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人魚伝説に憧れたスキュラ…… もうこれであなたは海から出られない
written by 泣きんぎょ
  • 嫉妬
  • ファンタジー
  • 純愛
  • NTR
  • ヤンデレ
  • 人外 / モンスター
公開日2021年07月05日 23:15 更新日2021年07月05日 23:15
文字数
10841文字(約 36分9秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
スキュラ
視聴者役柄
惚れられる青年
場所
あらすじ
スキュラの女の子は罠にはまり動けなくなってしまう
 それを男の子に助けられて、彼の何気ない一言に自分がタコの足であることを気にしていた彼女は彼に段々と引かれてしまう。
 逢瀬を重ね、段々と仲良くなっていく二人。
 心は彼の元にあった。
 しかし、彼の心はそこにはなかった。
 楽しそうに人間の女の子と遊ぶ彼。
 そのことを彼女は友人から知らされてしまう。
 嫉妬と悲しみに狂い彼女はついに凶行に走る。
 その、女のものとなってしまった彼の心を手に入れるために
本編
本編

「うっ、うぐぅ……いたたた、参ったなぁ。網に、引っかかっちゃったぁ……」

「ぁ、お~い!そこの人~!ごめんなさいっ!網に引っかかってしまって動けないの~! 申し訳ないんだけど、ちょ~っと助けてくれな~い?」

「あ、よかった……ありがと。そこの端っこの方をちょっと切ってくれたら何とかなると思うから」

「っ!だ、だめっ!あんまり、近寄らないでっ!」

 焦ってつい口にする感じで言い
 ハッとしたように


「……あ、えと、ごめんなさい。その~、ほら?君まで網にかかっちゃったらその、本末転倒だからさ? それに……えっと、ぅう、ごめん。助けを求めておいてこういうこというのなんだけど」

「あんまり、近寄られたくないんだ」

「見られたくない、っていうか、さ……ごめん」

「本当に!君がどうこうってわけじゃなくってね!? その、私が、ちょっと、人に見られるのが嫌っていうか……うん、個人的な事情っていうか、さ」

「その……ごめんなさい。察して、欲しいな?」

「って、ちょ!言った傍から、何でこっち来るの!?」

「あ、うう、そ、そうだけどぉ……絡まってる根元からどうこうするのが一番楽だけどっ!でもっ!私は、本当に、端っこをちょっと切ってくれれば!それでっ!」

ザパンッ、と水から何かが出てくる音

「あ、はは……見られ、ちゃった……せっかく、上半身だけだから誤魔化しきれるって思ったのに」

「うん、そうだよ……私、人間じゃないの」

「人魚……それも、スキュラって呼ばれる種類でね?」

「……はは、は、幻滅したでしょ?」

「下半身に、こんな醜い蛸の足が付いてるんだもん……そりゃ、そうだよ」

「人魚って言われるとさ、皆、何かすっごい美化してお姫様みたいな感じを想像してるのにさ……私、こんなだから、人に、見られたくなくって……今まで、何度も化物って言われてきたから」

