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はしゃぎすぎて足を挫いた先輩を背負って帰った道すがらのお話
written by うずにわ
  • 告白
  • 甘々
  • 先輩
公開日2025年05月22日 21:52 更新日2025年05月22日 21:52
文字数
2653文字(約 8分51秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
先輩
視聴者役柄
後輩
場所
帰り道
あらすじ
今日こそ、先輩に告白する。
その覚悟で、初めて2人で出かけた、は、いいものの。

「ごめんね〜、送ってもらっちゃって」

さすがです先輩。
あんなにも綺麗に足を捻る人、久しぶりに見ました。

……本当に、この人といると退屈しない。
だから惹かれたのだと、改めて思った。
本編
(先輩と2人で出かけた帰り道)

(電車を降りて、歩きながら)


 いや〜〜〜〜。


(背中から聞こえる、先輩の声)


 ごめんね〜、送ってもらっちゃって。

 まさか最後の最後に足を挫いて背負われることになるとは思わなかったよ……。
 やっぱり歩くのがわかってる時は慣れない靴なんか履いちゃダメだね。


 ……ほんとごめんね〜、重いよね〜……。

 めんどくさくなったらその辺に放り捨てていいからね〜……。
 
 え、ちょっと、そんな怖い顔しないでよ!
 冗談だって、冗談……。


 ……はぁ。

 ごめん、忘れて。

 チョケる場面じゃないわ。

 うん。わかってる。
 心配も手間もかけさせといて茶化すのは違うよね。
 
 

 でもさ〜〜!

 気まずいんだよ〜〜!


 私、先輩だよ?
 たかだか1、2歳差とはいえお姉さんなんだよ?
 本当なら、私が君の手を引いてあげないといけないはずなのにさ。

 それが、だよ?

 初っ端から家に財布を取りに戻って君を待たせる、お昼に入ったお店では水をひっくり返して君の服を濡らす!
 しまいには、植物園ではしゃぎ過ぎた挙句に足を挫いておんぶされる!!


 ……は〜ぁ……。

 これじゃお姉さんどころか妹ですらないよ。
 手のかかる娘さんでしょ、もはや。


 ……あっ、コラ、笑わないでよ!

 はいはいそ〜ですよ、どうせ普段から頼れる先輩なんかじゃありませんよ、私は。

 ……けどさ〜、初めて2人でお出かけするってなったら、ちょっとくらい見栄を張りたくなってもしょうがないでしょ?
 せっかくキミが誘ってくれたんだし、たまには背伸びしたくなるって。

 ま、物理的に背伸びしようとして厚底の靴なんか選んだ結果がこれだっていうんだから馬鹿馬鹿しい話だけどさ。


(ははは、と自嘲気味な笑い声)


 ……あ、その交差点、右ね。
 ちょっと行ったらツツジの生垣があるアパートが見えると思うから、そこまでお願い。

 ごめんね、あと少しだけ、頑張って。


(耳元でため息が聞こえる)


 ……ねえ。

 今日は丸一日、キミに謝ってばかりだったけれど……最後にもうひとつだけ、謝りたいこと、あるんだ。


 ……えっと……。


 ごめんなさい。
 今日のキミが一番言いたかったはずのことを、結局、言わせてあげられなくて。


 ……うん。
 気づいてた。
 

 昔から人の顔色には敏感なものでね〜。

 ましてや、私にとってたった1人の、大事な大事な後輩クンのことともなれば、よ。


 ……あ、ほら。

 今、焦ったでしょ。

 分かっちゃうんだ、そういうの。

 たとえ背中越しでも、顔が見えなくても、はっきり分かるよ。
 他の誰でもない、キミのことだもの。


 ……怖がらないでいいよ。

 いつか、私も同じことを言うつもりだったから。

 本当だよ?

