二人で花火に行こうと誘われたアナタ。
ここで告白するつもりの彼女は、もはや好意を隠す気などありません。
花火もほとんど尽き、最後の線香花火に差し掛かったとき、ついに彼女は思いを告げ始めます……。

※花火をしている場所は、どこでも構いません。

……もうちょっと持ってくればよかったね。

花火、あと二袋しかない。

え？　うーん、……こっちかな。

やっぱ線香花火は、最後まで取っときたいでしょ？

……ふふっ、意外？

ボクだってれっきとした女の子だからね。
そういうとこ、ロマンチックに行きたいんだよ。

じゃあ、こっちのやつね。
これ結構長持ちするみたいだね。

……あれ、おかしいな開かない。

んー、なんか、これ……、テープ硬いなぁ……。

……うふふっ、ほんと？　ありがとう。

………………。

……でしょ？　結構硬いんだよ、それ。

………………。

あ、火が……。

………………。

………………。

……ん？　開いた？　ってあちっっ……！

あ、あははっ……、ごめんごめん。

火、消えちゃったからさ。付けようかなって思ったんだけど、ライター上手くつかなくて……。

やけど？　してないしてないっ。
一瞬熱かっただけだか、ら……へ？

い、いや、ほんとに平気だよ……？

んん…………。んん、はい。

……どう？　してないでしょ？

うん。だから大丈夫。だから、その……。

手、ほら……。離して……。

………………。

いや、違くてさ。嫌とかじゃなくてね。

ふふっ、もう。キミ、さっきの話聞いてた？

ボクだってさ、女の子なんだよ。
キミにそんな風に、触れられたらさ。

……ドキドキ、するじゃんか。

………………。

………………。

………………。

……火、お願いしていい？

ふふっ、すごいね、さすが。

ええ？　いやいや、からかってないよ。

カッコいいなぁ……って、思った。

………………。

……よし、じゃあ改めて始めよっか。

ボクが先に点けていいの？　ありがとう。

…………わ、わわっ、すごいね。結構激しいんだ。

今までので一番派手じゃない？

ね、ね。そうだよね。でも、ほんと長持ち……。

………………。

あ、そろそろ……かな？

あー……、終わっちゃった。
って、もう二本目点けてるの？　ずるいよ。

じゃあ、はい。もうちょっとこっち向けて？

いいから早く。消えちゃうよ。

……ふふっ、点いた。ありがとうね。

関節花火……だね。えへへっ。

………………。

………………。

あ……………。

………………。

……終わっちゃったね。

じゃあ後は、最後の線香花火、かな……。

………………。

……はい、どうぞ。

……ん？　ああ、勝負かぁ、うーん……。

今回は、いいかな。

最後だし、さ。ゆっくり楽しもうよ。

じゃあ……、先いいよ、点けて。

………………。

………………。

……綺麗だね、やっぱり。

………………。

……ねぇ、キミさ。

今年はどれくらい花火した？

へぇ。じゃあこれが、今年最初で最後の花火？

そうなんだ……。

ふふっ、ボクも一緒。

今年の花火の思い出は。キミだけだよ。

………………。

………………。

あははっ、落ちちゃったね。

……じゃあ次のこれで、最後だね。

……先、いいよ。

………………。

………………。

……あの、さ。

……二人で花火行こうとか、誘った時点であれだしさ。

……だからもう、気づいてるとは思うんだけど……。

……言ってもいいかな。


ボクね。キミが好き。大好き。


この花火だって、今年で終わりにしたくないんだ……。

来年も、再来年もずっと、
キミと二人でこうして夏を過ごしたいんだよ。

……この線香花火、キミのがボクより
先に落ちたらとか、そんな不確定なこと言わない。


ボクは絶対キミといたい。

キミじゃなきゃ、嫌なんだ。


だから、お願い。


ボクをキミの物にしてよ。

キミをボクの物にさせてよ。


ボクと……、付き合ってよ。


………………ちゅっ。


………………。

……あ、落ちちゃった……。

これ、恋に落ちた……ってことでいいかな。

……クサい？　ふふっ、火薬の匂いじゃない？

それに、言ったよね……。

ボクは意外と、ロマンチックなのが好きなんだよ。

……言っておくけど拒否権ないからね。

……キミじゃないと、絶対嫌だからね。


…………ちゅっ。


……もう、離してあげないんだから。

・台本（ゆるボイ！）
晩夏の線香花火【ボクっ娘】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
俳音