「ごめんなさい……本当に、騙すつもりは、なかったの」

 網を切断する音

「……って、あの?聞いてる?」

「私、結構、真面目に深刻な告白をしたと思うんだけど……」

「え、ええ!? 興味ないって!?」

「うぅ、それじゃ、私のあの決死の告白は何だったのよぅ……ぅう」

「……ぁ、うん。確かに、これならもう動ける、かも」

 水の音

「あ、取れた取れた!ありがと~!これで海に帰れるよ~♪」

「へへへ、それじゃあ……えと、親愛の証に、握手、しない?」

「その……私の足を見て、怖がらなかったの、君が初めてだったから」

 握手の音

「わわ、ありがと!この恩は一生忘れないからっ! 人にも格好よくて優しい人は居るんだねっ♪」

「……でも、ちょ~っと、気になったんだけど……私のこと、怖いと思わなかったの?」

 少し待って

「……あ、ははは、は。どうでもよかったって、凄くはっきりと言い切るんだね? 君」

「そうだね……確かに、助けを求めたね。でも、それが?」

「ふぇ? 困って助けを求めている人の足がどうこうなんて、関係ない?」

「わ……わぁ……すっごい……すっごいっ、格好いいかもっ!」

「そっかぁ……助けを求めている女の子であることに、変わりない、か」

「うんっ♪ありがとっ」

「私、何だかすっごい救われたかもっ!」

「そうだよね!足が蛸でも、そんなこと気にしなくてもいいよね?」

「うん……うんっ!」

「それじゃ、私帰るから!」

「今日は本当にありがとっ!」

「また……今度、色々と話せたら、嬉しいな? なんて……たはは」

「それじゃバイバイっ!」

 ザパンと水に入る音

 場面転換

「あっ!あの時のっ!やほやほ~!また会ったね~!」

「うん♪昨日ぶりだねっ」

「いやぁ~、まさかこんなに早く会えるとは思わなかったな~……ふふ~ん、話したいと思う私の心の力に魔力が宿ったかなぁ? なんちゃって、そんなのないけど」

「でも、うん、話したいな~とは思ってたから」

「ねえねえ、昨日もこれくらいの時間でここで会ったけど、ここよく来るの?」

「……ふ~ん、そうなんだ。仕事行くのにここ通るんだ?」

「私もね?ここはいつもの遊泳ルートに入っててさ? 毎日来るんだ」

「って言っても、こっちは水中だけどね?」

「そっかぁ、っていうことは毎日知らない間にここですれ違ってたってことなのかな? 何か、変な感じだね~」

「……あ、仕事の時間は大丈夫? 今から行くんでしょ? 私は、もうちょっと話してたいんだけど……」

「……へぇ、いつも早起きしてるんだ? なら、ちょっとくらいなら大丈夫だね? ありがと♪」

「私ってさ、こんな足だから……今まで、その……うん、こういうと何だか自惚れっぽくて嫌なんだけどさ。私って人間基準で見たら結構美人に見えるらしいのよ」

「でさ、海に居るから人魚だろう、なんて近寄ってきて……うん、そうだね~。人魚伝説、ってのも良くなかったのかもね……私、海辺で歌を歌うのが結構好きでよくやってたんだけど、それで……その伝説に惹かれた人たちとかも来ちゃって」

「あ~、うん、そうそう。人魚の姫君がさ、王子様と恋に堕ちて……それで、色々あるんだけど最終的には王子様のキスで人の足を手に入れて幸せになるって話」

「……そんなこと、あるわけないのにね」

「でも、私からしたら憧れだったなぁ……私、この足、好きじゃないから」

「人になって、素敵な恋が出来るならどんなに素敵だろうって、ずっと思ってた……人魚から、人になんてなれないのに」

「うん、あの伝説は嘘っぱち。人からしたらどうかは分からないって言うかもしれないけどさ? 私たちからしたらもう一目瞭然だよ。だって、人に、そんな不思議な力はないもの」

「ん~~~……でもまぁ、身体の構造的にそのままでも私たち交配は可能だから、人と交わり続けることで段々と人魚の因子が失われていき、遺伝子侵略が起きたと考えればないことでもないかと……案外、この伝説ってその辺りが真実かもしれないね?」

「……ん?何言ってるか分からなかった?」

「そっかぁ、でもまぁいっか。別にそんな大した話でもないしね」

「昔のことを今を生きる者たちがどう想像しようとそれは自由ってことさ~、真実がどうかは別としてね?」

「まぁ、それでさ……話を戻すけど」

「うん、何か近づいてくる男の人たち沢山いたんだぁ」

「綺麗な歌声ですね? 姫?」

「なんて、いかにも作ったような声で言ってさ~!私は姫じゃないって~~のっ! ただの、一般人魚でしかないんだから……そりゃ、蛸足だけど……スキュラだけど」

「でまぁ、後はもう想像通り」

「私の足を見てさ……化物ッ!って、勝手に近づいてきたくせに罵るんだよ? ひどくないっ!?」

「それで、切りかかられたことだってあったし……魔法を使われたことも……はぁ、私って何て醜いんだろう、ってそう思ったよ……」

「ぇ?あ~、うん。別に大怪我とかはしなかったよ? 水の中に足を踏み入れて声を掛けてきてたからさ、誰も彼も水に足を取られてたし、魔法防御力だって私たち結構高い方だからさ」

