- ファンタジー
- 睡眠導入
- シスター
- 耳かき
公開日2025年04月05日 03:45
更新日2025年04月05日 03:45
文字数
3221文字(約 10分45秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
シスター(?)
視聴者役柄
迷い込んだ旅人
場所
深い森の小さな教会
あらすじ
森の奥で迷ったら、その教会を探すといい。
きっと彼女が、あなたを守ってくれるから。
「安心して、朝をお待ちください。
陽が登れば、何の苦もなく森の外に出られますから」
……もし、教会が見つからなかったら?
……そんなことは、知らなくていい。
きっと彼女が、あなたを守ってくれるから。
「安心して、朝をお待ちください。
陽が登れば、何の苦もなく森の外に出られますから」
……もし、教会が見つからなかったら?
……そんなことは、知らなくていい。
本編
(星の少ない、暗い、暗い夜の森)
(ぽつんと佇む教会を見つけ、戸を開く)
……ああ、やはり。
今夜はやけにフクロウたちがやけに騒がしかったので、どなたかいらっしゃるのではないかと予感しておりました。
どうぞ、こちらへ。
扉をしめて、中へお入りください。
(従う)
ようこそ、旅人。
名もなき教会へ。
……ああ、何もおっしゃらずとも、事情は承知していますよ。
道に迷って、気づけば森の中にいた。
歩いて歩いて、ここを見つけた。
そうなのでしょう?
……ふふっ。
いいえ、推理したわけでも、心を読んだわけでもありません。
この場所を訪れた誰もがそう言う。
ただそれだけのことです。
そして誰もが、ひとつ思い違いをしている。
あなたは……あなた方は、「迷った」のではなく、「迷わされた」のですよ。
(怪訝な目を向けると、シスターは小さく笑って)
失礼。
怖がらせてしまいましたか。
大丈夫ですよ。
あなたはここに辿り着いている。
この教会の中であれば、『彼ら』も簡単には手を出せません。
安心して、朝をお待ちください。
陽が登れば、何の苦もなく森の外に出られますから。
(シスターが立ち上がる)
ついてきてください。
2階に客間がありますので、ご案内します。
……本当なら、温かいお茶くらいお出ししたいところなのですが。
いかんせん場所が場所なもので、咄嗟には難しいのです。
なにとぞ、ご辛抱を。
(先導され、2階の小部屋へ)
こちらのベッドをお使いください。
狭い部屋ですが、寝具の質は悪くないはずですよ。
……ああ、それと。
できれば、早々に眠ってしまうことをお勧めします。
詳しい説明は省きますが……長々と目を覚ましていればいるほど、『彼ら』と鉢合わせる危険性が増してしまいますので。
……ふふ。
素直でよいお返事です。
が、そこまで怯えられると、いささか心苦しいですね。
どうか、肩の力を抜いてください。
ほんの僅かに可能性が上がるというだけで、この教会の中にいれば、滅多なことは起こりません。起こさせません。
しかしそれはそれとして、あなたも疲れているでしょうし、こんな何もない部屋の中で起きていてもお腹が空くだけですから、なんにせよ早く寝るのが1番の選択……とは、思えませんか?
……ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。
では、そのように。
もしお手伝いすることがあれば何でも言ってくださいね。
……といっても、これから眠りにつこうとするあなたに私がしてあげられることなど、せいぜい子守唄を歌うことと、あとは……うーん、強いてあげるなら、耳かきとか?
……はい?
……ええ、そうです。耳かき、と言いました。
いい睡眠導入になるそうですよ。私はしてもらったことがないので、聞いた話でしかありませんが。
……まあ。
そうも食いついてくるとは、予想外でした。
半ば冗談だったのに。
……いえいえ!
撤回する必要などありません。
ええ、喜んで、お力になりましょう。
道具を持ってきますので、少々お待ちください。
(一度シスターが退室し)
(ほどもなく、戻ってくる)
ただいま戻りました。
そうですね……ベッドに横になってもらいましょうか。
私の膝を枕がわりにして、眠くなったら、そのまま寝られるように。
(言われるがまま、膝枕に甘える)
……ふふ。
よくできました。
それでは、始めますね?
