お気に入りの席で誰と話す訳でもなく、気が済むまで酒を飲む……密かな楽しみであるBARでの晩酌。
けれども今日はどういう訳か普段よりも客入りが良い──当然のことながら、お気に入りの席も初めて見る顔に取られてしまった。
仕方なくカウンターの隅にお邪魔していつも通り酒を頼もうとして……自分とは入れ違いでこの店を訪れている「おじさん」っていう言葉が似合う、ちょっと素敵な男性に声を掛けられた。
どうやら彼も、お気に入りの席に先客が居たらしい。


（基本のキャラは男性ですが、性別や一人称等はご自由に変更してもらって構いません……拙い文章ですが、それでも楽しんで頂けましたら幸いです）

やぁ……えっとその、君の隣の席……もし良ければお邪魔しても構わないかな？
ほら、今日は初めて此処に来たお客さんにお気に入りの席を取られちまって……あんたも此処の常連だろ？
いつもはあっちの席で飲んでる……やっぱりそうだ。
俺が一杯目を頼む頃に黒いコートを羽織って店を出て──そう、いつもすれ違いになってた男さ。まさか俺みたいな奴の事を覚えてくれてるとは。
そうだ……こうして一緒の席に着いたんだし、一つ教えて欲しい事があるんだ。
アンタが普段羽織ってるコート……あれ何処の店で仕立ててもらったんだ？あんなに上等な服を仕立ててくれる店があるなら、俺も一度は足を運んでみたくてね。
いや、ただで教えろとは言わない……そうだなぁ……マスター！
俺がキープしてた上物、出してもらっても良いかい？あぁ、此方の常連さんに良い服を仕立ててくれる店を教えて貰う事になってね。そのお礼って訳さ。
アンタ、スコッチは飲めるか？そうか、それは良かった。
それじゃあ……そうだな、せっかくだしマスターも一杯どうだい？あれこれ頑張って仕入れてくれた酒なんだ、一番の功労者が口にしなくてどうするんだ？
此処にハンバーガーがあれば最高だったんだが、贅沢を言っちゃいけないな。

それじゃあ……偶然生まれた酒の席と、アンタがこれから教えてくれる最高の仕立て屋に！

（グラス同士が当たる音）

・台本（ゆるボイ！）
今夜はいつもと少し違う
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・台本制作者
霜月鷹