魔界からやってきた悪魔は時折部屋に来ては心配してくれる。
堕落させるためだとか、天使から守るためとか言っているが、実のところ心配性なのだ。

疲れてるときはこうして…必ず部屋を訪れてくれる。

こんばんは。

突然だけど、君。
最近頑張りすぎじゃない？

…いやちょっと前から見てたけどさ。
さっきから欠伸が凄いじゃんか…。

…肩もこんなに凝ってるし。

鏡見て来なよ。
クマもひどいし、あんまり眠れてないんじゃない？

ねぇそれ何ていうか知ってる？
オーバーワークって言うんだよそれ。

ん…？
がんばる…？がんば…る…？
何処かで聞いたような台詞だね…？

…げ。
まさか…とは思うけど。
あの性悪天使に誑かされてるの？

"頑張らないと癒してもらえない"…？

…はぁ。
あのねぇ…人間は寿命が短いんだよ？
それを自ら縮めてどうするのさ…。

適度に動いて適度に休む…。
それが人間に出来る最善の生き方だよ。

こんなに頑張ってたら、
いつか身体を壊しちゃうって…。

…えっ？
今日も朝起きれなくて遅刻しちゃったの？

そらもう見たことか。
さっそく弊害が出ているじゃないか…。

そっか、それで遅くまで残業…。

なるほどね。
それで今日の帰りは遅かったってわけだ。

まあでも…仕方ないよ。
たまにはそういう日があってもいいんじゃないかな。

いっつもちゃーんと時間きっかりに起きてるし。
そんな君が寝坊するくらいだもん。

それだけ身体がつらいよー、
やばいよーって疲れてるってことだよ。

だから休んじゃお…？
もう頑張るのやめちゃお…？

元気があってこその人生だよ。

ほら…こっち来て…？
眠るまで…僕が耳かきしてあげる。

うん、僕の特製膝枕。
いまなら特別耳かきもセットでついてるよ～。

…ｽｩ、いやね？
君のスマホの検索欄にこれがあったからね。

耳かき好きなのかなって。
前から機会があったら試したいとは思ってたんだ。

でも君は忙しそうだったから。
言えずじまいでね。機会を伺ってた。

ふふ…それで疲れてるいまの君を見たら、
耳かきをするならいまだなって思ったってわけ。

というわけで…
1ヶ月眠ってた耳かき棒がこちら。

これね、竹製の耳かき。
動画の傾向的に『ごりごり』っていうよりは『かりかり』みたいな軽い音の方が好みっぽかったからこっちにしてみた。

あとは…。
よいしょ、ほらここにいつも君が使っているアイマスクがある。

意外と目は開けているだけでも疲れるらしいからね。
仮に寝なかったとしても多少は休まるはずだよ。

それに目を隠した方が…。

ふぅう…
こんな風に耳の感覚に集中できる。

ね？

ささ、着けたら耳かきと洒落こもう。
ほら頭をこっちにちょーだい？

うんうんえらいえらい。
頭を乗せたら、肩の力を抜いてね。

すぅはぁ…。
リラックスリラックス…。

ゆっくり目を閉じようね。

うん、じゃあしていくよ…。
まずは手始めに耳たぶの裏から…。

うんうん、耳かき棒を使った耳かきは初めてだろうし。まずは慣れるために、外側からね。


//耳の付けねをなぞるような音


ここの付け根辺りが意外と気持ちいいらしいけど…。
どう？気持ちいい…？

…そう、気に入ってくれて良かった。

そうだ。人間の癒し方について調べていたとき、ひとつ興味深いことがあってね。
男性の身体は女性の身体と比べてあまり快感を感じるように設計をされていないらしいんだ。

まぁ、保健体育的な話になってしまうけど。
女性は痛みを伴う経験をする可能性が高い傾向にあるからね。

それをある程度誤魔化せる作りになっているらしい。
…かなり個人差があるらしいけど。

…興味深かったのはこの先。
だけどね、耳だけは性別関係なく脳の一番ちかーくで感じることが出来る快感なんだって。

嫌なことも悩みも疲れも吹っ飛ばしちゃう気持ち良さ…。
君がハマっちゃうのも頷けるね。


//耳の浅いところをかりかり…。


こう耳の浅いところを…。
かりかり…かりかり…かりかり…ってして…。

ぞくぞく…って身体が強張ったところで…
手を、止める。

そしてまたかりかり再開…。
するとだんだんと力が抜けていくでしょ…？

これを繰り返すことで…
身体から余計な力が抜けていくんだって。

かりかり…。
かりかり…かりかり…。

止める。

無意識に力を入れていた筋肉が脱力して…
身体の緊張がとけていくの。

そうすることでリフレッシュされるんだ。
これがいわゆる耳かきの癒し効果なんだって。

…仕事中、君は同じ体勢ばかりだろうからね。

僕が耳かきをすることで、その緊張が少しでもほぐれたら嬉しいな。


//ある程度耳かき後
