいました……?お布団が一つしかないと………?

……そんなに恐縮されなくても。
私達は夫婦になったのですよ……?
たとえ親が決めた相手でも、私はあなた様のことがとても好き……。

どうぞ側に来て……。
《肩によりかかる衣擦れ音》
あなた様ァ……どうして戸惑うのです……?
私はこんなにも、あなた様に惚れているのに……。

え……………。
まだ成人も迎えていない子供なんて……抱く気にならない、って………。
…………ッッ゛!!
《一気に主人公を押し倒す》
違う………違う………違う!違う!違うッ!!!!………ソウデショウ……?
ねェ………どうして私を見るなり、怯えたように目を逸らすのです……?

もしかして……この顔にどこか見覚えがあるのでは………?

あなた様には……過去に失われた記憶がある……今もうっすらと脳裏をかすめるのは……
子供の頃から大人になるまでに幾度かすれ違っていたかもしれない……
一人の少女と過ごした『時間』……。

忘れたくなくて…… 思い出せなくて……
あなた様はそれを残す為に、真っ白な紙に描き写しました……。
来る日も来る日も……心に語りかける少女の面影を……
まわりの者からは気味が悪がられていたようですけど………クスクス。

ところで…………私がその妖だったとして、今更どうされようと言うの?………アナタサマ………。
憑物を祓うがごとく、その手で私の息の根を止めますか………?
それとも………もう、遅い?………フフ……どうして……何も言えないのかしら……。

怖い…… 怖いはずなのに……きっと待ちわびていたのは……あなた様の方………。
だって、ほら……その火照った体は……隠し通せやしないもの……ふふ。
今まで辛かった?……胸が勝手にうずいてしょうがなかった………?

もっと自分のことをお知りになりたいのね……。
ほら、あなた様……私の瞳の奥を、ゆっくり覗いて下さいませ……。
見えるでしょう……子供の頃に……手まりをついて遊ぶ少女と……小指に結んだ赤い糸……。

♫てんてん てんつく まりをつく
 あにさを おもい まりをつく

 およめに なるまで わすりゃせぬ
 うめがちっても しょうぶがさいても
 わすりゃせぬ わすりゃせぬ

 むすめの のろいは たちきれぬ
 うめがちっても しょうぶがさいても
 たちきれぬ たちきれぬ

そうよ……その胸に絡まる糸は……私以外どんな出会いも許さなかった……。
あなた様ならば……この先に起きることも予感してたはず……。
日を追うごとに『巻かれる力』もいっそう強くなって……。

もう逃げ場はどこにもないのです……。
素直に私の餌食になればいい……。
そうすればきっと………楽になれるわ……。

《浴衣が脱げ落ちる音》

私の肌……綺麗でしょう………。

赤く膨らんだほおずきに……唇を寄せるように優しく抱きしめて……。
艶めく長い髪も、小さな胸の膨らみも……あなた様の為に育ったのものよ……。

もっと私の体を好きなようにして………その精気を吸い尽くしてあげますわ。
……次の夜明けが来るまで……。

【シーン3 高齢期:境内】
《玉砂利を踏み歩く音》

懐かしいお社……あれからもう何十年ぶりになるのかしら。
いつ来ても静かで良い場所ね……。

今日は一人で此処へ来るつもりだったのに……あなた様ったら、本当に融通の効かない人……。

《突然の突風に吹かれる音》
《突風が収まると、妖少女の姿》

そちめ…… わらわの情けを踏みにじりおって……。
この姿に戻れば最期……そちとは今日で別れを告げるつもりでおったのに……。

これこれ……大の男が泣くでない……。
いいか、そもそも歳をとらぬわらわがいつまでも側にいて良い訳がない……。
それに、子に囲まれたそちは幸せ者じゃ……。
せめて晩年くらいは放ってやりたかったのに……つまらぬお節介じゃったのう……。

……どうしても、来るのか?……分かった。
そちの気持ちはしかと受け止めた。では、こちらへ来るが良い。

《本殿の扉が音を立てて開く》

今までのわらわは眠ってはおらぬ。人から怪しまれぬよう芝居を打っておった。
これからが本当に深い眠りじゃ……何百年、何千年……次に目が覚めるのはいつの世のことか。

とうとう、そちを生け贄にしてしまうのだな……。
もしや、わらわを気遣ってのことか……?
なんと……いじらしい……優しい男よのう……。
もっと抱いて……わらわの胸に甘えるがよい……。
この先、そちが亡骸になろうともな……。
わらわとは……とこしえに……つがいのままじゃ……。

そちはわらわのもの………わらわのもの………わらわだけのものじゃ………。


―了―
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【奇譚】ヤンデレ妖に人生をまるごと支配された。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ゆあ
ライター情報
 ゆあと申します。
 基本、気の向くままに思いのままにをモットーにしています。
 物書きが好き。シチュエーションボイスが大好き。
 コツコツ活動しますので、以後お見知りおきを。
有償販売利用の条件
当サイトの利用規約に準ずる
利用実績(最大10件)
ゆあ の投稿台本(最大10件)