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【悲しき女師匠・哀しき女戦士】妻のたった一度の嫉妬【続編】
written by 平 朝臣
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公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年12月07日 22:44
文字数
3159文字(約 10分32秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
視聴者役柄
場所
古代アイルランド
あらすじ
Prev→【女戦士の嗤い】哀しき女戦士【続編】 

あの一件から、15年後。
王国で修行を積んで戻ってきた男(視聴者)は、故郷の婚約者(演者)と結婚したものの、暇さえあれば、水平線の先を眺め続けていた。
そんな夫を心配する妻だったが、一方で、夫の浮気を咎めることも忘れてはいなかった。
しかし、謎の少年が来訪したことがきっかけで、男に悲劇が襲いかかることとなるーーー。

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本編
(某国、海が展望できる小城にて)


(海を眺め続ける主人公を、背後から声をかける)


あなた様~。

お昼の用意ができましたわ~。

...?

どうかなさいましたか?

...何でもない、でございますか。

ですが、こちらに帰ってこられてからずっと、暇さえあれば、海を眺めてばかりでおられますが...。

もしや、海の向こうにある、あの王国におられた頃を、懐かしんでおられるのですか?

...やはり、そうでございましたか。

#懐かしむように

思えば、わたくしとの婚約が、王国に行かれるきっかけでございましたわね。

わたくしたちは、出会った瞬間から、お互いを運命の相手と信じて疑いませんでした。

しかし、お父様は、あなた様との結婚をお認めになられませんでした。

当時、お姉様が、まだご結婚されておられなかったこともありましたが...。

最大の理由は、あなた様の実力を、お認めにならなかったことでした。

それを聞いたあなた様は、とてもお強いと評判の女師匠様に弟子入りして、ご修行なされることを、お決めになりました。

ですが、わたくしは不安でした。

たとえ、あなた様がお強くなって戻ってこられたとしても、お父様がお認めになるとは限りません。

そして、あなた様が、わたくしの知らぬ内に心変わりしてしまうことを、なにより恐れていました。

しかし、それでも、あなた様を信じて、待ち続けました。

それが、あなた様の妻になるための、“試練”と信じて...。

最初に訪れた試練は、あなた様が王国にいらっしゃる間に、お父様が、別の婚約者をご用意なされた時のことです。

その殿方は、隣国の王様で、お父様と懇意になされてるお人でした。

ある日、わたくしはお父様に連れられ、そのお方にご挨拶するように命じられました。

もちろん、わたくしは、見抜いておりました。

おそらく、わたくしとそのお方の婚姻を、お取り決めになりたいのでしょう、と...。

その日の夜、わたくしはそのお方の寝室に案内され、一夜を共にすることを提案されました。

無論、わたくしは、あなた様と将来を誓った仲であることをお話して断りましたが、そのお方は中々お引き取りくださいませんでした。

それだけならまだよかったのですが、そのお方は、口にしてはならないことをおっしゃいました。

それは、あなた様への侮辱でした。

そのお方は、あなた様がわたくしに相応しい地位や品格をお持ちになっていないと誹謗し、どうせわたくしを忘れて下賎な女を漁っていると中傷されたのです。

その瞬間、わたくしの中で、なにかが切れた音がしました。

聞くに堪えない数々の罵倒が終わった刹那、わたくしは懐に隠していたナイフを、そのお方の喉元に突き当てました。

ナイフはそのお方との晩餐会に参加した時、密かに拝借させていただいたもので、いざという時、わたくし自身の喉を刺し貫くために、隠し持っていました。

狼狽えるそのお方に対し、わたくしは、はっきりとお伝えしました。

わたくしは、この身も心も、すでにあなた様に捧げています、と...。

次の日、わたくしとお父様は、帰国することを許されました。

あのお方がお話の分かる方で助かりましたが、一時は、どうなることかと思いました。

そして、最後にして最大の試練は、あなた様がこの国に帰ってきた時でした。

あなた様がご修行を終え帰ってくると聞いた時、わたくしは、涙を流して歓喜いたしました。

ようやく、あなた様と結ばれる、と...。

お姉様もすでにご結婚なされ、後は、お父様がお認めになるだけでした。

ですが、お父様はその報せを聞くや否や、戦いのご支度を始めました。

わたくしが訳を聞いても、お父様は聞く耳を持ちませんでした。

それどころか、わたくしを部屋に閉じ込め、お父様がいいとおっしゃるまで、一歩も部屋を出ないように言いつけられたのです。

その時、わたくしは、気づきました。

お父様は、最初から、結婚をお認めになるつもりがなかったことを。

しかし、その窮地を救ってくださったのが、あなた様でした。

以前よりも、たくましく凛々しくなったあなた様は、お父様が準備なされた城の守りを難なく突破なされました。

“幸運なことに”、その間に、わたくしも部屋から出ることができました。

そして、追い詰められたお父様は、わたくしを連れてお逃げになろうとしましたが、“不幸なことに”、城壁から落ちてお亡くなりになられました。

こうして、わたくしたちを“邪魔するもの”がなくなり、わたくしとあなた様は、永遠の愛を誓ったのでしたわね。

...あら?

