0
保健室の先生は耳かきで距離を詰めてくる
written by 雨竜三斗
  • 告白
  • 耳かき
  • 学校/学園
  • ラブラブ
  • 甘々
  • 純愛
  • 癒し
  • 教師
  • 年上
公開日2024年02月29日 20:07 更新日2024年02月29日 20:07
文字数
5296文字(約 17分40秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
保健室の先生
視聴者役柄
男子高校生
場所
保健室
あらすじ
『あなた』は好きになった女の子に上手な接し方ができず、傷つけてしまう。そのせいでクラスのみんなからの信用まで失った。ふらふらとした足取りで逃げるように保健室にやってくる。起こったできごとを保健室の先生に相談すると、耳かきしましょうか、ということになる……。
本編
トラック1:保健室へ
(場所:昼休み保健室)
(位置:正面、中距離)
(SE:ドアが開く音)
あら、保健室に来る必要が見て分かるほど
顔色が悪いわね……。

まずは座って。
落ち着いたら症状なりを話してほしいわ。

(SE:椅子がきしむ音)
(10秒ほど、話を聞く息遣い、あいづちなど)

自分の接し方が悪くて女の子に嫌われた。
傷つけちゃった。

(10秒ほど、話を聞く息遣い、気まずそうに)

悪いことをしたってことが広まって
クラス内の信用を失った……。

(10秒ほど、保健室の先生自身が、落ち着くための息遣い)

まずは、保健室に来ようって思ったことを
褒めてあげる。

これは逃げてるんじゃなくて、
落ち着いて考えに来たと思って。

それに生徒同士のトラブルが大きくなったとき、
しっかり相談を受けたり、解決に導くのは
わたしたち先生の仕事よ。
保健室に来たのを悪いと思わないで。

……椅子に座るのも大変そうね。
ベッドに座って、つらかったらそのまま横になっていいから。

(SE:椅子が動く音)
(SE:ベッドの上に腰掛ける音)

(位置:左、近い)
ゆっくりでいいから、休みながらでいいから、
お話の続きしましょうか。

どうしてこんなことになっちゃったか、
自分なりの考えがあったら聞かせて。

もちろん怒るつもりはないわよ。
誓います。

(真剣な声で)
もしわたしが感情的になったら、
ストレスをわたしにぶつけていいわ。
先生にはあなたの信頼を得るため、
それほどの覚悟があります。

……信用してくれてありがとう。
大げさだったかもしれないけど、
ちゃんと聞いてもらえてうれしいわ。

だから、あなたの話も聞かせて。

(10秒ほど、落ち着いて話を聞く息遣い)

距離感、好きな女の子への
好き好きって気持ちが強すぎたのね。

勢い余って嫌われちゃって、
みんなにも広まった。

クラスでも弁解とか説明とかするけど、
裏目に出ちゃって嫌われちゃう。
そういうことね。

……ごめんなさい、わかった気でいるような、
えらそうなあいづちだったわ

わたしも距離感の悩み、わかっちゃったから。

人付き合いって難しいものね。
ひととの距離感はおとなになってもわからないもの。
立ち回りが上手なひとのほうが少ないと思うわ。

相手を傷つけちゃったのはごめんなさいだし、
自分は悪くないなんて言い出したら叱るところよ。

そんなことなくて、
あなたは自分が悪いと強く思って、
後悔して、どうしたらいいか悩んでて、
いっぱいいっぱい考えたのでしょう?

それは否定できないわ。
たとえ、周りのひとがなんと言おうとね。

相手のためにとかなりすぎちゃって、
どんどん自分をおざなりにしていっちゃうの。

その結果、自分をダメにしちゃって、
また相手を傷つけちゃうことに繋がっちゃう
……とわたしは思ってる。

だから、耳かきしましょうか。

ふふふっ、いきなりだったわね。
でもわざと言ったのよ。

実はわたしもあなたと同じで、
ひととの距離感とか考えて話すのが苦手で、
ぐいぐい行っちゃうの。

意外だった?
保健室の先生はお話し上手……
なんて言われがちだけど、わたしは下手なの。

だけど、下手なりにあなたに寄り添いたいの。

下手じゃない?
ふふっ、褒めてくれてありがとう。
もしかしたらあなたとわたしは、
相性がいいからかもしれないわね。

(SE:チャイムの音)