「ほら?人魚って水中で生きていかなきゃならないからさ? 水圧で潰されないように、とか呼吸が出来るように、とか日常的に色々と魔法を使ってるもんだからさ。陸に居る人たちとはそこらへん桁違いっていうかさ」

「……ぇ?初耳だった? そう、なんだ~……私にとっては常識だから当然知ってるもんだと……」

「だってほら? よく見てよ?」

「私たち、エラないじゃない? 人と同一の身体を持ち合わせてるからさ、肺呼吸なんだよ。それに、水圧だって……あ~、まぁ、確かに深海族みたいなそこらへん適応しちゃった種族とかも居るけどさ? 私たちはそうじゃないから」

「陸との交流を完全に断っているわけじゃないからさ、人の身体を保てないと困るのよ。深海に適応しすぎると逆に陸の方には上がれなくなるしね」

「まぁ、そんなわけで、私たちは魔法のスペシャリストってわけ! 正直なところ言うと、その辺りはエルフにも引けは取らないんじゃないかな~って思うけど……まぁ、実際に試したことはないし、試したくもないし……」

「歌声だったら、勝負してみたいな~って思わなくもないんだけどね?」
 
 相手に問いかけられた感じで


「……うん、歌は好き。多分、大概の人魚がそうなんじゃないかな? だから、人魚伝説、なんてものもあるんだよ」

「誰も居ない大海原でさ……満天の星空と海面を照らす月の光とが、海面に反射する美しい光景の中でさ……そこを舞台に思いっきり歌うの」

「そうするとさ、まるで世界が私だけになったみたいでさ……お姫様じゃないけどさ、世界は自分を中心に回っているように思えてさ……気持ちいいんだ」

「人魚なら、誰でも知ってる優越感だね」

「ふふ、君も機会があったらやってみるといいんじゃないかな? 誰も居ないところで何も気にすることなく思いっきり歌うの!すっごく気持ちいいんだからっ♪」

「気にすることなく思いっきり歌うことの出来る優越感、味わったらきっとやめられないよ?」

 耳元で

「世界の主役は君なのだ~」

 離れて

「なんてね♪ でも、自分が主役に思えるってのは本当だよ?」

「だから……何だけど……あはは、これ言うのちょっと気恥ずかしいんだけど、さ」

「いつか、君だけを招いて満天の星空に中で歌を披露したいな?」

「……な~んて!なんてねっ♪ あ、ははっ、恥ずかしっ♪」

「どういう意味か、伝わっちゃったかな?」

「……ん~、そっか。うん、分からないんならそれでもいいんだ!」

「ほら?もう結構話し込んじゃったし、行かないとまずいんじゃな~い?」

「うん♪ いってらっしゃ~い♪」

「ねえねぇ!今度は、帰る時に会えるかな? 私たち、その……友達……って言っても」

「ぁ!うん、言っていいんだ!ありがとっ」

「友達だからさ!またお話しようよっ! 君のお話とかも聞きたいしっ!」

「うん、ありがとっ♪ それじゃ、またね~。お仕事頑張って♪」

 少しだけ間を空けて
 恥ずかしそうに

「……あ、はは、それにしても伝わらなかった、かぁ……ん、ふふ、まぁ、伝わっちゃったら伝わっちゃったでちょっと、困ったかもしれないけど……」

 呼びかけるように

「ねぇ? 一人っきりの世界に、他の人を招くのって特別なことなんだよ?」


一話終了 複数構成にする場合はここで終了


「あっ!み~つけた!やっほ~!」

「お、おぉ~、こんなところでどうしたって……酷い言い草だね~」

「あっはは……実は、うん、この辺りで働いてるって言ってたからさ~? 来てみたら会えるんじゃないかな~、なんて」

「えと、迷惑、だった?」

「……あはっ!そっか!ならよかった! 私もね!君に会いたいなぁって思ってたから!」

「うぅん、でもそっかぁ、海から川を伝ってここまで来たけど……そうだよねぇ、ここ、街中だから普通に誰かに見られちゃうかぁ」