(右の耳かき開始)
……ふむ。
こうしていると、まるで小さい子どもをあやしているような気分になってきますね。
森の奥深くで暮らしているとこんな機会に恵まれることはまずありませんし、中々新鮮な体験です。
……痛く、ないですよね?
……それはよかった。
どうぞ、そのまま瞼を閉じて。
湧き上がる眠気に、身を任せてしまいましょう。
一応、そのためにやっているわけですからね。
……おやおや。
よろしいのですか?
質問などして。
おしゃべりをしていたら、いつまでたっても眠れませんよ?
……ふふ。
もちろん、冗談ですよ。
どうぞ。
なんでも遠慮なく聞いてください。
なんでも答える、とは約束しかねますが。
(『なぜこんなことを?』)
(尋ねると、シスターは目を細めて)
……ほう。
そのような問いをなさるということは……。
気づいていますね?
私が、人間と呼ぶには少々怪しい存在であると。
そのような気配を誤魔化すのは得意なつもりだったのですが……どうやらあなたは、とてもよい目をお持ちのようだ。
正直、驚いていますよ。
正体を勘づかれたこともそうですが、それ以上に、分かっていながら何の疑いもなく耳かきをされているあなたの気楽さに。
……ええ、とても不思議だ。
恐ろしくはないのですか?
自分がどれほど無防備な姿を晒しているか、理解しているのですか?
……そう……ですか。
あなたがそう言うのであれば構わないのですが……無論、私にあなたを傷つけるつもりは毛頭ありませんし、信頼してもらえることは、素直に嬉しいので。
おかしな人ですね、あなたは。
……っと、失礼。
話がそれてしてしまいました。
質問にお答えしましょう。
しかしその前に、姿勢を変えられますか?
こちら側は、もう掃除するべき箇所がなさそうですので。
(左の耳かき開始)
とは、いうものの。
もったいつけるほどの事情なんてないのですがね。
他にやることがないから。
言ってしまえば、それだけのことでしかありません。
あなたが既に察しているように、私はいわゆる『混ざりもの』……人間ではないけれど、あなた方が悪魔や怪物とよぶような者とも違う、中途半端な紛いもの。
……ありきたりな話ですけれど。
往々にして嫌われるんですよね、そういう存在って。
村外れの井戸端に捨てられていた私を拾った老夫婦は、私を人間同様に扱って育ててくれましたけれど、誰も彼もがそう振る舞えるわけはない。
成長するにつれて違いが目立ち、周囲から向けられる視線はだんだんと白々しくなり、投げられる石の数も大きさも増えていく。
やがて追われるように村を出て、行くあてもなく、落ち着く先もなく、風の吹くまま放浪の日々を送るようになる……。
……こんなものは、なにも珍しい話ではありません。『混ざりもの』としてこの世に生を受けた者ならば、私に限らず、誰でも似たような物語を背負っているものです。
けれど、だからといって、生きるのを諦めるわけにはいきません。
何とかして探すしかないんです。
生きる意味とか、自分の居場所とか、そういうありきたりなものを。
……色々、試しましたよ。
行商人の真似事をしてみたり、吟遊詩人のふりをしてみたり。
いっそ、人間であることを捨ててバケモノらしく生きてみようか、なんて考えたこともありました。まあ、人の子として幼少期を過ごした私には無理な話でしたけれど。
失敗に失敗を重ねて、出会いや別れ、発見や後悔を繰り返して……長い、長い時間をかけて、私は私の在り方をみつけました。
暗闇の森の、小さな教会。
迷える旅人の、一夜の隠れ家。
自分でも不思議なくらい居心地がいいんです。
時折やってくる迷い人に軒を貸すだけの、今の生活が。
……もしかすると。
嫌いだ、嫌いだって散々言われてきましたから、ありがとうって言われたかった……のかも、しれませんね。
……ああ、いけない。
回答するだけのつもりだったのに、つい、長話を。
退屈はしていませんか……おや?
……あらあら。
もう、眠ってしまっていたのですね。
(左の耳かき終わり)
……さて。
見ているのでしょう?
フクロウたち。
起きている人間しか襲わない……それが、私とあなた方の古い約束でしたね?