そろそろ授業始まっちゃう?
五限目、ううん、
あなたが落ち着くまで休んで。

あなたは今、頭の中がグチャグチャってしてるから、
ゆったりとする時間が必要だと思うの。

それにあなたのクラスも今は大変だと思う。
いいえ、周りのことより、今のあなたが心配。
これは先生判断、いわゆるドクターストップよ。

(位置:右、中距離)
担任の先生にはわたしから連絡しておくわ。
このままちょっと待ってて。

もし、ひとりでいるのが辛かったら、お耳塞いでて。
毛布にくるまっても、枕を頭に乗せてもいいわよ。


トラック2:耳かきと助言

(位置:右、中距離)
(SE:カーテンの閉まる音)
はい、おまたせ。

(位置:右、近くへ)
綿棒、持ってきたわよ。
耳かきしましょう。
キミが気にしてる理由は
お耳かさかさしながら説明するわ。

まず……先生がひざまくらしてあげる。
わたしの顔が横向きに見えるように
おひざに寝てほしいな。

えんりょしなくていいの。

わたしもひととの距離感調整下手なんだから、
変なひとって思いながら付き合ってほしいな。
ラッキースケベチャンスくらいに思ってもいいの。

……な~んて、
あなたはそんなふうに考えないわね。
でもそのくらいずぶとくしていいよってこと。

(精一杯優しい声で)
だからね、
おいで。

(位置:正面、近い)
んっ、ふふふっ……。
変な声でちゃった。ちょっとくすぐったかっただけ。

こんなに気づかいできるなんて、
あなたは優しい子だってわたしは感じるわ。

……今は『そんなことない』みたいな
ネガティブな言葉は禁止しましょう。
先生もなるべく言わないように気をつけるわ。

どうしてもネガティブな言葉が出てくるのなら、
わたしの言葉に無理に答えなくていいわ。
ただ、わたしの言ったことを耳に入れてほしいの。

それと耳かきの気持ちよさに癒やされてほしいの。

さて、どっちのお耳からしてほしい?
どっちでもいい?
ううん、小さなことでもちゃんと決めてほしいけど、
今は小さな選択すらも重いのよね。

先生らしく、わたしが導きましょう。
左を向いて。わたしの体と同じ方ね。

(位置:左、近い)

目はつぶってた方がいいかしら?
いろいろ思い出しちゃうなら、
無理せず開けたまま、カーテンを見てて。

それじゃ始めるね。
お耳の中にしつれ~い。

(位置:左、至近距離)
(SE:耳かきを左耳へ)
ずずずず……。

(SE:左耳、耳かき、続ける)
かさかさ……かさかさ……。
くすぐったい? 変な声だしちゃってもいいよ。
録音なんてしてないし、誰かに言いふらしたりもしない。
保健室の先生は基本、秘密厳守よ。

くるくる……くるくる……。
えらいひとに言う必要があることは、
多分大問題になっちゃいそうなこと。

そうなる前に、わたしたちだけの秘密にできるところで、
生徒を助けてあげるのがわたしのお仕事だから。

こりこり……こりこり……。
本当はみんな、
自分の思ったことを素直に言っていいの。

でもそうしたら、きらわれちゃったり、
傷つけちゃったりしたり、悪いことになっちゃったのよね。

さわさわ……さわさわ……。
わかるわよ。
わたしだってそうだったもの。

ずりずり……ずりずり……。
そうして後悔して、反省して、
なのに答えは見つからない。

せめて次こそはと意気込むけど、
ぞりぞり……ぞりぞり……。

ちゃんと答えが出てないままだから、
やっぱりうまくいかない。
同じことを繰り返して、疲れだけが積もっていく。

かりかり……かりかり……。
どうにもできない、自分はダメダメなヤツ、
相手を傷つけちゃうくらいなら何もしないほうがいい、
優しいひとほど、こんなふうに考えるのよね。