//梵天


仕上げに梵天で。
ふわふわ…ふわふわ…。

優しく撫でるように。
ふわふわ…。

ぐりぐりって押し込むように
ちょっと回してみたり…。

…これ好き？
うんうん、そういうのもっとちょうだい。

好きなものは好きだって言っていいんだよ。
そしたら僕がしてあげられるから。

ふわふわふわ～…。
ぐりぐり～…。

…はい。
これで細かい汚れを取れば左耳はおしまい。


//梵天終了


どう？
少しは楽になった？

な、名残惜しい…？
あ、ぁはは…、思ったより良い反応返ってきたね。

大丈夫、これで終わりじゃないよ。
逆側もしてあげるから安心して？

…もちろん。
片耳だけだとすっきりしないでしょ？

どうせなら両耳綺麗にしてほしいもんね。
君が眠るまでしててあげるから、ね。

ふふ…。
目はとろーんとしてきてるかな？
うんだって、口元がふにゃあってなってるもん。

心地いい…。
だけどまだ眠くはない…そんな感じかな。

身体ぐいーって寝転がれる？
…そうそうそういう感じ。

…うーん、それだと首がつらくない？
お腹が近いとか気にしちゃ駄目だよ。

遠慮せずに自分が楽～になれる体勢になってね。

…もうちょっとだけ、身体こっちに寄せられる？
うん、いい感じ。


//耳かき


それにしても…そっかそっか。
頑張りすぎて余計に疲れてしまうというのは往々にしてあることだよね。

…もちろん頑張ることは大事だよ。
どこぞの天使ほどじゃないけど、それは否定しない。

…でもそれにだって限度ってものがある。
君は頑張る前に、1度しっかり休むことが重要だと思うな…。

まあ…僕だったらそんなことしなくても癒してあげられるんだけどね。こんなふうにさ。

あ、あと、遅刻をしたって気に病んじゃだめだよ。
君は特に真面目だからそう思っちゃうかもだけど。

そもそも僕からしてみれば
人間たちは勤勉すぎるくらいだよ。

朝から夜まで働いて。
ロクな休みもなく日々を過ごして。
生きるためにはお金が必要だから、って無理をして。

それ、考えてみてもおかしいと思わない？
そうでもしないと生きていけないだなんて…。
そんなの地獄より地獄じゃないか。

とはいえ悪魔の僕が人間社会に文句を垂れたって仕方がない。
ならさ、せめて君くらいは僕の前だけでもだらけたっていいと思わない？

休む時間がないとさ。
どんなに綺麗な魂だって擦り減っていっちゃうよ。


//「あ、お代は…魂で払うのが約束だったよね…」


お代…？
お代はいいよ。いらない。

これはあくまで僕の厚意だし。
こんなに疲れてる人からは貰えないよ。

…ｺﾎﾝ。
…あくまだけに？

こら笑うなぁ…。

魔界だと間違いなし！
の鉄板ジョーク…なんだからなぁ…？

まぁ…どうしてもっていうなら、
いつものお菓子で手を打ってあげる。

だからいま君はそんなこと気にせずに
耳の気持ちいい～のだけに集中してね？


//奥の方の耳かき


あ、奥に行きすぎちゃった…。

え…？
気持ち良かった…？

そっか。
…少しだけ奥の方もしようか。


//ある程度無言で耳かき


…大丈夫だよ。
今日も明日もその次も…。
僕はずっと君のそばにいるからね。

何があっても、僕だけは隣にいてあげる。
ずっと真面目にしてるのも疲れるだろうし。

僕の前では気を抜いていいんだよ。

はーい…。
奥はこれでおしまい。

うん、あんまりごしごししても傷ついちゃうから。
…奥はほどほどにね。一番気持ちよさそうだったけど。


//梵天


さてさて、次は君の好きな梵天だよ～。

ふわふわ～…ふわふわ～…。
ぐりぐり…ふわふわふわ～…。

えへへ…
好きだって言ってたから多めにしてあげようかな。

実はこうして君が癒されていく度に、少しずつ、少しずつ…
僕にどんどん依存させる計画だったり…？

なぁーんて。
あはは冗談冗談♪

こんなおちゃらけた悪魔に耳かきされちゃったら、
逆に眠れなくなったりしてね。

ん…。
おっと…もう寝てる…。

いつのまに。

…どうだったかな？僕の耳かきは。
初めてだったけどうまく癒せてたら嬉しいな。

ま、聞かずとも
その満足そうな寝顔を見ればよくわかるけどね。

僕、耳かきの才能があるのかも？
んふふ。

…そうさ、余裕がある人生が一番。

人間はもっともぉーっと優しくされて、
私みたいな悪魔にドロドロに甘やかされて…

コッチに堕ちるべき、なんだよ…。

・台本（ゆるボイ！）
純情ダウナー僕っ子悪魔のドロ甘耳かき天国へようこそ
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
鮎