今宵は大人しく引き下がりなさい。
そうすれば今度また、あなた方の好きな干し葡萄のクッキーを焼いてあげますから。
(近くの木々から、何かが飛び去る)
……ふふ。
可愛い子たちですね。
(旅人の頭をそっと枕に下ろして、シスターは立ち上がる)
それでは。
おやすみなさい、幸運な旅人さん。
(明かりを消して、部屋を出ていく)
(真っ暗で静かな森の奥)
(夢も見ないまま、朝を待つ)
(ぽつんと佇む教会を見つけ、戸を開く)
……ああ、やはり。
今夜はやけにフクロウたちがやけに騒がしかったので、どなたかいらっしゃるのではないかと予感しておりました。
どうぞ、こちらへ。
扉をしめて、中へお入りください。
(従う)
ようこそ、旅人。
名もなき教会へ。
……ああ、何もおっしゃらずとも、事情は承知していますよ。
道に迷って、気づけば森の中にいた。
歩いて歩いて、ここを見つけた。
そうなのでしょう?
……ふふっ。
いいえ、推理したわけでも、心を読んだわけでもありません。
この場所を訪れた誰もがそう言う。
ただそれだけのことです。
そして誰もが、ひとつ思い違いをしている。
あなたは……あなた方は、「迷った」のではなく、「迷わされた」のですよ。
(怪訝な目を向けると、シスターは小さく笑って)
失礼。
怖がらせてしまいましたか。
大丈夫ですよ。
あなたはここに辿り着いている。
この教会の中であれば、『彼ら』も簡単には手を出せません。
安心して、朝をお待ちください。
陽が登れば、何の苦もなく森の外に出られますから。
(シスターが立ち上がる)
ついてきてください。
2階に客間がありますので、ご案内します。
……本当なら、温かいお茶くらいお出ししたいところなのですが。
いかんせん場所が場所なもので、咄嗟には難しいのです。
なにとぞ、ご辛抱を。
(先導され、2階の小部屋へ)
こちらのベッドをお使いください。
狭い部屋ですが、寝具の質は悪くないはずですよ。
……ああ、それと。
できれば、早々に眠ってしまうことをお勧めします。
詳しい説明は省きますが……長々と目を覚ましていればいるほど、『彼ら』と鉢合わせる危険性が増してしまいますので。
……ふふ。
素直でよいお返事です。
が、そこまで怯えられると、いささか心苦しいですね。
どうか、肩の力を抜いてください。
ほんの僅かに可能性が上がるというだけで、この教会の中にいれば、滅多なことは起こりません。起こさせません。
しかしそれはそれとして、あなたも疲れているでしょうし、こんな何もない部屋の中で起きていてもお腹が空くだけですから、なんにせよ早く寝るのが1番の選択……とは、思えませんか?
……ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。
では、そのように。
もしお手伝いすることがあれば何でも言ってくださいね。
……といっても、これから眠りにつこうとするあなたに私がしてあげられることなど、せいぜい子守唄を歌うことと、あとは……うーん、強いてあげるなら、耳かきとか?
……はい?
……ええ、そうです。耳かき、と言いました。
いい睡眠導入になるそうですよ。私はしてもらったことがないので、聞いた話でしかありませんが。
……まあ。
そうも食いついてくるとは、予想外でした。
半ば冗談だったのに。
……いえいえ!
撤回する必要などありません。
ええ、喜んで、お力になりましょう。
道具を持ってきますので、少々お待ちください。
(一度シスターが退室し)
(ほどもなく、戻ってくる)
ただいま戻りました。
そうですね……ベッドに横になってもらいましょうか。
私の膝を枕がわりにして、眠くなったら、そのまま寝られるように。
(言われるがまま、膝枕に甘える)
……ふふ。
よくできました。
それでは、始めますね?
(右の耳かき開始)
……ふむ。
こうしていると、まるで小さい子どもをあやしているような気分になってきますね。
森の奥深くで暮らしているとこんな機会に恵まれることはまずありませんし、中々新鮮な体験です。
……痛く、ないですよね?
……それはよかった。
どうぞ、そのまま瞼を閉じて。
湧き上がる眠気に、身を任せてしまいましょう。
一応、そのためにやっているわけですからね。
……おやおや。
よろしいのですか?
質問などして。
おしゃべりをしていたら、いつまでたっても眠れませんよ?