でもそうするとまた怒られる。
自分のからにこもるな、話を聞け、世の中を見ろ、
ぐるぐる……。

……なぁんてお説教が
なにも知らないひとの口からでてくる。

ぐるぐる……ぐるぐる……。
また答えが見つからないまま、
ひとと接してまた傷つけて……。

(SE止め:耳かき一旦止め)
何年も同じことの繰り返し……。

心当たりあるかしら? お顔がつらそうね。

わたしも言っててちょっと心が苦しいの。
思い出しちゃうわ。

どうしたらいいのかしら?
わたしもそう思ってるの。

わからないけど、わからないなりに、
したほうがいいことはあるわ。
それが耳かきに繋がってるのよ。

(SE:左耳、耳かき、続ける)

こすこす……こすこす……。
なんで耳かきしたのかと言うと、
そんなぐるぐる回っちゃう考えの一時停止のため。


じょりじょり……じょりじょり……。
回れば回るほど、疲れちゃって、病んじゃって
答えは遠ざかってると思う。

ずるずる……ずるずる……。
そうなっちゃたら、そばにあった答えやヒントにも気がつけなくて、
やっぱり同じことの繰り返し。

立ち止まることがよくないんじゃないの。
そのまま歩けなくなったり、戻ちゃったり、
やめちゃったりするのがよくないのよ。

立ち止まって振り返ったり、
周りを見渡して、よく見るのよ。
相手のことと自分のことをね。

ぞり……ぞり……。
すると優しいあなたなら見つかるんじゃないかしら。
どうしたら距離感を大事にできるか。

つん……つん……。
どうしたら相手を傷つけないようにできるか。

かりっ……かりっ……。
それでもわからなかったら、質問すればいいの。
どの距離なら居心地いいですか?
どんな彼氏がほしいですか?

参考までにわたしの好みを教えたげる。
わたしは……ひとに優しくしたいって悩んじゃうくらい
いっぱい優しいひとが好き。

(SE止め:耳かき止め)

はい、左耳さんおしまい。
次は右耳さんを癒やしましょう。

つらいお話とつまらない説明もここでおしまい。

そもそも説明、下手でごめんね……。
ちょっと遠回りだったり、
言葉の使い方が変だったりしても、
わたしはこれが一番伝えやすいの。

きょとんとした顔しちゃってる。
どうしたのかしら?

すごいこと言われた気がする?
どうかしら? もっとわたしの話を聞いてみないと
わからないかもしれないわね。

そのために右耳さんもキレイにしましょう。

じゃ、ごろんってして。
先生のおひざに乗ったままでいいから、
こっちを向いてね。

3:保健室の先生が急接近

(SE:布の擦れる音)
(位置:右、至近距離)

先生のお腹と顔が近くて恥ずかしい?
わたしも恥ずかしいけど、
その恥ずかしいって気持ちがあったら、
ネガティブな気持ちを減らせるかも。

におい? いいかおりの香水でしょう?
つけすぎると先生として示しがつかないとか
なんとか言われちゃうから、
最低限つけてるのよ。

あからさまにくんくんすると恥ずかしいけど、
自然に息をしていいの。
わたしの香水でリラックスできるなら、なおのことよ。

こんなときリラックス用のアロマがあれば
よかったのだけど……。ごめんなさいね。

……いけないいけない。
気を取り直して、右耳さんも癒やしましょう。

しつれいしまぁ~す……。

(SE:右耳に耳かきが入る)
ずずずっ……。

(SE:右耳、耳かき、続ける)

ぞーりぞーり……。
さっきより気持ちよく感じるかしら?
気が張ってると感じ方が歪んじゃうから、
気持ちいいものを気持ちいい
って感じるのはいいことよ。

寝ちゃいそう?
ずーりずーり……。
6限目も出れないかもって伝えてあるから、気にしないで。
今は自分の感じるまま、感情のまま反応していいの。

じょりっ……。
あなたみたいな子は自分の感情を抑えちゃって、
相手に合わせようとしちゃう傾向があるから、
じょりっ……。

自分の気持ちに正直になる時間を作らないとね。
こちょこちょ……。

でないと感情が固まっちゃうわ。
あ、またお説教になっちゃう。
ごめんなさいね。

ぐーり……ぐーり……
でもわたしが距離感図ったり、不器用だったりなのは
わかってもらえたかしら?

