ハロウィンの日の朝、彼女からの急な電話を受け家に向かうあなた。
着いた先で目にしたのは、悪魔になった彼女の姿でした。

(電話が鳴る)
あ、おはよう……
あのね、いきなりで申し訳ないんだけど、ちょっと私の家まで来てくれないかな。
緊急事態なの。

(部屋のドアをノックする)
いいよ、入って。
ごめんね、来てもらっちゃって。
でも、とても家から出れそうにないから……

(どうした？)

えっと、その、私の姿見ても笑わない？

(笑わない)

言ったね。
じゃあ……

(ハロウィンの仮装か？)

ハロウィンの仮装かって！？
仮装じゃないよ、本物だよ！

矢印みたいな尻尾は、この通り思い通りに動かせちゃうし！
こめかみらへんから、なんか角生えてるし！
このコウモリみたいな黒い羽のせいで、ちゃんと服着れないし！

なに？　その疑いの目は。もしかして、私がウソついてるとか思ってない？
いいよ。そこまで疑うなら、触ってみてよ。
やさしく、ね？

ひゃっ！　し、尻尾、くにくにしないで……
なんか、体がビクッってしちゃう。

ねぇ、手つきがだんだんいやらしくなってきてない？

はい、これ以上はダメ！
ダメったらダメ！

これで本物だってわかったでしょ？

え、翼？　飛べるのかって、そういえばやってみてない。

どうやるんだろ。
こうかな。
(翼をはためかせる音)

おおっ！　浮いた！　飛べた！
すごっ……
(天井に頭をぶつける音)

痛ったぁ！
て、天井に……頭をっ。

(時間経過)

うん、大丈夫。だいぶ痛み引いた。

これからどうしよう。
こんなんじゃ外出れないよ。

今日くらいは大丈夫だろって、そりゃハロウィンだからね。
こんな格好してる人もいるだろうし、浮かれてるくらいにしか思われないだろうけどさ。

裏を返せばそれって、ハロウィンの日にしかお出かけできないってことじゃん！
いやだよ、そんな生活！

お母さんに訊いてみたらって、何か知ってるかなぁ？
だって、たぶん人間だよ？　お母さん。

うーん、でも、相談できる人と言ったら君以外ならお母さんしかいないか。
ちょっと行ってくるね。

(扉を開けて出ていく)

(扉を閉じる)
結果から言うね。
お母さん、悪魔だった。
お父さんに惚れたから、一緒にいるために人に化けて暮らしてきたんだって。

お母さんびっくりするかなって思ったんだけど、私の姿を見て嬉しそうに『そろそろだと思ってたのよ』なんて言うものだから、こっちがびっくりしちゃったよ。

これからは人に化ける方法とか、悪魔の力の使い方とか教えてもらうつもり。

うん、人に化ける方法があって良かったよ。
そうでなかったら、今まで通りに生活できなかっただろうし。

お母さんが言うにはそんなに難しくないって。
明日からその練習で、二、三日風邪ひいたってことにして学校休むけど、プリントとかよろしくね。

このことは君と私だけの秘密だからね？
絶対誰にも言っちゃだめだから。

誰にも信じてもらえない？
それもそっか。言ったらきっと変な人扱いされるよね、彼女が悪魔だったなんて。

はぁ、ちょっと疲れちゃった。
ベッドで横になろうかな。

(誘うように)
君も一緒に寝よ？

へぇ、来るんだ。
いつもなら『バカじゃないの』とか言って断るのに。

ぎゅーっ。
へへ、ゆーわく、大成功。

お母さんにさっき教わったんだ～。
悪魔は人間を誘惑するものだからって。

ね？　事実を知ってもベッドから出ていこうなんて思わないでしょ？
それが私の誘惑にかかった証拠。

初めてなのに、こんなにうまくいくなんて。
私、才能あるのかな？

え？　今じゃノリノリだなって？

うん、人としての生活がちゃんとできるってわかって、この先の不安とかなくなったから。
むしろ、こんな感じで君ともっとイチャイチャできるって考えたら……ふふっ。

これからは君のこと、いっぱいゆーわくしちゃうから。
悪魔な私をこれからもよろしくね。

・台本（ゆるボイ！）
ハロウィンの日に彼女は悪魔になった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
メロンフランスパン