あなたは耳垢が物凄い速度で増えてしまう悲しき怪物。
放っておくと世界を耳垢で覆い尽くしてしまう危険な存在であるため
現在は財団に収容されており、定期的に耳かきを受けなければなりません。

（扉が開き、職員が入ってくる。扉が閉まる）

おはようございます。
定時になりましたので只今より E-01-04-1 に対する観測記録朗読耳かきを開始します。
担当職員は D-2182 です。
規則に従って録音を行います。

では失礼します。


（左耳かき開始）


E-01-04-1 は人間の外見をしています。
通常の人間と異なる点は三つあります。
一つ目はその耳垢の増殖速度
二つ目は耳の頑丈さ
そして三つめは耳かきに対する異様な執着です。

一つ目について
E-01-04-1 の耳垢を、以降 E-01-04-2 と呼称します。
E-01-04-2 は通常の人間のそれと異なり、異様な速度で増殖します。

増殖の速さは加速度的であり
半日で耳が完全にふさがれ、一日放置すると収容室が E-01-04-2 で満たされます。

E-01-04-2 は形状、重さ等、観測できる範囲では一般的な耳垢と大差ありません。
また、E-01-04-2 は E-01-04-1 との接触が断たれると増殖を停止し
一時間ほどで自然消滅することが確認されています。

二つ目の特徴として E-01-04-1 は異様な耳の丈夫さを持ちます。
通常の人間は一日４度の耳かきを続ければ
過剰な刺激のために外耳炎等の異常をきたしますが
E-01-04-1 にはそのような兆候が全く見られません。

それどころか些細な傷をつけることさえ困難であり
今までに様々な実験が行われましたが
E-01-04-1 の外耳を物理的に傷つけることはできませんでした。

また、三つ目の特徴として E-01-04-1 は異常に耳かきを好みます。
長時間耳かきをされないと不安定な状態に陥り
それに伴って E-01-04-2 の増殖も加速します。

逆に耳かきをされると精神の安定を取り戻し、
この状態では基本的に職員に害を及ぼしません。


（左耳かき終了）


左側の耳かきを完了しました。
引き続き反対側の耳かきを開始します。

（反対側にまわる）

ではこちら側も失礼します。


（右耳かき開始）


朗読を再開します。
E-01-04-2 の増殖速度は E-01-04-1 がどれだけ耳かきに満足したかに影響を受けるようです。

ある職員が E-01-04-1 をひどく罵倒しながら耳かきを行ったところ
突如 E-01-04-1 の耳から E-01-04-2 が噴出し
一瞬にして施設の四分の三が E-01-04-2 に覆われました。
そのため E-01-04-1 を罵倒する行為は収容室内外関わらず厳重に禁止されています。

逆に耳かきに満足すると、次に耳垢が溜まるまでの時間が緩やかになるようです。
特に、囁き、耳ふーなどの行為を行うことで増殖速度の抑制が確認されており
管理の際はこれらの行為が推奨されています。
また、自分の観測記録を音読されながら耳かきされることを好むという特異な趣向を持ちます。

一方で E-01-04-1 は人間と同様の感性を持つと考えられ、
耳かきに対し、喜ぶ、悲しむ、飽きるといった反応を示します。
特に同じシチュエーションの耳かきを続けると不満を露わにし
E-01-04-2 の増殖速度が上昇することが確認されました。
そのため現在は職員が交代で台本を作成し
毎日一度、異なるシチュエーション耳かきを行うことで対処しています。

以上の特徴を総合した管理方法は以下です。
担当職員は日に 4 度、以下の構成で耳かきを行ってください。
0 時　睡眠誘導耳かき
6 時　観測記録朗読耳かき
12 時　日替わりシチュエーション耳かき
18 時　耳かき雑談

E-01-04-2 の脱走の際には収容室入口を開閉することで
収容室外の E-01-04-2 と E-01-04-1 の接触を絶ってください。
その後スコップ等を用いて E-01-04-1 を掘り起こしてください。


（左耳かき終了）


（耳ふー）ふー……


以上で観測記録朗読耳かきを終了します。
次の耳かきは 6 時間後、12 時からを予定しています。
本日の日替わりシチュエーション耳かきは
「メイドのあまあま耳かきマナー講座」です。
お疲れ様でした。


（扉を開けて出ていく。扉が閉まる）

・台本（ゆるボイ！）
耳垢が異常な速度で増殖してしまうので財団に収容されて定期的に耳かきされる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
あまに