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【男性向け】All Is Fair in Love and War【ヤンデレ】
written by 平 朝臣
  • シリアス
  • ヤンデレ
  • 軍人
  • 女軍人
  • 戦争
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年09月21日 11:12
文字数
3164文字(約 10分33秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
敵国の女軍人
視聴者役柄
『英雄』と呼ばれた男軍人
場所
現代をベースにした架空の二国家
あらすじ
貴方(視聴者)は、非常に優れた戦術家であると同時に、人道面においても称賛されるという、まさに『英雄』の如き活躍を見せていた。
しかし、外交や国力を背景にした戦略を覆すまでには至らず、遂に、敵方の捕虜となってしまう。
虐待や拷問、更には処刑まで覚悟した貴方だったが、敵軍の女軍人(演者)によって、それらは回避されることとなる。
だが、それは、女軍人の策略に過ぎなかったことを、すぐに思い知らされるのであったーーー。

5年後→【男性向け】報復【ヤンデレ】 
本編
SE:ドアを開ける音

ご機嫌よう、“英雄”殿...。

改めて、捕虜となった気分はどうだ?

...ふむ。

相も変わらず、無愛想だな。

だが、安心しろ。

貴官の処遇は、国際法に則って、本官が保障する。

故に、虐待や拷問などもない。

軍の上層部や政治家の連中は、士気向上と国民へのアピールのために、貴官を処刑すべきだとはやっているようだが...。

むしろ、それは悪手だ。

貴国のプロパガンダに利用されて、戦争が長引いてしまうだけだからな。

貴官が捕虜になってからは、我が国が軍事的優勢を保っているとはいえ、戦線が泥沼化するのは、なるべく避けたい。

それに、貴官に死なれると、色々と困るのだよ。

主に本官がな...。

まあ、それはさておき...。

今日、貴官を訪ねたのは、他でもない。

一度、二人きりで、腰を据えて話をしてみたかったからだ。

主に、この戦争の行く末について、な...。

単刀直入になるが、貴官に聞きたい。

いつになったら、この戦いは、終わると思う...?

といっても、この戦いというのは、今まさに行われている紛争ではない。

貴官と本官が生まれる以前...長い時を経て、幾度も領土や国名、政治体制が変遷しても、なお断続的に行われている、歴史そのものだ。

この歴史が、我々の世代で終結すると思っているのか...本音で答えてもらいたい。

...なるほど。

貴官は、憎しみと悲しみを乗り越えて、和解できると、信じているのか。

だが、歴史の当事者は、皆、こう思っていたはずだ。

いずれ、この歴史には終止符(ピリオド)が打たれるはずだ、と...。

しかし、結果はご覧の有り様だ。

時代を越えた殺戮と憎悪の連鎖が、終わることのない螺旋を描いて、楔を打ち込み続けている。

特に、近代ナショナリズムの成立以降は、それが顕著だ。

民族、宗教、政治的イデオロギー、資源・領土の争奪...。

様々な対立が複雑に絡み合い、両国間に深く根差していることに加えて、双方の政治家が国民感情を煽ることで支持を集める状況が、ここ数十年続いている。

しかも、誰もがその事実に気づいていながら、一向に止める気配がないのだ。

両者共に、果てのないゼロサム・ゲームを、繰り広げていることも知らずにな...。

...これでも、貴官は、まだ諦めないつもりなのか?

歴史上、誰も成し遂げられなかった、完全和平の道を...。

...そうか。

それでも、信念を曲げることはないのか...。

流石だな。

天才的な戦術で我が軍を次々と打ち破る一方、たとえ敵兵であっても可能な限り人道を尊ぶ、“英雄”らしい受け答えだ。

...だが、本官は、そうは思わん。

人間は、それほど知的な動物ではない。

たとえ、負けると分かっていても銃を取り、得るものがないと知りながら、戦争を継続する愚かさを持っているからだ。

この本質は、貴官一人でどうにかなる問題ではない。

最早、誰にも止められないのだよ。

貴官にも、本官にも...。

...さて。

それでは、本題に入ろうか。

思想の違いはあるにせよ、同じ思いを共有していることは確認できた。

だからこそ、もう一度問いたいのだ。

貴官を解放するかわりに、本官の夫になるつもりはないか?

無論、そのための準備も出来ている。

貴官のための隠れ家も、偽の戸籍も、婚約指輪も、だ...。

あとは、貴官の意志次第だが...。

...なぜだ?

なぜ、そこまで固辞する...?

貴官も、軍人なら分かるはずだ。

このまま戦局が推移すれば、間違いなく、貴国は敗戦する。

そうなれば、貴官も、処刑されるのだぞ?