……ふふ。
もちろん、冗談ですよ。
どうぞ。
なんでも遠慮なく聞いてください。
なんでも答える、とは約束しかねますが。
(『なぜこんなことを?』)
(尋ねると、シスターは目を細めて)
……ほう。
そのような問いをなさるということは……。
気づいていますね?
私が、人間と呼ぶには少々怪しい存在であると。
そのような気配を誤魔化すのは得意なつもりだったのですが……どうやらあなたは、とてもよい目をお持ちのようだ。
正直、驚いていますよ。
正体を勘づかれたこともそうですが、それ以上に、分かっていながら何の疑いもなく耳かきをされているあなたの気楽さに。
……ええ、とても不思議だ。
恐ろしくはないのですか?
自分がどれほど無防備な姿を晒しているか、理解しているのですか?
……そう……ですか。
あなたがそう言うのであれば構わないのですが……無論、私にあなたを傷つけるつもりは毛頭ありませんし、信頼してもらえることは、素直に嬉しいので。
おかしな人ですね、あなたは。
……っと、失礼。
話がそれてしてしまいました。
質問にお答えしましょう。
しかしその前に、姿勢を変えられますか?
こちら側は、もう掃除するべき箇所がなさそうですので。
(左の耳かき開始)
とは、いうものの。
もったいつけるほどの事情なんてないのですがね。
他にやることがないから。
言ってしまえば、それだけのことでしかありません。
あなたが既に察しているように、私はいわゆる『混ざりもの』……人間ではないけれど、あなた方が悪魔や怪物とよぶような者とも違う、中途半端な紛いもの。
……ありきたりな話ですけれど。
往々にして嫌われるんですよね、そういう存在って。
村外れの井戸端に捨てられていた私を拾った老夫婦は、私を人間同様に扱って育ててくれましたけれど、誰も彼もがそう振る舞えるわけはない。
成長するにつれて違いが目立ち、周囲から向けられる視線はだんだんと白々しくなり、投げられる石の数も大きさも増えていく。
やがて追われるように村を出て、行くあてもなく、落ち着く先もなく、風の吹くまま放浪の日々を送るようになる……。
……こんなものは、なにも珍しい話ではありません。『混ざりもの』としてこの世に生を受けた者ならば、私に限らず、誰でも似たような物語を背負っているものです。
けれど、だからといって、生きるのを諦めるわけにはいきません。
何とかして探すしかないんです。
生きる意味とか、自分の居場所とか、そういうありきたりなものを。
……色々、試しましたよ。
行商人の真似事をしてみたり、吟遊詩人のふりをしてみたり。
いっそ、人間であることを捨ててバケモノらしく生きてみようか、なんて考えたこともありました。まあ、人の子として幼少期を過ごした私には無理な話でしたけれど。
失敗に失敗を重ねて、出会いや別れ、発見や後悔を繰り返して……長い、長い時間をかけて、私は私の在り方をみつけました。
暗闇の森の、小さな教会。
迷える旅人の、一夜の隠れ家。
自分でも不思議なくらい居心地がいいんです。
時折やってくる迷い人に軒を貸すだけの、今の生活が。
……もしかすると。
嫌いだ、嫌いだって散々言われてきましたから、ありがとうって言われたかった……のかも、しれませんね。
……ああ、いけない。
回答するだけのつもりだったのに、つい、長話を。
退屈はしていませんか……おや?
……あらあら。
もう、眠ってしまっていたのですね。
(左の耳かき終わり)
……さて。
見ているのでしょう?
フクロウたち。
起きている人間しか襲わない……それが、私とあなた方の古い約束でしたね?
今宵は大人しく引き下がりなさい。
そうすれば今度また、あなた方の好きな干し葡萄のクッキーを焼いてあげますから。
(近くの木々から、何かが飛び去る)
……ふふ。
可愛い子たちですね。
(旅人の頭をそっと枕に下ろして、シスターは立ち上がる)
それでは。
おやすみなさい、幸運な旅人さん。
(明かりを消して、部屋を出ていく)
(真っ暗で静かな森の奥)
(夢も見ないまま、朝を待つ)
クレジット
ライター情報
シチュエーション台本やASMR台本を主に書いています
シチュボというかボイスドラマというか、リアリティラインは微妙な塩梅ですが、楽しんでいただけると嬉しいです
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