死後、成仏できずに魂だけの存在になってしまったあなた。
そんなあなたの成仏を手伝おうと、ボクっ娘が耳かきしながら、あの手この手を試してくれます。

(少し呆れながら)
今日も来たんだね？
おめでとう、3日連続記録更新だよ。
で、一応聞くけどお望みは？
……はいはい、耳かきだね、わかってたよ。

はい、じゃあここに横になって。
(膝枕に頭を乗せる)
それじゃあ、ご希望の耳かき、やっていこうか。

(耳かき開始)

ところでさ、キミ、僕を耳かき屋さんか何かと勘違いしてない？
……ち、が、う、よ。
はあ、理解してないようだから、もう一度説明するけど
ここは死後、成仏出来なかった魂が来る世界。
ここでは現世に残してきた未練の中で最も強いものを断つことで、成仏に至れるとされている。
だから願いを叶えてその手伝いをするのが僕ってわけ。

……なのにキミときたら来るたび来るたび耳かきをねだる始末。
毎回同じ願いをされちゃ、いつまで経っても成仏できないだろう？
ほら、本当は何が欲しいんだい？

……いや、キミ自身は気づいてないかもしれないけど、何かあるはずなんだ。
耳かき以外に現世に残してきた未練がね。

まあそれを見つけるのも僕の仕事だ。
いいだろう、当てて見せよう。

よくあるのは、美味しい物を沢山食べたいってやつだね。
想像してごらん？目の前に広がる、一面の唐揚げ。
１つ取ってかじると、サクッと揚げられた衣からアツアツの肉汁がじゅわじゅわ〜と溢れ出てくる。

キミの片手にはほかほかのご飯。
それを口いっぱいに頬張る。
ハフハフ……ハフハフ……
サクサク……じゅわじゅわ～……

……違うか。
いや、正解だったら、もっとわかりやすく身体がぽわ〜って光るんだよ、ぽわ〜って。

そうだな……それじゃこんなのはどうだい？

キミはふかふかのお布団で寝ている。
ちゅんちゅんという小鳥の鳴き声と、柔らかな朝日が、キミを優しく起こす。
今日は一日何もない。思い切って二度寝してしまおう。
暖かい日差しが、キミの全身をぽかぽかと温めて、再び心地よい眠りへといざなう。
ぽかぽか……ぽかぽか……すやすや……すやすや……

うーん、これでもないか。難しいね。

(耳かき終了)

……あ、そろそろ耳、綺麗になってきたし、反対側いこうか。
っと、その前に……
ふー……
よし、完璧。じゃあ寝返りを打ってくれるかな？

(寝返りを打つ)

よしよし、じゃあこっち側もやっていくね。

(反対側の耳かき開始)

……耳かきはちゃんとするんだなって？そりゃあ頼まれた願いを断るわけにはいかないし……
それに、案外耳かきの中にヒントが隠れてたりするかもしれないからね。

……もしかして単純に僕の耳かきの腕に満足出来てないだけだったりする？
……上手い？そう、それなら良いけど……
でもそうなるとますます謎だな。キミは一体何が欲しいんだろう。

……じゃあ、成仏大作戦、再開しようか。
次はこんなのでどうだろう。

ここは温泉だ。カコーン。
真冬の露天風呂には、雪がちらちらと降っていて、
真っ白な化粧が木々や岩々を彩る。

お湯に浸かった身体はほかほかと温かく、
火照った額を、ひんやりとした空気が心地よく冷やしてくれる。
ほかほか……ほかほか……
カコーン……

……これもでもない……ふむ、となると、じゃあ……これか？

キミはネコだ。にゃー。
僕がキミのアゴを撫でると、キミは気持ちよさそうにうっとりとした表情を浮かべる。

キミは一日を気ままに過ごす。
僕の膝の上で寝てみたり、おなかがすいたらご飯をねだってみたり、いたずらに部屋を散らかしてみたり。
僕はキミを怒るけど、結局いつの間にかわしゃわしゃして可愛がることになる。
わしゃわしゃ、わしゃわしゃ、わしゃわしゃー……

……うーん、違ったか。

(耳かき終了)

そうこうしてるうちに、耳、きれいになっちゃったね。
じゃあ、最後に……ふー……
はい、おしまい。

今日も空振りだったね。
まあ、ゆっくりいこうか。
時間はいくらでもあるし
それに、手のかかる子ほど可愛いって言うしね。

ま、成仏出来るまでとことん付き合ってあげるよ。
僕の可愛い迷い子くん。

ちゅっ……

(ぽわぁ)

あっ……

(優しい声色で)
……そっか、これだったんだね。
……うん、わかるよ、もう眠いんだよね。
それじゃ、ゆっくり、おやすみ。

・台本（ゆるボイ！）
擬音大好きボクっ娘の成仏お手伝い耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
あまに