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看護師さんが、夜中に耳かきをしてくれる話
written by チョンマー
  • 耳かき
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公開日2024年12月01日 23:43 更新日2024年12月01日 23:43
文字数
2625文字(約 8分45秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
看護師
視聴者役柄
患者
場所
病室
あらすじ
僕は部活中に、大ケガを負って入院することになった。

手術は無事成功したけれど……腕が全く動かせないのがかなり不便で、練習もしばらくできないのが心配だ。

色々と悩む夜を過ごしていたある日、耳の中がどうしてもかゆくて仕方なくて、痛い腕を無理にでも動かそうとしたら……担当の看護師さんがやってきて。
本編
こんばんは。体の調子はどうですか?


って、ちょっと? ちょっと待って。
なんで腕を動かそうとしてるんですか! あなた、病人なんですよ!

ほら、いわんこっちゃない……。
大丈夫ですか?


それにしても、どうして腕を動かそうとしてたんです?


耳がかゆくて、我慢できなかった……。

ああ……その気持ち分かります。
普段、かゆいところをすぐに掻けるのに、腕をケガしてたりしてると、かゆさが気になって仕方ないですよね。


でも、絶対安静です。
ケガが悪化したらどうするつもりなんですか?


かゆくて眠れない?

もう……しょうがないですね。
少し、明るくしますよ。


はい、そして、耳の中、見せてください。


恥ずかしがらずに! ほら。


ああ……これは、だいぶ溜まっているね……。

ケガする前にも、耳掃除するの、サボっていたでしょ?
でなきゃ、こんなになるまで溜まらないですよ?


でも、こんな状態じゃ、耳がかゆいのも分かります。
このまま眠れない夜を過ごすのも、ケガした腕を動かそうとするのも困りますし……。

そうだ。私が耳かきをやってあげます。


ええ、私が常備してる応急手当セットのなかに、綿棒があるので。
まあ、本当は耳掃除用ではなくて、消毒液を塗る用なんですけど。


すこし、体を起こしてもらえますか?


ありがとうございます。
では、ベッドに失礼して。


本当は、看護師が患者のベッドの上に座るなんて、したらダメなんですけど……。
黙っててくださいね?


ごめんなさいね。
他の患者がいる以上、この病室の明かりはつけられないし、明かりが枕元にある以上、このあたりが一番よく見えるの。

だから、はい。
私の膝の上、おいで。

あっ、横は向かないでね。腕が下敷きになるから。
首だけ横を向くように。


騒がないの。他の人が起きちゃうでしょ?
それに、耳のかゆみ、どうにかしたいのなら、こうするしかないの。


そう、いい子。
それじゃ、お耳、失礼しますね。

(片耳の掃除が始まる)

まずは、入り口を。
優しくこするように……。

ゆっくり奥の方へ。
少しずつ、少しずつ。丁寧に……。

どうですか?
かゆいところがあったら、教えてくださいね。そこを重点的にやりますから。

ここ?
ふふっ、当たりなんですね。
暗いですけど、表情で、すぐにわかります。


このあたり、かなり溜まってるところでもあるので。
しっかり、取っていきますからね。


耳はもちろんですけど、腕や、首は大丈夫ですか?
腕に負担かけないように、この体勢になってもらっているけれど、首とか、きつくないかな?


やっぱり。
それじゃ、急いでしないとね。

君が早く眠れるように。


おっ、大きいの、見つけた。
首を曲げてるの辛いと思うけれど、我慢してね。

ゆっくり、ゆっくり……。
こうやって、周りから……

よし、取れた!

最後に。
ふぅっ~~

あっ、ごめんね。ちゃんと言っておかないとだった。
体跳ねてたけれど、腕は大丈夫?


よかった。
何か耳の中をぬぐうのがあればよかったんだけど、ガーゼとかだと詰まりそうだったし。
息で代用ってことで、ごめんね。


でも、どう?
耳、スッキリした?


