わっ！……ふふ、びっくりした？

え？お姉ちゃんかと思った？

ふふっ、似てるからね。あたしたち姉妹。

それで？こんな時間に、こんなところで何やってるの？

ふーん…お姉ちゃんに襲われそうになって逃げてきた、と。

うん、事情は大体わかった。

とりあえずうちにおいで。

天界に帰るにしても時間、遅すぎるでしょ？

遠慮しなくていいよ。全然迷惑とかじゃないから。



落ち着いた？

そっか、よかった。

それよりごめんね、うちのお姉ちゃんが…

いつものことだから気にしてないって…

ふふっ…それはそれでどうなの？

モテモテだよね、お兄さんって。

お姉ちゃんたちまで夢中になるなんて思わなかった。

うん。あたしは三女の西海龍王(せいかいりゅうおう)。

名前は白龍。よろしくね。

妹の青龍から話は聞いてるよ。

天界でモテまくってるくせに、下界に降りて堂々と浮気しようとしてる、どうしようもない彼氏だって。

それは誤解？本当に？

ふーん…まぁなんでもいいけど、可愛い妹を泣かせたら海の底に沈めるからね？

ふふっ、まあね。これでも海の支配者だから。

ん？四海龍王の中では誰が一番強いのかって…

そりゃ青龍でしょ。あの子、四神の一角だよ？

姉妹喧嘩は…したことあるけど、そんなガチの殴り合いとかはないよ。

そんなことしたら、海荒れるし。

あたしたち姉妹でなにか気になることでも？

うーん、あの子が四神に選ばれたのは…なんでだろ？

単純に腕っぷしが強いってのはもちろんだろうけど…

あとは生真面目さが天帝陛下に評価されたんじゃない？多分。

え？そうだよ？四神を任命したのは天帝陛下だよ？

うん。青龍、いきなり陛下から東全体の守護を任されたって聞いて焦ってたね。

ふふん。そうだよ、うちの妹はすごいんだから。

君みたいなステキな恋人も作ってくるし…ホントすごい。

へ？恋人じゃない？じゃあ何？

…それ、本気で言ってる？消し炭にされるよ？

はぁ…あの子、苦労してんだろうなぁ…

まったくチャンスがないって思い込んでたけど、彼がこの調子なら…

あ、なんでもない。こっちの話。

じゃあ確認だけどさ、君、ほんっっとうに彼女いないの？

ホントに？四神の誰かと正式にお付き合いはしてない？

オッケ、わかった。

じゃあ、あたしもこの戦争に参加させてもらうね。

(キス)

ふふっ、さすが英雄くん。キス慣れしてるね。

なんの真似だって…参戦するの。君の争奪戦にね。

倍率めちゃくちゃ高いのは分かってるけど、あたしも君のこと好きだから。

なんなら、青龍より前に好きになってたかも。

うん。天地の戦争で、君は人も神も区別なく助けてた。

青龍だってそう。君に救ってもらった。

ホントはもっと早くにお礼を言うべきだったし、この気持ちもすぐ打ち明けるつもりだったんだけど…

でもできなかった。青龍が君にガチ恋しちゃったから。

その時のあたしは、自分の気持ちより妹を優先したの。

青龍も妹としてすごく可愛がってたから…

あの子が幸せになれるならそれでいいかなって思った。

でも君は誰も選ばなかった。選ぶつもりもなかったんだ。

ふふ…分かるよ。

君のこと、ずっと見てたもん。

誰に言い寄られても付き合わなかったのは、誰か一人を選ぶと、他の誰かが傷つくって分かってたから。

あたし、そんな君にますます惚れちゃった。

うん。どんな誘惑にも屈しなかった、強い君が好き。

あはは、たしかに。

誰も選ぶ勇気がない臆病者だって、罵ることは簡単だよ。

でもあたしはそうは思わない。

誰も不幸にしないって決心するのも、並大抵の覚悟じゃできないと思うから。

重かったでしょ？苦しかったでしょ？

みんなから寄せられる好意に押し潰されそうで、怖かったでしょ？

あたしが今からそれ、取り除いてあげるね。

……今何を食らわせたのかって？

白い龍の息吹(ホワイトドラゴンブレス)。

分かってると思うけど、物理的ダメージはないよ。

これまでの思い出は全部消えるけどね。

そ、全部。

自分が何者なのかも、どこの誰に愛されてたのかも、そのうちぜーんぶ忘れちゃう。

…そんなに怖がらなくても大丈夫。

あたしがそばにいるから。

まっさらになった君でも、好きでいてあげる。

今抱えてるもの全部無くしちゃってさ、またゼロからやり直そ？ね？

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ四海龍王に気に入られてお持ち帰りされた〜西海龍王・白龍編〜
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