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【女戦士の嗤い】哀しき女戦士【続編】
written by 平 朝臣
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公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年12月07日 22:39
文字数
3275文字(約 10分55秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
女戦士
視聴者役柄
男&息子
場所
古代アイルランド
あらすじ
Prev→【女師匠の笑い】悲しき女師匠【続編】

全ては、あの日から始まった。
女戦士(演者)は、その身に宿した我が子と、その父(視聴者)と共に、輝かしい未来への逃避行を開始するつもりだった。
しかし、男から、故郷に婚約者がいること、そして、彼女のために帰国しなければならないことを、明かされる。
唐突な告白に慟哭する女戦士だったが、最終的には、男を見送ることを決める。
そして、14年後。
女戦士は、成長した息子(視聴者)を、姉の下へと旅立たせたが、それは同時に、男に対する復讐劇の幕開けでもあったーーー。

Next→【悲しき女師匠・哀しき女戦士】妻のたった一度の嫉妬【続編】 
本編
(女師匠暴走の隙をつき、女戦士と共に逃走した主人公)


(夜、追手を振り切って逃げ込んだ、深い森の中で)


SE:草木をかき分けながら走る足音

SE:足を止める音

#息を切らせながら

ハァ...ハァ...ハァ...。

ここまでくりゃ、もう誰も追ってこねぇだろ...。

#息を整えた後、哄笑する

...ククッ、クヒヒヒ!!

ったく、最高の気分だな!

あん時の姉貴の顔、思い出すだけで、嗤いが止まんねーぜ!

...ん?

なに辛気くせぇ面してんだよ。

確かに、これでアタシ達は、完全に姉貴を敵に回しちまったけどよ...。

アタシとアンタの力を合わせれば、姉貴だろうがなんだろうが、怖くねーって。

それに、お腹の子が大きくなるまで、ぜってーアタシはくたばんねーからな。

...話さなきゃいけないことがある、って...。

#何かを思いついたように

あっ!

もしかして、アレか?

おいおい、いまさら告白なんかいらねーぜ?

#照れながら

ま、まぁ、一人の女として、好きな男からそういう言葉をもらえるのは嬉しいけどよ...。

考えてみりゃ、そういう過程をすっ飛ばしちまったせいで、アンタからは一言も聞けてなかったな...。

#モジモジしながら

で、でもよぉ...アタシだって、心の準備ってもんが...。

#呆気に取られたように

......えっ...。

故郷に、婚約者がいる...?

#冷静を装いつつも、言葉の節々に怒りを滲ませながら

...ああ、そういうことか。

アンタ、この期に及んでまだ覚悟を決めてねーんだな。

だから、そんなつまんねーウソを吐くのか...。

...この国に来たのは、姉貴に弟子入りして、婚約者の父親に認めてもらうためだった...だと?

...意味分かんねーよ。

#感情を爆発させながら

なんで...なんでっ、今になって、そんなこと言い出すんだよ!

アタシは最初ハナっから、アンタの眼中になかってことか?!

じゃあ、なんで姉貴にアタシを死刑にしないようにかけあったんだよ!!

なんで、アタシと一緒に逃げたんだよっ!!!

#涙目になりながら

なんで...アタシを、見捨てなかったんだよぉ...っ!

#涙を流す

ヒグッ...グスッ...。

SE:主人公が背を向けて歩き出そうとする音

#涙を止める

...っ!

帰るのか...?

婚約者のいる、故郷に...。

#不安げに

なぁ...また、戻って来てくれるよな...?

この国に...。

アタシと、この子に会うために...。

...なんだよ、いきなり手を出せ、って...。

SE:金属音

ぁっ...。

これ...金の、指輪...。

...この指輪が、この子にピッタリはまるくらいまで成長したら、アンタの故郷に向かわせろ、か...。

つまり、アタシは無理でも、この子の面倒はそっちで見てくれるってことか...。

その言葉...ウソじゃねーよな?

...分かった。

本音を言うと、アンタと一緒に故郷までついていきたいけど...。

でも、アンタは、一度決めたことを絶対曲げないからな...。

#ため息を吐く

ハァ...羨ましいよ...。

アンタの婚約者が...。

だから、さ...。

最後に一つだけ、アタシのわがままを聞いてもらっていいか?

その...キス、してほしいんだ...。

それも、アタシを恋人だと思うくらいの気持ちで...。

#上目遣いで

ダメ...か?

...ありがとう、嬉しい。

#慌てながら

あっ!

ちょ、ちょっと、待ってくれ!

こういうの、初めてでさ...。

アタシの準備が整って、目を閉じたら始めてほしいんだ...。

#深呼吸する

スゥー...ハァー...。

#緊張気味に

...よ、よし、いいぞ...。

SE:キス(個々の演技と想像力にお任せします)

...ん。

っは...。

...やっぱり、ダメだな。

諦めるどころか、もっとアンタが好きになっちまった...。

ハァ...ホラ、とっと早くいけ。

追っ手が来ないとも、限らねーからな。

さぁ、行った行った。

SE:草木をかき分けて歩き去る足音

#静かに憎悪を滾らせながら

...アタシは、ぜってー赦さねぇぞ。

一生、アンタには忘れさせない...。

アタシも、生まれてくるこの子も...。


(しばらく間を空ける)


(14年後)


(某国、とある隠れ家の玄関先にて)


よし...支度は、もう大丈夫か?