かしゅ……かしゅ……。
もし落ち着かなかったら、
顔もお腹にくっつけても、
腕をわたしにぎゅってしていいわよ。

(SE止め:耳かき一旦止め)

むしろそうしてくれると耳かきしやすいし、
わたしもちょっとうれしいかも。

ぎゅ……。
思ったより細いかしら?
保健室の先生が不健康なんて示しがつかないから、
健康な身体づくりもしてるの。

(SE:右耳、耳かき、続ける)

今思えば、ちょっとふくよかなほうが
甘えるほうがいいかも。
こんなふうに甘えてもらえること
考えてなかったわ。

彼氏とか、旦那とか?
いないわよ。わたしの接し方じゃ男の人は逃げちゃうもの。

もしいたら、こんなことできないわよ。

意識しちゃった? そうよね。

でもそれもわたしの狙いだったりして……。

(SE止め:耳かき止め)

ふ~~~~~~~~~~~~~~~~~。
(右耳に長めの耳吹き)

だいぶ落ち着いてきたわね。
(SE:頭を撫でて『あなた』の髪が擦れる音、続ける)
よかった。なでなで……、いいこいいこ……。

あら、鼻ぐずって……。
鼻炎とか花粉じゃないわよね?

泣いちゃうのも、がまんしなくていいわ。
今は気持ちにすなおに、すなおに……ね。

わたしもすなおになっちゃうから。

(SE止め:頭を撫でる、ここまで)

好き。

ふふっ。わたしっていけない先生ね。
キミのこと好きになっちゃうなんて。

はい、ぎゅ~。
(抱きしめるので少し声がこもる。続ける)
びっくりして声あげちゃダメよ。
わたしたちが変なことしてるのがバレちゃう。

どうしてこんなこと言うのかって?

さっき言ったでしょう?
わたしはひとに優しくしたいって悩んじゃうくらい
いっぱい優しいひとが好き。

こっそりお付き合いしましょう。
キミが卒業して、結婚の準備ができるまで、
わたしはここで待ってるわ。

誓います。
悩めるときも健やかなるときも……なんてね。

あ、ごめんね、苦しかった?
ずっとぎゅ~してたら苦しいものね。

(抱きしめ、声のこもりここまで)
(10秒ほど呼吸を整えるような息遣い)

次の授業から教室に戻る?
どうしたの?

先生がここにいるなら、
自分はがんばれそう?

(顔を真っ赤にして声に詰まる)
……っ。

(嬉しそうに、穏やかに息を吸う)
わかったわ。
さっきと顔色が違う。
あなたのことかわいいと思ってたけど、
かっこいいところもちゃんとあるのね。

ますます好きになっちゃった……。
正面からぎゅってさせて。

ぎゅ~。

がんばって。
わたしはここにいるから、
つらくなったらここに来て……
ううん、戻ってきて。

わたしとあなたの距離感は、
とってもいい感じなのね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
保健室の先生は耳かきで距離を詰めてくる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
雨竜三斗
ライター情報
女の子の声でイチャイチャ、甘々、癒やされたりするシチュエーションボイス台本を書きます。
演じても聞いても読んでもニヤニヤ、テレテレ、すやすやしていただければ幸いです。
台本随筆以外では、小説投稿サイトへの小説投稿、同人活動をしております。いずれもジャンルは恋愛ものです。
●演じていただいたときは利用実績の申請をしていただけると喜びます。またはご連絡、ご報告をX(Twitter)@ryu3toにいただけても喜んで拝見、拝聴させていただきたく思います。
有償販売利用の条件
当サイトの利用規約に準ずる
利用実績(最大10件)
雨竜三斗 の投稿台本(最大10件)