0
お嬢様はあなたを迎えにきた
written by 夜木嵩
  • ヤンデレ
  • お嬢様
公開日2022年12月09日 18:37 更新日2022年12月09日 18:37
文字数
2324文字(約 7分45秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
お嬢様
視聴者役柄
男子生徒
場所
家の前→お嬢様の車の中
あらすじ
学校へ向かういつもの朝。
玄関のドアを開けると、そこには見るからに高級そうな車が止まっていた。
窓から顔を出しているのは、同じクラスのお嬢様。
貴方様に用があるのだと、彼女はあなたを乗せ、車は走り出す。
本編
おはようございます、貴方様。

まずは、連絡もなく家の前まで来て、このように貴方様を驚かせるような真似をした事、お詫び申し上げます。

何が起こってるのか、と問われましても、単に私が貴方様に用があるというだけのことですから。
細かいことは車の中で話しましょう?
さあ、遠慮せず乗ってください。

見られたら噂になるだとか、それくらい、気にすることではないでしょう?
仮に、このことでいじめといった行為が起こるようでしたら、私に言ってくだされば、何とでも方法はありますし。

ですから、ご安心ください。
まあ、そんなもの、杞憂だとは思いますが。

では、行きましょうか。
運転手さん、お願いします。

 (車、走り出す)

ふふっ、貴方様、どこか、落ち着かない表情をしてる。
それもそうよね、密室と変わらない車の中、慣れない異性が隣にいる状況。
落ち着いていいわよ、とは言っておくけれど、緊張するなという方が無理があるでしょう。

だって、私も緊張しているもの。
胸、触ってみる?

んふふっ、失礼。
男女でそのようなこと、あまり堂々とできる行為ではなかったわね。

けれど、私も緊張している、というのは本当よ。
これから、絶対に成し遂げないといけないことがあるのだから……

ここまで来れば、あとは最後の一押しというだけ。
もはや、チェックメイトの一手を打つだけなのに、その手が震えているような気分。

ついに、乞い願い続けたその想いが叶う時。
というものは、やはり今の私のように、確信を持っていても、気は確かでいられないものなのでしょうか。

いえ、私は知っての通りの育ちゆえ、望んだものはすぐに……どころか、望む前から手に入っているような人生を送ってまいりました。
人生の道筋もあらかた決まっていて、私は、カーペットが敷かれたその道を歩むだけ。

それをきっと、貴方様は羨ましいと思うでしょう。
けれども、叶わない夢、というものも知らない無知な少女、その愚かな弱さを生きるということ。
それが、決して他の人生より優れているとは思えないのです。

科学の進歩の反面で、人間自身の力が失われていくように、私もまた、私という人間自体は少しも強くない。

……そう気付かせたのは、紛れもなく貴方様だったのですよ?

いえ、貴方様が気に病むものではございません。
貴方様のごく普通の振る舞いに、私が勝手に傷付いたというだけのこと。

それが、私のはじめての胸の痛み。

恋の病、という言葉があるくらいには、人間がたったそれだけの感情に揺さぶられてしまうことは、知っているつもりでした。

けれども、それまでの私にとって、思い通りにならない欲しいものの存在も、思考を埋め尽くすほどの強烈な欲求も、実感に欠けるものでした。
私が、それをたったそれだけの感情と見下せたのも、無知だったからというだけ。

むしろ、叶わないことの辛さに抗体のない私には、この病は心すべてを蝕むほどに深刻なものだったのです。
私が恋を続ける限り、この病は私を苦しめ続ける……

ねえ、どうして、貴方様は私のものになってくれないの?

私の旦那様という立場になるだけで、それはもう将来の安泰を確約されたようなもの。
何もしなくてよいも同然の、自由に満ちた未来が待っているというのに。

考えてみれば、私を選ぶということがどれだけ楽な選択肢か、わかるでしょう?
愛というものは、決して夢だけでは成り立たない。

好きという言葉だけでは、人生の憂いは打ち消せない。
これからを思うなら、仕事だとか、お金だとか、人間関係だとか、貴方様の中にも不安はあるでしょう?
きっとそれは、普通ならずっとついて回るもの。

そして、それはいつか、理想の恋を阻むもの。
そして、恋の病を重くするもの。

私は、貴方様を想うからこそ、そんな未来にある苦しみの可能性から守りたいのです。

こんな愛を貴方様に捧げられるのは、きっと私だけ。

もう、私は貴方様を満たしたくて抑えられなくなってしまっているのです。
貴方様の苦しみを見ることも、貴方様のいない私の人生の満ち足りなさにも、これ以上、恋の病の痛みを耐え続けるなんて、もう……

貴方様、これだけ私は貴方様のことを想い、貴方様との未来を願い、貴方様のいない現実に耐え続けてきたのです。
もう、これ以上は、私の身に何が起こってしまうか……

これだけ貴方様は私を苦しめてきたのですから、幸せに結ばれるくらい、いいですよね?
夢が叶うくらい、いいですよね?

もう、許していただけませんか?

こんなに愛しているのです。
貴方様を受け入れる準備だって、十分に出来ているのですから。

あとは、肝心の貴方様を迎え入れるだけ。

……ああ、ですが、貴方様が悩む必要はございません。
私、気付いてしまったのです。

心はともかく、物ならば、何でも手に入れることが出来ると。

真面目に恋愛をして貴方様を手に入れようとするから、こんなにも回りくどく、こんなにも苦しい道を辿ることになってしまった。
私には、私なりの方法というものがやはり、お似合いなのでしょうね。

手に入れたならば、貴方様を可能な限り満たして、私へと溺れさせる。
それくらい、いくら無知で非力な私であろうと、この人生に課せられた責務、必ず成し遂げてみせましょう。

これが、私の愛なのですから。

さあ、もうすぐ着きますわね。

さて、どこと言われましても……

ああ、そういうことですか。
貴方様は重大な勘違いをされていらっしゃるようですね。

この車が向かっているのは、学校ではございません。
もう、貴方様が行く必要のない場所になんて、行きませんよ。

向かうのは、私の、い、え、ですわ。
貴方様をものにして、これから二人の幸せを築いていく場所。
これから貴方様の一生の住まいになるところ。

まずは、ご両親にご挨拶をしましょう。
もちろん、ご結婚の。

さあ、案内しますわよ?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
お嬢様はあなたを迎えにきた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
ヤンデレとか書きます。

Twitterアカウントは@yorugi_suu以外一切関与しておりませんのでご了承ください。
有償販売利用の条件
TwitterのDM等にてご一報ください。
利用実績(最大10件)
夜木嵩 の投稿台本(最大10件)