ごめんね、わざわざ煙草休憩の為だけに寄り道して貰っちゃって。
家に帰るまでは我慢できるって思ってたけど、やっぱりちょ～っと無理だったね。
というかさ、君まで喫煙所に来る必要は無かったんじゃない？
「一人でふらふらするのも暇だから」……ま、今は私達以外に誰も居ないし、別に気にする必要もないか。

ねぇねぇ、すっごい今更なんだけど……君は煙草って吸わないの？

いやだって、年齢的には君も充分いけるでしょ？
君ってお酒とかも飲まないみたいだし、なんかちょっと意外だなぁって。
「健康に悪いんで」……そりゃあ確かに、体にはあんまり良くないけど。
でもでも、吸ってみるとこれが意外と悪くないんだよ？
吸ってる間は頭ん中を空っぽに出来るし、気分もけっこう落ち着くの。
だからさ……騙されたと思って君も、一本だけ吸ってみない？
とりあえず一本吸って、これからも吸うかどうかは君が決めれば良いからさ。
「吸っても良いけど先輩が吸い始めた理由が知りたい」……えー、それ本当に言ってる？
大した理由とかはちっともないけど、それでも知りたいの？
あっそ、それなら教えてあげるけど……あんまり笑わないでよね？

成人してしばらく経った時さ、コンビニで「あ、そういえば私って煙草吸える年齢じゃん」って思ったの。
それで何となく目についた奴を買ってみた……吸い始めた理由なんてこれだけだよ。
ほら、君が想像してたような事はなんにもなかったでしょ？
あ、露骨に残念そうにしてる……君ってばどんな話を期待してたの？
もしかして「昔の男が吸ってて～」とか？
それとも「お父さんが吸ってたのがカッコ良くてそれに憧れて～」みたいな？
残念だけど、私のコレは単なる興味本位。
だから言ったでしょ、大した理由なんかないって。
「先輩らしいですね」って、ちょっとそれどういう意味？
ま、確かに私らしいのは事実だけどね……それで、結局これ吸うの？
よし、そうこなくっちゃ♪
それじゃあこれ咥えてて、火は私が付けてあげる。

こうやってね、口に咥えた煙草で相手の煙草に火を付けるやり方もあるの。
ちょっと手間だけど、それでも……お互いの顔がこんなに近くにあると、ちょっとドキドキしちゃうね。

ふふ、人生初の煙草……どうかな？
「不味くて吸えたもんじゃない」……ま、最初は誰でもそんな感じだよ。
でもそのうち、これが無いとダメになっちゃうんだよね～
また吸いたくなったら声掛けて、君になら何本だってあげちゃうからさ♪
その顔……しばらく要らないって言いたいのかな？
ま、その辺は個人の自由だからね。
でもまぁ、私的には君が私と同じ物を君が好きになってくれたら嬉しいかな。
それにさ……もし仮に君が私と別れて別の子を好きになっても、その煙草だけは手放せなくて、吸うたびに私の事を思い出してくれたらなぁ……って。
そうすれば私は君の心にずっと刻まれて、私以外の子と一緒に居ても私と同じ匂いが染み付いて──って、流石に重いか。
「重過ぎてちょっと怖い」……怖くて悪かったわね。
まぁとにかく、私は君がそれだけ大好きなんだって覚えてくれてたらそれで良いよ。

さてと……この後はどうする？
私は特に予定もないし、君が行きたい所でもあれば一緒に付いてくけど。
「自分も特にない」……なるほどね、了解。
それじゃあ──ふふ、ビックリした？
「急に何するんですか」って、草の煙を吹きかけただけだよ♪
実はこれ、特別な意味があるんだけど……

君はこの意味、分かるかな♪

・台本（ゆるボイ！）
煙草の匂いと彼女のお誘い
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