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私と猫、似た者同士。
written by 夜木嵩
  • ファンタジー
  • 孤独
  • 出会い
公開日2022年08月17日 18:20 更新日2022年08月17日 18:20
文字数
2475文字(約 8分15秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
しゃべる猫
視聴者役柄
一人暮らしのお姉さん
場所
橋の下
あらすじ
最近は家に帰っても一人の暮らしをしているあなた。
ある雨の日の帰り、橋の下で人間の言葉を話す猫と出会う。
不思議に思いながらも、孤独の紛らわせにお話に付き合ってみることに。
そんな、のんびりとした現代ファンタジーの一幕。
本編
 (雨)

お姉さん、一人ですか?

ごめんなさい、ナンパのつもりじゃないんです。
だって、猫ですから。

あ、下です。
はい、ここにいますよ。

お姉さん、怖がらないんですね。
よく人間の言葉を話すだけで不気味がられて、最近傷付いていたので、なんかそれだけで嬉しいです。

ボク、やっぱり嫌われてるんでしょうか?
元の家族に捨てられて、もうどれ程経つのか……誰にも見向きされてないような気がします。

こっちから話し掛ければ、目も合わせてくれずに妖怪だとか不審者だとか、怪しまれる始末。
夜もこんなところでひとりだし、嫌になってきますよ。

でも、そろそろ慣れてきたのかも。
大体、誰かに合わせるのも得意じゃないし、今みたいな一人も気楽かなぁって。

困ることがあるとすれば、食べ物と、今日みたいな雨。
人の作った街のおかげで、ここみたいな橋の下なら濡れなくて済むっていうのはありがたいけれど、それでも食べ物探しも必要ですし。
お姉さんのように、出かける時は傘を持って、なんて出来ませんもの。

だから、今日みたいな日はちょっと孤独を感じてブルーです。
ボクのことを捨てたわけだから、絶対にそうとは言えないですけど、あの時はまだボクの事を守ってくれる存在がいたんだなぁって。

多分、生まれつき野良なら何にも思わなかったんでしょうけど。
幸せを知ってしまうと、きっと生き物は弱くなってしまうんでしょうね。

お姉さんも、なんだかそんな弱さを感じたんです。
何か、自分を愛してくれる大切なものを失ったような。

あ、いいんですよ。
お話を聞きたいわけじゃないですから。

なんか、ボクと同じようで、放っておけなくて。
あと、同じ心情なら、ボクのことも優しく受け入れてくれるような気がして。
そんな感じの、ただの自分勝手ですよ。

お急ぎじゃないのなら、もう少し一緒にいられたらなって。
いいですか?

あ、お帰りのところでしたか。
とはいえ、ありがとうございます。

……お姉さんは、一人ってどうですか?
人間も、最近はシュミやコジンシュギが大事みたいな話も聞きますけど。

そうですか。
今はよくても、これから、ですか。

その辺は、やっぱりボクらとは違うんですね。
ボクがひとりで生きていくのは、野良では自然なことですし。

人間って、幸せな生き物なんですね。
ちょっと羨ましいかも。

意外、ですか?

あー、なんか、人間って猫の事、幸せそうって思ってる気がします。
お姉さんもそういうこと思うんですか?

でも、ボクも一緒か。
知りもしない人間の暮らしを羨んで、知りもしないのに人間から暮らしを羨まれて。

自分って、幸せなんでしょうか?

この暮らしをやっていけないというほどじゃないですけど、大変なことはいっぱいあって、でもストレスのない瞬間だってあって。

それにボクなんかは、特にひとりっていうのが、好きなのか嫌いなのか、ちょっとわかんないんです。
昔を思い出せば、やっぱりあの人たちだって愛してくれてたんですから。

正直、ちょっとうざったいって思うこともありましたけど、今は恋しくなったりして。
一番いいのは、好きな時にいられる人間のお家があることなんですけどね。
えへへ、我ながら何とも猫らしい自分勝手。

人間にはそんなこと、出来ませんね。
簡単にどこかへ行って、ふらっと戻ってまたどこかへなんて、許されるのは昔のあの映画ぐらいなような。

ボクらなら、飼い主次第では許されますね。
たまに見かけるこの辺の猫に、そんなのがいた気がします。

でも、人間と猫が別の生き物だから許されることなんでしょうけどね。
気ままに都合よく生きたかったら、お姉さんとか人間も、何かに飼われてみます?

ほら、それは嫌って言うと思った。

そういうことです。
人間も猫も、お互いの良いところと悪いところがあって、どうせ入れ替わってみれば、すぐに元に戻りたいって言うに決まってるんですよ。

羨ましがれば都合のいいところしか見ない。
勝手に自分を辛くする方法でしょうね。

そんな妄想を暇つぶしにするぐらいなら、自分をよく見ようって、時々言いたくなるんです。
もちろん、そんなこと言える話し相手はいないんですけど。

しっかりと話を聞いてくれるのはお姉さんが初めてですね。
もしかして、そういう相手を誰でもいいから探してたんですか?

ふぅん、なんだかんだ、今でさえ孤独なんじゃないですか。

人間は強がる生き物ですねぇ。
でも、猫に強がったのはお姉さんが人類史上初めてなんじゃないですか?
前の家族とか、なんか悩み事を一方的に話したりしてきましたし、弱さを見せられる相手みたいな認識をされてる気がします。

あは、ボクだから、ですか?
あーあ、それなら、ずっとにゃんにゃん言っておけばよかったかも。

はい、ボクだって元々は人間の言葉なんか話せませんでしたし、普通に鳴きますよ?

 (鳴き声)

散々喋っておきながら、今更これじゃ変ですね。

でも、いつからでしたっけ……
多分、捨てられた頃からですね。
愛されてた時の記憶を思い返してると、不思議と話せるようになってたんです。

なにひとつ練習とかもなしに。
一体、何故なんでしょうね。

ただ、とにかくわかったのは、人間相手でも話してそんなにいいことはないみたいってことです。

お姉さんぐらいですよ。
ボクを受け入れてくれるのは。

……あ、なら丁度いいかも。

お姉さんも寂しいわけですし、他の人の幸せに嫉妬する暇があるなら、ボクでも飼ってみます?
もちろん、ボクは都合よく使えるお家が欲しいわけです。
お姉さんの孤独の癒しと、ボクの居場所。
ギブアンドテイクってやつですね。

と、とにかく、撫で放題ってことで、お姉さんのもふもふを許してあげますし……

お家に入れてさえくれれば、最悪食べ物はなくてもいいですから。
本当は、あると嬉しいですけど……

うーん、なんか、これはこれでナンパみたいですね。
同居のお誘いだから、あながち違わないのかも。

なーんて、しつこく迫るつもりはないですよ。
しつこいのはボクの方が苦手ですから。
だって猫ですもん。

っていうことです。
お試しっていうのもアリですよ?
嫌なら、今でもいつでも言ってくれればいいんです。
何も言わないんなら、お家までついて行きますからね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
私と猫、似た者同士。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
ヤンデレとか書きます。

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