部活の頼れるエースで人気者のあなたを特別扱いしている気がする後輩のマネージャーは、部活終わりのあなたに特製ドリンクを差し入れる。
しかし、その飲み物に入っていたのは……

せーんぱいっ、お疲れ様です。
いつ見ても颯爽とした身のこなし、それでいて気迫を感じる力強いプレー、惚れ惚れとしてしまいます……（うっとり）

流石は部のエースですよ！
皆も先輩がいるから後輩は憧れとして、同学年の仲間はアイツのためにって頑張ってるんです。
私だって、そんな先輩のカッコよさに惹かれてこの部のマネージャーになったんですから。

あ、先輩と他の部員で扱いが露骨に違うのはマネージャーとしてはよくないですか……？
すみません。
これじゃ、部のマネージャーというより先輩のマネージャーになっちゃってますね。
今後は気を付けます。

それで、先輩。
練習で汗かいて疲れた後は、ドリンク飲んで体を癒してください。
今日はですね、先輩のために私特製のドリンクを用意してきました！

身体に良いものとか、疲労回復、トレーニングの効果を向上させるもの、いろいろと調べて作ってみたんです。
えへへ、褒めて褒めて～。

どうですか？
味は、ちょっと不思議かもしれませんけど、効果は私が保証します！

そうですか、飲めないほどではないのなら一応はよかったです。
これから、飲みやすいように改良を重ねないといけませんね。

……あれ？
これじゃ、なんだか先輩を実験台にしてるみたいですね。
ごめんなさい、こういうのは私で試してから、完成したものを先輩に飲ませることにしますね。

え、いいんですか？
そっかぁ、先輩は私の努力してるところが好きだなんて、もっと頑張りたくなるじゃないですかぁ……（うっとり）

おっと、これからミーティングなのに話しすぎてしまいましたね。
それでは先輩、話したいことがあるので、終わったら一緒に残ってください。

　（間）

はーい、皆さんさようなら。

……やっと二人きりになれましたね。
近く、誰もいませんよね？
なら大丈夫です。

話したいこと、ですか……
今、むしろ先輩の方から私に聞きたいことがあるんじゃないですか？
私が呼び止めたのはそのことなんですから。

はいそうです。
先輩の体の不調、思い当たる要因はせいぜい私の差し出した飲み物でしょうから。

先輩、何だと思います？
何で、先輩の身体がこんなにも熱くて、こんなにも怠くて、こんなにも落ち着かなくなっているのか。

うーん、睡眠薬だけだと、部分点ですね。
確かに私は先輩に飲ませたドリンクに睡眠薬を仕込みました。
ですが、それで体が熱くなるだなんて、変だと思いません？

とはいえ、今の頭クラクラの先輩に頭を使えだなんて言うのはいくら何でも酷ですので、もう一つの答えも教えてあげます。

（囁き）……媚薬、です。

まあ、それ以外にも仕込んだものありますけど、それについては効果というより、私の気持ちですので……
いえ、言うのもはしたないアレです。
多分、まだ先輩が知らない味の。

今、先輩はどんなことを思ってるんですかね？
単純に、どうしてって感じでしょうか？

でも、媚薬なんて仕込んですることなんて、だいだい想像つきますよね？
だから、そういう目的って言ってあげます。

元から先輩に私が好意を抱いてるのはわかってたと思いますし、それでいて勝手に彼女なんか作っちゃったんですから、私のこと警戒しない先輩が悪いんですよ？

そうです。
彼女なんか作っちゃうからです。

先輩が部のエースで、決める時は決めるし、爽やかな笑顔も見せてくれる。
先輩がモテるには十分すぎるくらいカッコいいのは私の心がよくわかってます。

今までも何度も言ってるように、私はそんな先輩に近付くためにもマネージャーになったぐらいなんですから。

それで今までずっと先輩に好きって言ってあげましたよね？
告白とかはしてませんけど、あんな態度で気付かないわけありませんし、自分のことが好きな女の子って意識してしまって当然だと思うんです。

それなのに、何にも言ってくれないで他所で彼女を作るだなんて、裏切りですよね？
付き合う前に謝罪の一言ぐらいあってもいいと思うんですけど。

あ、ですが、あらかじめ言ってくれたからといって、私以外の女と付き合うだなんて許すわけじゃないですからね？

いつも先輩のために尽くしてあげている後輩マネージャーの純粋で強い恋心を踏み躙ることには変わりないんですから。

先輩は、酷い男の子ですね。
彼女が欲しいなら私がいるのに、何で、あの人なんですか……？
何で、あの人とイチャイチャするんですか？

私、先輩が他の女と笑ってるところなんて見たくないんです。
先輩の笑顔は私の物なんですから。

さあ先輩、今までの過ちを反省して、今日からは私と恋人になりましょう？
今日、私の家、誰もいないんです。
この意味、わかりますよね？

先輩のすべきこと、しっかりと果してもらうんですから。

……嫌なんですか？
彼女に申し訳ないだとか、そういうのは禁止です。

さっきから何度も言ってるじゃないですか。
本来、先輩の彼女になるべきなのは私なんです。

他の女と付き合って、私に申し訳ないって思ってないような先輩が今更彼女という言葉を持ち出して断ろうとするなんて都合良すぎるんですから。
私という本当の彼女を前に、そんな言い訳は効きません。

というより、そのフラフラの身体で私から逃げられるわけがないんですけどね？
先輩、さっきから私の絡めた腕を解こうとしてますけど、全く抵抗してるように感じませんよ？
それじゃ、断っても無駄じゃないですか。

というか、スポーツに打ち込んでる先輩の本気がその程度なわけがないんですから、それは満更でもないって意思表示なんですよね？
私、先輩に受け入れてもらえて、とっても嬉しいです。

さあ、グダグダ話していても誰かに見つかってしまいますし、帰りましょうか。
あ、それとも、一緒に帰ってるところ見つかって噂、広めちゃいますか？

なーんだ。
ですが先輩。
今日バレなくても、これからいっぱい、あんなことやこんなことをしちゃうんです。
単に、時間の問題だと思いますよ？

先輩。
（囁き）本当はこんなに迫られて興奮してる先輩のこと、私がお望み通り持ち帰ってあげます。

・台本（ゆるボイ！）
部活の後は、マネージャー特製危険ドリンクです！
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