病気で入院生活を送る彼女のお見舞いに来たあなた。
院内で七夕の笹を見つけたあなたは、お願い事をすることに。ノリ気ではない彼女だったが……。

…………ん？

あぁ、ほんとだ。

去年もここにあったよね、笹。

こういうの見ると、もう7月なんだなぁとか、もう今年も半年過ぎたんだなぁって実感するね。

私は特にね。ほとんど病院にいるからさ。

あーあ。

今年の夏も、病院で過ごすのかなぁ……。

……え？　いや、いいよ別に。

だからいいってば。嫌、書きたくない。

そんなんで治るわけないもん。

原因も治療法もわかんないんだよ。わかってるでしょ？

………はぁ？

もういいよ。勝手にしたらいいじゃん。

………………。

……………。

……ねぇ、何個書く気？

やりたいこと全部？

まったく……。子どもかっつーの。

……私とのことばっかりじゃん、願い事。

っていうか、名前書くなよもうっ。恥ずかしいなぁ。

………………。

………………。

ねぇ。

………………。

いくら書いても、無駄だよ。

苦労、しないもん。……それで治ったら。

…………っ。

私だってしたいよ。

君と、プール行きたいし、

君と夏祭りにも行きたい……。

花火だって、一緒に見たいもん……。

私だって……。私だってしたいんだよ。

でもこの身体じゃ無理だしさ。

ほんと、期待するだけ無駄だから、

君もそんなの、書かないほうがっ……。

………………。

…………なぁに、急に。

こんなとこでぎゅーしないでよ。みんな見てるよ。

……え？　来年？　今年がダメなら？

まぁ、治ればね。そう言って、何年経ったかわかんないけど。

そしたらまた来年って……。

はぁ……。優しいね、君は。

ううん。ありがとう。

…………。

……嬉しいよ、ほんとは。

いつも悲観的なこと言ってるけどさ。

君が、そんなことないよって否定してくれるのが、すごい嬉しいの。

自分でそれしちゃうと、後々余計に辛くなるから……。

私こんなんだから、そのうち嫌になっちゃうと思うけど、

それまでは、そうしててくれると、その、助かる、かなぁ……。

ずっとしててくれるの？　……ありがとう。

でもさすがに無理だよ、それは。

気持ちは嬉しいけどさ。いつか重りに感じちゃうよ。

……誓うって、なに、もしかして短冊に？

ふふっ、お願い事と誓いは、違うでしょ。

まったくもう…………、ん？

え、なに……、これ……。指輪？

……安物って、そんなっ……。

………………。

んんんんっ……、もう、馬鹿……。

当たり前だよ、泣くよ……！　泣くに決まってんじゃん、こんなの……。

私病気だよ？　いいの？

すごいネガティブだし、君に当たっちゃうかもだよ？

こんな私で、本当に、いいの……？

……そっ、か。いいんだ。

まったく、君は、ほんとに…………。

…………。

……ねぇ。

もっかい、ぎゅってしもらっていいかな……？

お願い。

……本当に、ずっと側にいてくれるんだよね。

私のこと、離さないでいてくれるんだよね。

信じたからね。

……ありがとう。

私も大好きだよ。大好き……。

…………。

じゃあ、その短冊、飾ろっか。

私は……、大丈夫だよ。

お願い事、全部君と一緒だからね。

……あ、名前だけ、隣に一緒に書いてもいいかな？

………………。

………………。

よし、できた。



ふふっ。なんかこれ、夫婦みたいだね。

・台本（ゆるボイ！）
病気の彼女と七夕
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・台本制作者
俳音