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ヤンデレ警察官と殺人鬼
written by 夜木嵩
  • ヤンデレ
  • 警察 / 刑事
公開日2021年07月24日 18:30 更新日2021年07月24日 18:26
文字数
2591文字(約 8分39秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
あなたを追いかける天才女刑事
視聴者役柄
警察を幻惑する殺人鬼
場所
現場近くのビル屋上
あらすじ
何度目かの犯行、警察などあなたの敵ではないと高を括っていた逃走中、あなたはビルの屋上で女刑事に拳銃を向けられる。
だが、そこで伝えられた言葉は愛の言葉だった。
本編
「はい、動かないでね。
動いたら容赦なくあなたの頭に風穴を開けるからね。

こんなに早く、あなたを追い詰められるとは思ってなかったわ。
もちろん、私の使命としてあなたを捕まえなければいけないんだけれど、あなたの前では私たちの無力さを露呈するばかりだったものね。

今まで何人の犯罪者を捕まえてきたかわからないけど、こんなに私を本気にさせたのはあなたが初めてよ。
予告状を出して挑発させておきながら、私たちの前で堂々と犯行を遂げて事件現場だけをそこに残していく。
私たち警察のプライドを弄んで、本当に腹が立つわね。

でも、あなたはここで終わり。
やっと雪辱を晴らせるわ。
ああ、この日をどれほど待ったことか……

罪深きあなたの両腕に、手錠を掛けること、最近はそればかりを考えていたわ。
あなたを牢屋に入れるまで、刑事を辞められない。
あなたを止めるためなら、相打ちになろうとも構わない覚悟で追い続けたんだから。

そうだとして、なぜこのビルにいたのか?
ふふふ、それは愚問だと思うんだ。
だって、あなたはこうしてここにいるじゃない。

あなたが来るという確証があるのなら、私がそこに向かうのは当然だよ。
むしろ、あなたの逮捕に執念を燃やす他の刑事たちがここにいないというのが私にはがっかりなくらいよ。

だけど、ここで二人きりだから私たちはこうものんびり話せてるんだけどね。
あ、拳銃を向けられてるあなたはそんな落ち着いた気じゃいられないか。
私、あなたを前にして昂ってるもの、引き金を引く指にちょっと力が入っちゃってるの。
……冷静な判断、出来なくても許してね?

そろそろ、お待ちかねの逮捕といきますか。
令状は持ってないけど、現行犯だから関係なし。
大人しく、手を出しなさい?
もちろん、それ以外の余計なことをするのは厳禁だから。

……あら、意外と抵抗しないのね。
何? 殺す対象以外は傷付けないっていうプライド?
確かに、あなたのような天才肌のシリアルキラーに悪足掻きは似合わないわ。
どうもありがとう。気兼ねなくあなたに引導を渡させていただきます。

殺人の現行犯で午前1時18分、現行犯逮捕!」

(手錠を掛ける)

「やった、やっとあなたに、手錠を掛けられた……!
一番憎くて一番愛してるあなたに……!
この姿を見たかったんだよ!

ねえ、まさか自分が捕まるなんて、とか思ってる?
今まで惜しいことすらなかったから、ちょっと自信過剰に私達、舐められてるのかなとも思ってたんだけど。

ふーん、やっぱりか。
私があなたに心を奪われるまでは、私も掌の上だったから舐めてもらっても捕まえようがなかったし、よかったんだけどね。

私さ、あなたのことを追いかけてるうちに、好きになっちゃったんだよね。
本当に不思議だし、最初は犯罪者なんか好きになってやるものかって必死に否定してたんだけどね。
好きになっちゃって、あなたのことをもっと突き止めたくなっちゃって、必死になってあなたのことを調べたの。

私達は現場で犯行の瞬間のあなたを何度も目撃しているから、逃走経路さえ予測できればあなたのことを追いかけられるって思って、必死に分析したの。
あなた、身体能力は抜群みたいだから、川の方に向かって、飛び込んだっきり姿を暗ましたこともあったじゃない?
あの時、捜査員総出で川上川下、至る所まで川岸を捜索したにもかかわらずあなたの痕跡ひとつ見つからなかったのだけど。

私が予測を立てるとすれば、橋の裏側にいたんでしょ?
先日調べてみたら、橋脚の上に人の忍び込めるスペースはあったし、その可能性を否定する要素はなかったわ。
飛び込んだように見せたのだって、あの辺りは不法投棄が多くて、人に近いサイズのサンドバッグ、とかもあったんじゃないかって思ってる。
というか、自分であらかじめ捨てておいたのかな。

そんなわけで、普通は咄嗟にあんな計画的な逃走なんてできないから、事前に逃走ルートのシミュレートなり、私達への詐術のための準備なり、予告前にあなたが現場近くに行っているんじゃないかと推測したの。

それを探るために、前回の事件の時にあなたに発信機を付けた。
まともに追いかけたんじゃあなたに近づけやしない。
だから、その時はあの犯行現場の近くを徹底的に探ったわ。

仕掛け、あったわね。
ビルの配管を登って、パルクール紛いの逃走劇をするための。
だから、その配管のあなたが踏みそうなところに仕掛けておいたの。
そうしたら見事に踏んでいってくれて、そのまま剥がれずにあなたの住まいも教えてくれたわ。

それで発信機を頼りにしてみれば、今回の事件の予告前、こんな場所で不審な動きをしていたようだって教えてくれたから、この近辺で事件を起こしてここに逃げようって考えてるんだなってわかったわけ。

私、あなたの家に確かめに行ったんだけど、至って普通の青年って感じだったわね。
いつもは姿を隠してるだなんて、いかにも恐ろしい殺人犯だこと。
それに、窓から覗かせてもらったけど、インテリアも凝ってて洒落た生活してるのね。
え? 家が分かってるんだったら逮捕状を持って押しかければよかった?

そんなの、あなたの最後には相応しくないじゃない。
これまでの犯行を讃えて、相応のフィナーレを演出させていただいたのよ。
プライドの高い殺人犯には、その逃走劇をへし折って、殺人犯の姿で捕まえる。
一時間の刑事ドラマよりも、モーリス・ルブランの小説の方がロマンチックでしょ?
もちろん、この逮捕劇はノンフィクションで私オリジナル、他の刑事なんて誰一人も関わってないわ。

そうよ。だって、他の人にこんなことをしてるって知られたら、警察の名の下にあなたを連行しなきゃいけなくなるから、私の目的は遂行できないもの。

常識的に考えて、犯罪者を捕まえたのなら警察署まで連行して、最終的には刑務所送り。
あなたの場合は死刑だろうから、送られるのは拘置所だけど、この際どっちでもいいわ。

あなたは、そのどちらにも行かないんだもの。
だとしたらどこかって?

それは、私の家。
私、あなたのことをたくさん知りたいの。
家の中を覗いてるだけじゃ分からない、あなたの奥深くまで。
天才犯罪者、というよりは男性としてのあなたを教えてほしい。

そうだね……君の罪の数だけ、愛してもいいよね?
多分、その目標を遂げる頃には、あなたは私しか見えずに、猟奇的な欲望も形を変えているだろうから。

それでは殺人犯さん、あなたの償いとして、愛の牢獄のもとへと行こうか」
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
ヤンデレ警察官と殺人鬼
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
ヤンデレとか書きます。

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