風邪をひいたあなたのもとに、向かいのマンションから一人の女性が看病させてほしいとやってきました。
彼女はあなたの部屋を双眼鏡で覗いていたストーカーでした。

(インターホンの音)
あ、えっと、すみません。
向かいのマンションの者なんですが、その、大丈夫ですか？
体調があまりよくなさそうですが……

あ！いや、その、いつものようにあなたの部屋を双眼鏡で覗いたら、ベッドの上で辛そうにしているのが見えたので。その、居ても立ってもいられず来てしまいました。ごめんなさい。

か……看病させていただけたらと。
上がってもよろしいでしょうか？

ダメ、ですよね。
当然です。向かいのマンションからいつも見ている女なんて気持ち悪くて部屋に上げたくないですよね。
帰ります。お大事になさってくださ……

(玄関を開ける)

え？上がっていいんですか？

(誰も頼れなくて困ってた)

誰も頼れる人がいないとは言え、私なんかでいいんですか？

い、いえ！拙いとは思いますが全力で看病させていただきます！
ではお邪魔します。

来る途中でスポーツドリンクとか、冷えピタとか買ってきました。
こういうの冷蔵庫の中にありませんでしたよね？

まずは体温を計りますよ。
体温計、脇に挟みますね。
38度、だいぶ熱ありますね。

次は体を拭きます。
パジャマ、捲ってください。

(小声で)
いつも双眼鏡越しだったあなたの体が目の前に！
あれ？これひょっとして今すごくいやらしい状況なのでは!？
ダメダメ、しっかりして私！
ちゃんと看病するって決めたんでしょ！

ふ、拭きますよ。
痒いところとかありませんか？
よいしょ、よいしょっと。
すっきりしましたか？

じゃあ、冷えピタ貼りますね。
おでこ見せてください。
フィルムを剥がしてっと。
貼りますよ。

(小声で)
貼るときキュッて目をつむっててかわいい！
まさかこんな一面があるなんて！

え？いいえ、なんでもないです！

お薬はもう飲みましたか？
まだですか。
食欲はどうですか？
少しお腹がすいてるんですね。

では、お粥作りますのでしばらく待ってください。
寝てていいですからね。

(しばらくして)

お目覚めですか？
よく眠ってましたね。
お粥できたので、食べますか？
はい、じゃあよそってきますね。

食べさせてあげますので、上半身だけ起こせますか？

ふーふー、はいあーん。

(なんで手が震えてるの？)

すみません、緊張で手が震えちゃって。
食べにくいですよね。

次は落ち着いてやりますから。
すーはー、すーはー。
よしっ。

ふーふー、あーん。
おいしいですか？
よかった、お口に合わなかったらどうしようかと。

はい、お粗末さまでした。
お薬飲んでくださいね。

また眠くなってきましたか？
それでは私はもう帰りますね。

(ありがとう)

いいえお礼だなんて……私がしたくてしたことですから。
明日は朝に体調確認のお電話を差し上げますので出てくださいね。
おやすみなさい。

・台本（ゆるボイ！）
気弱なストーカーに献身的に看病される
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
メロンフランスパン