魔王城への道中、耳が敏感になる呪いをかけられてしまった勇者(あなた)。
そんなあなたが草原を歩いていると一匹のスライム娘と出会う。
彼女は見逃してもらったお礼に耳かきをすると言い出して……

(ガサガサ)
……お、見つかっちゃった。
まあ待って待って、剣を収めてほしい。
私は敵意とか、そういうのないから。
悪いこともしてないし。……多分。あんまり。

……え、ほんとに見逃してくれるんだ。
意外だな。勇者ってもっと、問答無用～って感じかと思ってた。
……無益な殺生はしない？ほえ～、なんか、すごいね。
え、もう行くの？急いでる？あ、そう。

(勇者が去ろうとするところを、後ろからついていく)
(ぺたぺた……)
ねえ勇者さま～。これからどこ行くの～。
(ぺたぺた……)
ねえ～。無視しないでよ～。
え～、いいじゃん。少しくらいついていっても。暇だし。

(ぺたぺた……)
そういえば勇者さま、あの噂ってほんと～？
耳が敏感になっちゃう呪いをかけられた～みたいな。
……なんで黙るの。
ね～無視しないでってば勇者さま～。

(ぺたぺた……)
……あ、そうだ。勇者さま、耳かき、したげよっか？
(勇者足を止める)
お、止まった。興味ある？
……え、なんで急にって……それは、その……ほら、さっき見逃してくれたお礼……？みたいな？
私の身体、ぺたぺたしてるし。これで耳かきしたら気持ちいいんじゃないかな～って。
……急いでる？ちょっとぐらい良いじゃん。
休んだ方が旅の効率も上がるって。

そうそう。歩きっぱなしで疲れたでしょ。
私のひんやりぺたぺた耳かき、きっと疲れも吹っ飛ぶと思うな～。
ほら、こっちこっち。
(座って太ももをぺちぺち鳴らす)

(勇者、頭を膝枕に乗せる)
お、来た来た。意外と可愛げあんじゃん。
どう？私の膝、冷たくない？
……ひんやりして気持ちいい？へへ、そっかそっかー。

ではでは、取り出したるは、そこらへんに落ちてた木の枝。
……え、汚くないよ？ちゃんと洗ったし。
これを、たっぷり私の身体で包んで……
ほい、じゃあ入れるよ～。

(耳かき開始)
(ぺたぺた……ぺたぺた……)
どう、気持ちいい？
……本当？良かった～、練習した甲斐があったよ～。

(ぺたぺた……ぺたぺた……)
え、なんで練習してたか？
そりゃ魔王様の命令だし。「勇者と出会ったら戦わず、代わりにお耳を徹底的に開発しろー」って。
……あ、でもこれ言っちゃダメなんだっけ。……まあ、いっか。

(ぺたぺた……ぺたぺた……)
え、さっきの魔王様の命令？
いや、私も理由までは知らないけど。魔王様の考えることはよくわかんないし。
まあ、勇者さまからしたら、なんの危険もなくお城に行けるんだから、別にいいんじゃない？
……そんな不安がらなくても。多分なんも考えてないよ。
今は全部忘れて、耳かきに集中しなって。
ほら、ぺたぺた、ぺたぺた～。
頭空っぽにして、疲れも悩みも、全部飛んでけ～。
ふ、いい顔になってきたじゃん。

ほい。大分きれいになったかな。そんじゃ最後に。ふー……。
お、ビックリした？ごめんごめん。でもひんやりして気持ちいいでしょ？
……よしよし、素直ないい子にはもう一つオマケに、ふー……。

ほい、じゃあこっちはおしまい。反対側向いて～。ごろ～ん。……お、いいね～。
よ～し、じゃあ、こっちもやってくよ～。

(反対側の耳かき開始)
(ぺたぺた……ぺたぺた……)
……ああ、勇者さまのお耳が弱いってこと？まあ、大体の魔物が知ってるんじゃない？
魔王様が大陸中に伝令飛ばしてたし。
……そんな恥ずかしがらなくても。
おかげで耳かきしてもらい放題なわけじゃん？プラスに考えなよ～。
それが無かったら私も耳かきなんて知らなかったし。

(ぺたぺた……ぺたぺた……)
……ん？そうだよ、魔王様の伝令で初めて、こういうのあるんだなーって。
他の子も同じなんじゃない？それがきっかけで最近魔物界でも、耳かきがプチブームみたいになってるし。
……もしかして、私以外の子にも耳かきされたことあったりする？
ハーピィ……？ああ、あの羽が生えてるやつ。
え、どんな感じだったの。
全然負けなかった……？ほえ～、よくわかんないけど……やっぱ勇者さまって強いんだね。

ほい。じゃあこっちも最後に。ふー……。
うん、綺麗になった。

じゃあ一通り終わったし、あとは好きなだけ膝枕を堪能していきなよ。
あ、なんかしてほしいこととかある？なんでもやったげるよ。
……え、旅？いいじゃん。1日休むも2日休むも同じだよ。
ここ、夕日が綺麗だからさ、それまでゆっくりしていきなって。
……よしよし、耳かきも耳ふーも好きなだけしてあげるから
今日はぜーんぶ忘れて、一緒にゆっくりしようなー。

・台本（ゆるボイ！）
ダウナースライム娘の『ぺたぺた粘着耳かき』から 勇者は逃げられない！
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
あまに