「うぅん、私は気を付けてたつもりだったけど……そうだね、私、人魚の一種っていっても蛸足だもんね……こんなところ見られたら、困るか」

「そうだよね~、傍から見たら私なんて化物だもんね~」

「……ふぇ?あ、うん……そういうなら今言ったことは訂正するけど……何で? 今言ったことは厳然たる事実で……」

「あ、はは、そっか、私は化物じゃない、かぁ……ありがと♪そう言ってくれると、救われるよ♪」

「でも……見られると困ることには変わりないもんね?」

「ごめん、もうここには来ないから……迷惑をかけて本当にごめんね?」

「また……どうしよっかな? いつもあそこで会えたらいいけど、会えなかったときもあったし……」

「……ん? あ~、うん。人に見つからなさそうな洞窟とかそういうのよく知ってるけど……それが?」

「え? おお!いいの!そんな約束しちゃって!」

「毎日だって会いに行くよ?」

「毎日だって遊びにいくよ!」

「本当に、いいの?」

「わ、わわっ!やった!じゃあ今夜!洞窟で会おうねっ! 待ってるから!」

「ふふ、外からは見えづらいけど見晴らしが良くて……とっても素敵な景色の場所しってるからさ!」

「じゃあ、初めて会ったあの場所に集合ね?案内してあげるから!」

間を空けて

「ふんふんふん~♪友達っていいな~、楽しいな~♪」

「……お?来た来た! こっちだよ~!こっちこっち!」

「へへへ~、遅かったね? お仕事長引いちゃったの?」

「……あ~、そっか。予期せぬ事故かぁ……それは、防ぎようがないよねぇ。ご愁傷様」

「誰も怪我とかはしなかったの? 被害にあったりとか?」

「……ん、そっか。ならよかった」

「うん♪誰も傷つかないに越したことはないから♪」

「さ、行こ? 疲れたでしょ? 綺麗な景色を見ればきっと心も現れるから、ね?」

 少しだけ間を空けて

「ここはね~、周りからはちょうど見えないようになってる人魚たちの穴場なんだ~」

「たま~に友達が来るけどね?皆、良いところだねって言ってくれるし。見せるのが楽しみ」

「……ん? そうだよ~、私と同じ蛸足のスキュラだね。でも、スキュラだって人魚の一種だから、差別はよくないよ? って、そういうの君はしないって知ってるけど」

「ほら、着いたよ?」

「ここが私のお気に入りの場所だよっ♪」

「どう?綺麗でしょ? 月の光の反射する水面……それに照らされて淡く光る岩壁……ここに来るとね、心が洗われるんだ……」

「嫌なことがあってもね……そんなことは、この美しさの前にはちっぽけなことに思える」

「へへ、君にもお裾分けだよ?」

「どうかな?気に入って、くれたかな?」

「……え、へへ、そっか。なら、よかった」

「私、この場所が好きだから。大切な人にも、好きだって言ってもらえて、本当に……」

「……んぅ? 大切ってどういう意味って、それは……私の、初めての、人間のお友達だし」

「それに……えと……」

 小声で

「男の子と、仲良くなったのも、初めて、だから……」

 少し間を空けて

「え?よく聞かえなかったって、う、うぅ、もう言わないよ! は、恥ずかしいし!」

「……はぁ、何だか疲れちゃった……ね?そこに座ってお話しよ?」

「私、人の世界の色んなこと聞いてみたいな」

「代わりに私は人魚のお話してあげるから、ね? 話し合いっこしよ~よ」

「ふふふ、素直でよろしい♪」

「じゃ、月でも見ながら一緒に話そ~ね?」

 少し間を空けて

「へぇ、そうなんだぁ……人の世界じゃ、色んな組織があるんだねぇ」

「私たちの方はね、そういうのはないかな~」

「皆、自由に生きてる。やりたいときにやりたいことをやって、自由に海を泳ぎまわって……まぁ、皆が住む町はあるけどね? でも、皆思い思いに暮らしてる感じかな?」

「魔法の研究をしたり、薬の研究をしたり……責任があって規律正しいのは王族くらいかな?一般人魚の私とかはぜ~んぜん」