 私が不甲斐ないせいで、キミに先を越されかけちゃったけど……ずっと、私から、私の言葉で伝えないと、って思ってたんだ。


 ……嬉しかったなぁ。

 先週の水曜日に、キミが「2人で遊びに行きませんか」って言ってくれた時は。

 あの瞬間の、決心したようなキミの顔は、当分忘れられそうにないよ。


 ……心のどこかで、不安だったんだ。

 私は、お世辞にも立派な先輩とは言えないから。

 失望されてたら嫌だな。
 どうしようもない奴だって思われてたら嫌だな。
 キミに限ってそんなことはないと信じたいけど……もし、鬱陶しいって思われてたら、すごく嫌だな。

 今度こそ、って思うたびに、意気地なしな考えが頭を掠めてさ。

 伸ばした手を引っ込めて、溢れかけた声を飲み込んで。
 そんなことをずっと繰り返して、繰り返して、繰り返して……とうとう、キミから歩み寄ってもらっちゃった。

 
 ふふっ。
 カッコ悪いね、私。


 でもね、だからこそ、今日は最高の1日にしようと思って、いっぱい準備してたんだよ?

 知っての通り、私はおしゃれのことなんて全然知らないし、気になる人と2人で遊びに行ったこともほとんどないから。

 友達に相談したり、ネットで調べたり、お姉ちゃんに買い物付き合ってもらったり……いやはや、らしくないことしたもんだ。


 ……なのにさぁ。

 キミが真剣な目で口を開こうとするたびにドジを踏んで、迷惑かけて気を使わせて。

 もどかしいはずなのに。
 どうしてこんな、って思ってるはずなのに。

 それでもキミは笑ってくれた。
 私は、その顔が申し訳なかった。


 気にしなくていい、って、きっとキミは言ってくれるんでしょう?

 だけど、私にとっては……。


(『でも』)


 ……え?


(『先輩も笑ってたじゃないですか』)

(背中で小さく、息を呑む音がする)


 ……うん。
 そうかも。

 私も、笑ってたね。


 当たり前じゃん、楽しかったんだから!

 遅刻しようがコップを倒そうが足首を痛めようが、そんなの全部上書きできちゃうくらい楽しかった!

 
 だけど……ううん、「でも」や「だって」は、ちょっと違うか。


 ……ねえ。

 私たち、これからもずっとこんな感じかもね。

 いいとこ見せようとしたり、大事な一歩を踏み出そうとするたびに、なんやかんやでケチがついて、上手くいかなくて。
 私が「ごめんね」って謝ると、キミが「大丈夫」って答えてくれるの。


 情けない私のそばに、優しいキミがいてくれる。
 そんな日がいつまでも続くなら……私、他には何もいらないよ。


 ……と、言っても!
 まだ「頼れる先輩」の立場を完全に諦めたわけじゃないけどね!

 見てなよ、いつかキミの口から「さすが先輩です」とか「先輩のおかげです」とかそういうセリフを引き出してやるんだから!


 ……なんて、背中に担がれながら言っても説得力ないか。

 やれやれ。
 先は遠いなぁ。

 
(ツツジの生垣の前に差し掛かる)


 あ、ここだよ、私の家。

 お疲れ様。
 ここまでくれば、もう平気。


(扉の前で、先輩を下ろす)


 ……あ、そうだ。


(ドアノブに手をかけたまま、先輩が振り返る)


 あの、さ。

 早く帰らないといけない理由とか、あったりする?


 ……あ、ないんだ。

 じゃあ、夕飯、うちで食べて行かない?
 今日のお礼とお詫びも兼ねて、何か作るよ。


 ふふん。
 そうだよ、こうみえて自炊派なのです。
 何をやらせてもてんでダメな私でも、料理だけはちょっと得意なの。

 というわけで、ここは一つ、名誉挽回させてもらえませんか。


 もう、遠慮しないでよ。
 何も汚名返上のためだけってわけじゃないんだから。


 ……え?
 それは……えっと……。
 
 できれば、もうちょっと、一緒にいたいかな、みたいな……。


 ……ちょっと、そんな生暖かい目で見ないでよ!

 ほら、さっさと上がって!


 ……ええ!?
 照れてないよ! ……いや、照れてるよ!!
 この、わかってて聞きやがったな!

 先輩をからかうんじゃありません!


(ギャーギャーいわれながら、先輩の家にお邪魔する)

(もう少しだけ、今日が続く)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
はしゃぎすぎて足を挫いた先輩を背負って帰った道すがらのお話
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
うずにわ
ライター情報
シチュエーション台本やASMR台本を主に書いています
シチュボというかボイスドラマというか、リアリティラインは微妙な塩梅ですが、楽しんでいただけると嬉しいです
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