貴方は魔界出身の不死族の彼女と付き合っていた。人間界の娯楽に慣れ親しんだ彼女に、貴方は自分的に最も感動した本を渡すが、それを読んだ彼女の様子がだんだんおかしくなってきて…？

はー…面白かった！ね、君が紹介してくれたこの本、面白かった！ありがとね！


ん？えーっとね…やっぱり、メインヒロインが最後に主人公の心を救ってくれるとこがエモい！あたし、ちょっと感動して泣いちゃった！


まぁね～…人間界の娯楽って思ったより、楽しい！映画も漫画もゲームもアニメもドラマも当たりが多いし！いや～、魔界から越してきてよかった！君ともこうして付き合えたことだしね。えへへ♪


え？なになに？もっと感動できる本があるの？見たい見たい！ていうか、今見せて！今なら何読んでもいける気がする！


うん！じゃあちょっとだけ待ってる！へへ、どんな本なんだろ～？楽しみ～！


(彼が本を持ってくる)


あ、持ってきてくれた？ありがと～！じゃあ早速読んでみるね！


(本をめくり始める)


さー、彼氏おすすめの本はどんな話なんだろ～な～♪ ふふふ♪


(読み進めていくうちに、様子がおかしくなる)


……え？あれ？何、これ…え、いやいや、そんなまさか、ね…？


も、もうちょっと読み進めないと…け、結末はまだわからないし…うん…


(読み終えて、茫然自失となる)


……は？え、これで、終わり…？嘘でしょ…？


ね、ねぇ…この本って続きとかないの…？ほら、死んだ主人公が復活するとかさ…


…え？死んだら蘇らない？つ、つまり、ヒロインは主人公を看取った…ってこと？


あ、あぁ…！噓…嘘嘘！こんなの、救いがなさすぎるでしょ！ていうかこれ、MTR(※看取りの略語)じゃん！看取り本じゃん！君、なんてもの読ませてくれるの⁉ 感動モノだって聞いたから、すごく期待したのに！バカーッ！


(ビンタ)


無理…無理無理！看取りだけはマジで無理！何⁉ 死んだ彼氏との思い出を胸に生きていくって⁉ 大切な人とはずっと一緒に生きていきたいじゃん！主人公との死別で取り残される彼女さん、可哀想じゃん！この子、これからどうやって生きていくの⁉ ねぇ！


…は？こっ、これが感動できる…？涙まで流した…？え、好きな人との死別で感動って、ありえないんだけど…！


(深い深～いため息をつく)


ねぇ…君ってさ、あたしが不死族であることは知ってるよね？もし、自分が寿命を迎えたら、あたしに看取られたい？


そっか…わかった。じゃあもう遠慮はいらないかなっ…！


(押し倒す)


ねぇ…あたしね、君と付き合ってて怖いことがあるの…君がふとした瞬間に死んでるんじゃないかって…


君は全種族の中でも、最も脆弱な人族だから…人間って、ちょっと高い所から落ちたり、大きな鉄の塊にぶつかっただけで死ぬんでしょ？脆弱にも程があるし、君もそういうちょっとしたことで死んだらって思うと、すごく怖くて…！


だから…今決めた。君のことは身体でわからせた上で、魔界にお持ち帰りするって。魔界にある実家なら、不死薬もあるし…魔界自体は、人間が単独で暮らすには厳しすぎるけど、君の場合は問題ないよね？だって、あたしがそばで君を守るから。


やだよ…あたしは君を看取りたくない。初めて心から好きになった人だもん…死んだらそれは永遠の別れってことでしょ？そんなの耐えられない…！あたしは君と違って死ねないのに…！


君のことは死なせない…絶対、ぜーったい、看取ってなんかあげないんだから…！


大丈夫…あたしとずっと一緒に居れば、君のその価値観も変わるはずだから。MTRが感動モノだなんて、二度と言わせない…ちょっと荒療治になるけど、覚悟して？

・台本（ゆるボイ！）
【脳破壊】不死族の彼女に看取り本を読ませた男の末路…
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