これから、お前は姉貴...じゃなくて、女師匠さんのところに、弟子入りしに行くんだ。

お前なら大丈夫だと思うが、弟子入りのための試練を、一人で乗り越えなきゃいけないんだから、準備は、十全にしておかないとな。

それと、女師匠さんに会ったら、ちゃんとアタシからの手紙を渡しておくんだぞ。

あとは...ちょっと、手を出してくれないか?

よいしょ...。

#満足げに

うん...ピッタリだな。

前にも言ったが、この指輪は、父さんの形見なんだ。

これを着けておけば、いつでも父さんが、お前を見守ってくれるからな。

#悲しそうな顔で

...そんなに嫌がらなくても、いいじゃないか。

お前が、父さんを憎む気持ちは分かる。

でもな...母さんは、今でも父さんが好きなんだよ。

お前には、理解できないかもしれないけどな。

さてと...あとは、母さんとの旅の約束だな。

覚えているか?

...ハハハ!

じゃあ、もう一度復唱するか。

ちゃんと覚えろよ?

#ゆっくりと、言い聞かせるように

『進む道を変えてはならない』

『誰にも名乗ってはならない』

『いかなる挑戦にも応えねばならない』

...よし。

じゃあ、そろそろ出発だな。

寂しくなったら、いつでも母さんの元に帰ってきていいんだぞ?

まっ、アタシは心配してないけどね。

なんたって、アタシの息子だからな!

#何かを思い出したかのように、慌てて引き止める

あ、待った待った!

最後に一つだけ、やり忘れてたことがあったな。

ちょっとだけ、目を瞑っててくれないか...?

ん...。

SE:軽くキスする

...これは、母さんからの『まじない』だ。

旅に出たらもう会えなくなるけど、母さんの『呪い』が、ずっとお前を守ってやるからな...。

#優しく、悲しげに

...さ、いってらっしゃい。

SE:時折立ち止まりながら立ち去る足音


(以下、独白パート)


ハァ...アタシは、ヒドイ母親だな...。

あんなこと言っておきながら、大切な一人息子に、過酷な運命を背負わせるなんてな...。

...あれから、もう14年か...。

あの日以来、アタシは、片時もアンタを忘れなかった...。

けど、その間も、アンタは故郷の婚約者と結婚して、幸せな日々を過ごしているんだろうな...。

当然、アタシとあの子のことなんか忘れて...。

#憎しみを込めながら

...ふざけんなよ。

アタシはあの時、誓ったんだ...。

一生、アタシと生まれてくる子を、アンタが忘れないように刻みつけてやるんだって...。

そのために、アタシは、あの子にアンタへの憎しみを無意識に植え付けた...。

それも直接憎悪を吹き込むんじゃなくて、あの子の愛情を利用することで、より深い復讐願望を持つように育てたんだ...。

そして、アンタの故郷に向かわせる前に、姉貴に弟子入りするように指示した...。

幸いにも、アタシとアンタの血を引くだけあって、あの子は才能に恵まれた...。

姉貴の下で鍛えることによって、その才能は完全に開花するはずだ...。

もちろん、全てが、ある目的のために行動してきたことだ...。

そう...アンタとあの子を殺し合わせる、ただそれだけのために...。

あの子が勝てば復讐は果たされ、たとえあの子が殺されようとも、アンタには一生癒えることのない傷を刻み込むことができる...。

どちらに転んでも、アンタの幸せを引き裂けるってわけだ...。

我ながらロクでもないことを考えついたモンだよ、全く...。

ただ...アタシは、今でもアンタを愛してる...。

矛盾してるかもしれねーが、それは嘘偽りのない気持ちだ...。

だから、アタシは、密かにチャンスを与えた...。

あの子が旅立つ直前、アタシはあの子に『呪い』と称して、三つの『禁忌』を施した...。

『進む道を変えてはならない』

『誰にも名乗ってはならない』

『いかなる挑戦にも応えねばならない』

この三つが守られる限り、あの子が、アンタに負けることはない...。

だけど、もし復讐に囚われたあの子が、アンタを赦すようなことがあれば、その瞬間、『禁忌』が破られる...。

そうなれば、アンタにも勝機があるはずだ...。

...でも、裏を返せば、それは、あの子の死も意味する...。

本音を言えば、あの子にも死んでほしくはない...。

アンタを愛してるのと同じように、あの子も愛してるからだ...。

サイテーなことやってんのは分かってんだけど、アタシは、どっちも死んでほしくないんだよ...。

#自嘲する

ハハッ...ホント、バカだよな、アタシ...。

クヒ...クヒヒヒ...。

...なんで、こうなっちまったんだろうな...。

アタシはただ、アンタの側にいられれば、それでよかったのに...。

強引だったのは分かってるけど、アタシには、ああするしか方法がなかったんだ...。

他に...どうすりゃよかったんだよ...。

なぁ、教えてくれよ...アンタ...ッ。

#嗚咽を漏らす

グス...ウゥッ...アアアア...。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【女戦士の嗤い】哀しき女戦士【続編】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
平 朝臣
ライター情報
タイラ トモオミ
 初めまして。
 平朝臣と申します。
 ヤンデレを題材にしたシリアスな作品が多めですが、耳かき系も少数ながらありますので、どうぞお楽しみください。
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