監禁されたあなたの目覚めを待っていたのは、あなたのことを初恋の人だと言うかつての同級生。
彼女が望むのは、お互いさえいれば何もいらない共依存の生活。

おはよう。
……やっと、会えたね。
愛しい愛しい、私の初恋の君。

おっと、急に暴れ出すなんてビックリするなぁ。
あんまりおすすめしないよ？
拘束外れないか試すの結構痛いでしょ。

わかるよ、目が覚めたら知らない天井があって身体が動かせなくなってて、パニックになっちゃうのは仕方ないことだと思う。
だからさ、一旦深呼吸しようか？

すうぅ、はあぁ……

どう？
少しは落ち着いた？

そっか、恐怖心で震えが止まんないのかぁ……

それじゃ、これでどうかな……？

　（キス）

あはは、今度は私が落ち着けないかも……

キスなんて、人生で初めてだよ？
ファーストキス、君に、捧げちゃった。

ずっと、こうなることを夢見てたんだよ？
あの頃から……隣の席だった時も、違うクラスになっちゃったときも、卒業して一切会う機会がなくなってからも、私の好きな人は君だったんだから。

やっぱり、君にとってはそういえばいたなってぐらいの同級生でしかないの？

ううん、それを怒ったりはしない。
勇気がなくて告白も出来なかったし、授業のペアワークとか、他人から与えられた機会でもなければまともに話すことも出来なかったのは私なんだから。
君の記憶に深く刻むことが出来なかった私が悪いんだ。

だけど、今はこんなにも近い距離にいる。
私が愛したいと思うそのままに愛情表現ができてしまう。

今、君の頭の中は私でいっぱいでしょ？

もっと私、君の思考を犯したいの。
私以外、何にも考えられなくなるくらいに。

ぎゅっと、しちゃおっか。
君の身体を独占してあげる。
そうしたら目に映るものも、聞こえる音も、感じる匂いも、全部、私になっちゃうでしょ？

　（女、男を抱き締める　※最後までそのまま）

（囁き）……好き。

すうぅ……はあぁ……

今まで、触れることも出来なかった君のこと、抱き締めてるんだ……
その硬直しきった表情がむしろそそるの。
強引にでも私のものにしちゃったんだって実感できるでしょ？

そう。君は、私のもの。

ねえ、もっと君のこと、感じていたい。
すうぅ……はあぁ……
すうぅ……はあぁ……

君にも、私のこといっぱい感じて欲しいの。
頭、真っ白にして、今ぎゅっとされてる感覚を身体でしっかりと感じて？

これで、君の頭の中は私のこと以外何にも考えられなくなっちゃってるのかな？
私、君の思考回路独り占めできてる？

……嬉しい。
これで私たちの頭の中、お互いに独占し合ってるんだ。
この抱き締めた腕の中で二人の世界は完結しちゃうんだよ。

あ、ダメだよ？
もう、私以外のことなんか考えないで？
君には外の世界なんて一生関係ないものなんだから。

君に考える意味なんてないし、君に外の世界なんてものは存在しないの。
私たちのこの空間だけが君の世界、そして私たち二人の世界。

だから、私のこと、受け入れて？
君の怖がってる顔、珍しいから見れたのは嬉しいけど、ここでは二人の愛し合いが出来れば何にもいらないんだから。

君のいろんな姿を知りたいって気持ちはあるけれど、君の好きって気持ちをいかなる時も私は浴びていたいの。

もちろん、私はいつだって君のことが好きなんだよ？
今も、胸にしまえないくらい溢れてる。
君と、このままお互いをお互いだけで満たして生きていたいって欲求が湧き上がって抑えられないくらい好きなんだから。

そう。私には君さえいれば、抱き締められて、自由に愛せる距離に君がいてくれるなら、何もいらないの。
だから、君も君のことをひたすらに愛してあげる私さえいれば、それ以外何もいらない君でいて欲しい。

欲求全てがこのベッド上で満たされてしまう、この単純で効率的で、余計なものが何一つとない完璧な世界。
これを、幸せって言うんだよ？

ううん、そんなことはないの。
君はまだ、外の複雑でお互いの利己性の絡み合った苦しい世界に未練があるのかわからないけど、この何もない世界であることが何よりも素晴らしいんだから。

だって、つまらないことに思い悩むことなんて存在しないから。
ただ、私たちはお互いのことだけを考えていられるんだから。

これって、無駄な苦しみのない、愛おしい心地良さと大いなる快感だけがお互いの身体を満たす、これ以上どうすることも出来ないくらい最高の世界でしょ？

あんな世界みたいに、涙を流す必要はないんだよ？
理不尽に振り回されて、己の無力さに疲れることはないんだよ？

そう、ここは、私たちの楽園。
生きながらにして天国に辿り着いてしまったんだよ。

元の世界の記憶があるうちは、ちょっと狭く感じるかもしれないけれど、幸せに世界の広さなんてものは全く必要ないから。
気付いた時には、私しか見えない、気持ちよさしか感じない、今の君には想像もできないくらいの日常の真ん中なんだ。

あんな世界の事なんてどうでもよくなってるから、あの時よりも幸せだなって思うことすらなくただ君は私の名前を繰り返し口にして、私も君に好きって声が出なくなるまで囁き続けて、お互いの愛を永遠に伝え合うの。

だから、もう私以外のどんなことも考えちゃダメだよ？
このぴったりと抱き合う感覚が私たちの正しい距離で、お互いの身体以外何も見えないし、お互いの声や絡み合いの音以外何にも聞こえない。
これがこれからの当たり前。

最初は訳がわからないよね。
大丈夫だよ？
人間はこういう環境の変化には適応できるんだから、焦らないで、本能に任せるようにすれば、じきに楽になれるから。

嫌だなんて言ってたって、君の気持ちは変わっちゃうの。
かつての私のことなんて一切気に留めなかった君も、ここまですれば、ちょっと時間はかかるかもしれないけど、それでも絶対に私のことしか考えられない君になっちゃうんだから。

でも、それでいいでしょ？
私たちはそれで生きていけるの。
君にも、私にも、お互いがいてくれれば十分なんだから。

もう、勇気だとか関係ない。
未来は一択なんだから、怖いものは何にもないの。

遠慮なんてしないんだから。
容赦なく、君を何にも考えられなくさせてあげる。

私の全ては君。
君の全ては私。

頭、真っ白にして？

　（キス）

（囁き）……好き。

・台本（ゆるボイ！）
相互依存のベッド上完全世界
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