どういたしましたか、あなた様?

先ほどからずっと黙っておられますが、どこか具合でも悪いのでございますか?

#心配そうに

...本当ですか?

なにかあれば、遠慮なく申してくださいね?

わたくしは、あなた様の妻でございますから。

#首を傾げる

...あら?

そういえば、なにか忘れているような...?

#しまったという感じで

...あぁっ!?

お昼の用意ができていたことを、すっかり失念しておりましたわ!

なんという失態でしょうか...。

申し訳ございません...。

冷めないうちに、早く、食堂に向かいましょう。


(しばらく、間を空ける)


今日の昼食は、いかがでしたか?

...わたくしですか?

わたくしにとっては、あなた様と一緒に食べる料理が、もっとも美味しい料理ですわ、ふふっ。

...そういえば、あなた様に一つお話したいことがありましたわね。

#目が笑っていない笑みを浮かべながら

いえ、大したことではございません。

あなた様が、密かに、妖精の女性と逢瀬を重ねておられたことなど、些細なことですわ。

...あら?

どうなさいましたか、あなた様?

いつもより、顔色が優れていらっしゃらないように見えますが...。

別に、あなた様が気に病まれることはありませんよ?

ただ、妻のわたくしとしては、あなた様をつけ狙う泥棒猫には、細心の注意を払っておかねばなりませんからね。

ですから、わたくしの方から、少々ご挨拶をさせていただきました。

まあ、わたくしは非力な女ですから、選りすぐりの侍女を50人ほど同伴しましたが。

幸いにも、その妖精の方はわたくしとお話が合ったようで、すぐに“仲良く”なりましたわ。

なので、これからは、あの妖精の方と二人きりで会う必要はありませんね。

ふふっ...これこそ、妻の鑑だと思いませんか、あなた様?

#一息つく

...はぁ。

勘違いなされないように申し上げますが、浮気については、多少大目にみるつもりでいます。

最後に、あなた様の隣にいられれば、それで満足です。

#ニコニコしながら圧力をかける

ですが、もしわたくしを捨てて、他の女性と結ばれるようなことがあれば、その時は...。

...ふふっ、冗談ですわ。

ただ、わたくしを嫉妬させるのは、これきりになさってくださいね?

#優しい微笑みで

...ふふふ。

分かっていただけたのであれば、わたくしも、これ以上、追及いたしませんわ。

SE:ドアを叩く音

あら?

なにかしら?

入っても、よろしいですわよ。

SE:乱暴なドアの開閉音

一体、なんのご用...って、あなた、その傷は...!?

...名前も分からない少年が、この城に、一人で乗り込んできた、ですって...?

その少年は、今どこに...。

SE:ゆっくりドアが開く音

#息を飲む

...っ!?

も、もしかして、あなたが...。

...え?

あなた様と、一対一の決闘を...?

そんな、いきなり...。

#驚く

っ...!

あなた様...まさか、お受けになるつもりですか...!?

...場所は、あっちの砂浜でいいか、って...あなたも、勝手に話を進めないでください!

あなた様も、一旦、お待ちになって...!

SE:ドアの開閉音

...はぁ。

行ってしまわれましたわ...。

本当に、大丈夫でしょうか...?

あなた様が負けることは、まずあり得ないこととして...。

むしろ、あの少年の方が、気になりますわね...。

一体、なぜ、若い頃のあなた様と、瓜二つの容姿を...。

わたくしの思い違いであればよいのですが、もしかすると...。

...いいえ、そんなはずありませんわ。

とにかく、今は、あなた様がご無事に帰ってこられることが、重要ですものね。

#祈るように

ですから、どうか...どうか、ご武運を...。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【悲しき女師匠・哀しき女戦士】妻のたった一度の嫉妬【続編】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
平 朝臣
ライター情報
タイラ トモオミ
 初めまして。
 平朝臣と申します。
 ヤンデレを題材にしたシリアスな作品が多めですが、耳かき系も少数ながらありますので、どうぞお楽しみください。
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