我が国に仇なした、憎き敵将として...。

もちろん、本官としても、貴官の軍人としての誇りを尊重したいが、それとこれとは話が別だろう。

命を惜しむのは、人として当然だからな。

それと、貴官...。

本官は、貴官を本気で愛している。

敵軍の将兵に懸想するなど、本来あってはいけないことだが、そんなことはどうでもいいのだ。

軍人としての強さ、人間としての器の大きさ...。

そして、男としての魅力...。

その全てを、本官は欲しいのだよ。

たとえ、どんな手段を用いてもな...。

...さて、それでは...。

最後に、もう一度だけ、問うとしよう...。

本官の夫に、なるつもりはないのか?

...答えは変わらず、か...。

そこまで頑なに拒絶されると、理由が気になってしまうな。

軍人としての忠誠心か?

本官では、不満だからか?

それとも...意中の相手がいるからなのか?

...その反応、どうやら、正解のようだな...。

なるほど...。

誰にも関係を明かすことなく、最期まで愛を貫くつもりだったのか。

だが、その程度は予測していたことだ。

既に、諜報機関を通じて、調査も済んでいる。

その女の名前も、顔も、居場所もな...。

どうやら、あの女は、貴官が生きて帰ってくることを信じて、亡命することなく待ち続けているそうだ。

しかも、敗色濃厚かつ、包囲された首都の中において、だ。

こんな状況でなお留まるなど、相当の覚悟を持っていなければ出来ないことだろう。

まさしく、愛の為せる業だ...。

随分と愛されているのだな、貴官も...。

...しかし。

だからこそ、気に入らんのだよ...。

その女が、貴官と本官の障害となっていることがな...。

だから、本官は、再び取引を行う。

もし、貴官が、なおも拒むのであれば...。

本官が、首都を包囲する部隊に命じて、制圧作戦を発動するつもりだ。

当たり前ではあるが、一筋縄ではいかないだろう。

守備側も、攻撃側も、多大な戦力を消耗する。

だが、それでいいのだ。

戦闘が激化すればするほど、両軍の殺意は高まっていく。

そして、殺意が限界を超えた時、現場の兵士達に変化が生じるのだ。

ここまで言えば、貴官なら分かるだろう?

そう...大量虐殺(ジェノサイド)の始まりだ。

狂気に呑まれた戦場においては、国際法はおろか、軍の規律すら通用しない。

軍人であろうが市民であろうが、敵と見なせば、いとも容易く引き金を引くことができてしまうのだ。

当然、老人も子供も、男も女も、一切関係ない。

殺さなければ殺される...その一点だけで、理性は吹き飛んでしまうからな。

しかも、それだけではない。

無秩序な世界では、あらゆる者が暴力に訴え、弱者を支配しようとする。

具体的には、男性兵士が一般市民の女性を凌辱する...とかな...。

想像してみるがいい...。

貴官の大切な人が、有象無象の兵卒に組み伏せられ、惨たらしく蹂躙される様を...。

そんな地獄絵図が生まれるのだぞ?

本官の、命令一つでな...。

...さて。

では、返事を聞かせてもらおうか。

本官の夫となるかわりに、首都に住まう無辜の民を守る...これで、問題はないか?

...ククク、ハハハハ!

それでよい...。

貴官は、正しい選択をしたのだ...。

自らの名声と地位...そして、母国と愛する女を捨てて、数多くの命を救ったのだからな。

まさに、“英雄”の名に相応しい偉業だ...ククク...。

...おっと、そんな睨むような眼差しを向けられても、困るな...。

そもそも、この制圧作戦は、本官が立案したものではない。

徹底的な勝利を求める軍の一部と政治家が発案し、それを支持する国民が後押しして計画されていたからな。

本官は、それを利用させてもらっただけだ。

だから、あまり悪く思わないで欲しい。

それと、これは、あくまで私の持論だが...。

All Is Fair in Love and War.恋愛と戦争においては、あらゆる手段が正当化される』...。

古くからある格言だが、本官は真理だと考えている。

見境なく奪い合うが故に、歯止めが効かなくなるという共通点が、特にな...。

ククク...心配せずともいい。

おそらくだが、今頃、外務省が極秘裏に動き出しているはずだ。

目的は、大国を介した停戦協定の締結だろう。

我が国も、本官も、戦略的勝利を達成した以上、戦争を継続する理由などないからな。

ここら辺が、ちょうどいい落とし所だろう。

まぁ、もっとも、これに関しては、貴国の返事次第だがな...。

さて、そんなことより...。

これからは、貴官という呼び方を、止めようと思う。

貴官と本官は、もう夫婦なのだからな。

いつまでも、他人行儀では、格好がつかん。

というわけで...。

#右耳、至近距離、囁き

(それまでの硬い口調から一変して、ラブラブな感じで)

これから、末永く、よろしくね...ア・ナ・タ♥️

フフフ...。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【男性向け】All Is Fair in Love and War【ヤンデレ】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
平 朝臣
ライター情報
タイラ トモオミ
 初めまして。
 平朝臣と申します。
 ヤンデレを題材にしたシリアスな作品が多めですが、耳かき系も少数ながらありますので、どうぞお楽しみください。
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