スッキリしすぎて、反対の耳が気になって仕方がない?
それは急いでやらないとだ。


首、大丈夫?
少し休憩しても……。


大丈夫?
それなら、反対、お願いします。


こっちも、いっぱいだね。
それじゃ、綿棒で綺麗にしていくね。


(もう片方の掃除が始まる)


どうして、ここまでするのか、って?

うーん、看護師だから? にしてはやりすぎって話だよね。
うん、気持ちは分かる。私が君の立場なら、同じ疑問を持つと思う。


……なんかね、放っておけなかったの。

覚えてるかな?
君が緊急で搬送されているとき、近くにいた看護師も、私だったんだ。

君ってば、ケガとか、自分の痛みとかよりもまず「僕の腕、早く治りますか?」って、そればっかり聞いてきたよね。

「大事な試合があるんです」、「どうしても出たいんです」って。
それほどまで、スポーツに真剣な学生なんて、初めて見たから。思わず心打たれちゃって。

だから、だと思う。
君のこと、ここまで面倒見るの。


あのね、内緒にしてほしいんだけど。
あの時、私、「絶対、治しますから、約束します!」なんてこと言ったけれど、あとでドクターにちょっと言われたんだよね。

「治ります」と励ますのはいいけれど、私が治療するわけでもないのに「治します」は言わない方がいいって。
治らなかったときに、君は責任とれるのかって。

ああっ、もちろん心配しないで。
適切な処置が済んだから、あとは安静にするだけだから。ちゃんと治るよ。間違いなく。


でもね、私、悔しかった。
看護師という立場じゃ、君の、治してほしいという気持ちに、応えきれないんだなって。


そんなことない?
いつも気にかけてくれてるのは、伝わってる?

そっか、ありがとう。
患者にそんなこと言わせるなんて、やっぱり、看護師としてはダメダメだね。
もっと、頑張らないと。


せめて、君の耳だけでも、しっかり私が手当てしないとね。
君の腕が、早く元通りになるためにも、ね。

やっぱり、心配?
そうだね。今、腕は全く動かせない状態だもんね。
きっと毎日のように練習してたのに、それもできていないのも、心配だよね。

今は、練習できていないことが、不安でいっぱいかもしれない。
ケガが上手く治らなかったら、昔のようにうまく腕が動かせなかったら。そんな不安でいっぱいだと思う。


でも、大丈夫だよ。
君はまだ若いんだもの。少しぐらいのブランク、どうとでもなるよ。

あれだけの熱意があったんだもの。
絶対、ブランクなんてすぐに戻せるよ。
ドクターじゃないけれど、君の熱意を間近で見ていた私が保証するから。


うん。うん。怖いよね。不安だよね。
大丈夫だよ。私が何度だって、大丈夫って伝えてあげる。

君の不安が、無くなるまで。ずっと。


うん、いいよ。
ちょうど耳掃除も終わったから。体、起こしても大丈夫。

ほら、甘えておいで。


よしよし。いい子、いい子。
今まで、弱音を吐かずに頑張ったね。
でも、いいんだよ。ここでなら。

いっぱい、いっぱい、今のうちに涙を流しておこう?



もう、泣き止んだ?
目元、冷やさなくても平気?


うん、もう、耳はかゆくないでしょ?

それなら、ぐっすり眠れるね。

今はゆっくり寝て、回復に専念しよう?
何もできないもどかしさは、多分、まだまだこれからもやってくると思うけれど、遠慮なく私に打ち明けてもらって構わないから。


どういたしまして。
それが、看護師の役目ですので。
あとは……君の熱意に心打たれた、一人の人間としての、ちょっとしたおせっかいということで。


おやすみなさい。
頑張って、早くけがを治そうね! 男の子!
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
看護師さんが、夜中に耳かきをしてくれる話
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
チョンマー
ライター情報
pixivでフリー台本を書いています。
甘々な話も、ちょっとエモいお話も、どっちも好きで書いています。
元々小説畑の人間なので、どこか物語染みてるところがあるかも……。
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