「あ、うん。私も研究とかするよ?そういうの好きだし」

「だって、ほら? 色んなものを掴める便利な足がこんなにあるんだもん。そりゃ、ハマるって」

「私はね~、人魚伝説について研究してたんだ~」

「そう、あの時に話した人魚から人になってお姫様になった、そういう話」

「あれってさ、小さい頃にお母さんから聞かされてて私も憧れてたんだけど……調べれば調べるほど無理なんだよね~」

「あの時にも話したでしょ?人魚が人になるなんて有り得ないって」

「遺伝子の関係上どうしても、ね? 魔法を使っても変えることが出来ないんだ……人魚を人にするには魔力の波長を人に合わせるしかないんだけど、人の魔力では弱すぎてちょっと無理なんだよね……だから、長い間に遺伝子侵略が起きてそれが結果的にああいう話になったと考えれば辻褄が……」

「あ、ごめん。つい語っちゃったけど、この話面白くないよね? ごめんごめん」

「要するに人の魔力は人魚には届かないから、身体を変質させるなんて無理ってこと……って、これでも難しかったかな? あはは……」

「研究者の性かな~。聞かれてもいないのにこういうの語っちゃうんだよね~」

「だからさ、一人で空回って、煮詰まって……で、気晴らしに外で歌を歌えば……まぁ、声かけてきた人間の男に化物って……はぁ」

「本当、君に会えてよかったよ~……」

「軽く人間に絶望しかけてたもん。あのままだったら、何か変な薬やら魔法やら開発してたに違いないね?うんうん」

「えと、私ばかり話しちゃったけど……君は、そういうの興味ないのかなぁ?」

「何か、研究してることとかは?」

「……ほぇ~、そうなんだ。人はそういうのあんまりしないんだ~」

「日々の暮らしで精いっぱい、か~。忙しいんだね~」

「ふぅん、でも、そっか……いつも色んな人に囲まれて働く、かぁ……それも何か、ちょっと楽しそうだね?」

「私って、基本一人で研究してるからさ。そういうのちょっと憧れちゃうかも」

「私も、人だったらそういう暮らし、出来たのかな?」

「ふ、ふふ、そっか。私は美人だからきっと引く手あまた、ね。ありがと♪」

「でも、私はそういうのはいいかな? そういうのだけで寄ってくるのってロクなのが居ないのは、今の時点でもう知ってるしね」

「……うん、一人、以外は……って、あ、君は私が困ってそうだから助けてくれたんだっけ? あ、はは、ごめんね~、一緒にしちゃって」

「でも、本当に会えてよかったと思うんだ」

「…………ねぇ? 今度、さ。前に言ってた。月と星空が満ちる海の舞台に、君を呼んでもいいかな?」

「その、私の、歌を聞いて欲しいなって」

「……ぅ、確かに、歌うだけならここでも出来るけど……うぅ、私はっ!えと、そこで君に歌いたいのっ!」

「……駄目、かな?」

「っ!わぁっ!ありがと!」

「それじゃ、準備出来たら迎えに行くから!」

「その……ちょっとばかりやることが出来たから、すぐにとはいかないけど、ね? 待ってて、欲しいな?」

「うん、約束、だよ?」

「……あ、もう夜が明けそうだね?」

「ごめんね?結局、こんな時間まで話し込んじゃって……今日も、お仕事、だよね?」

「あ、はは、は……あ、そうだ。これ、持ってって! 一日くらいは眠気を吹き飛ばしてくれるはずだから!」

「いやいや、お礼には及ばないよ!私のせいだから、ね?」

「うん、お仕事頑張って♪」

「また、会お~ね? バイバ~イ」

 少し間を空けて

「うん、やってみようかな? 人魚から、人になる薬……薬なら、何とか……難しいけど」

「ねぇ?人になったら、お嫁さんに、して……くれるよね?」

 少し不安そうに言って終了
 二話終了

 場面転換 実らない研究とすれ違い

「あぁ~、これもダメかぁ~! ん~~っ、はぁ……」

 大きく伸びをするイメージで

「やっぱり厳しいわね、人化薬……逆なら簡単なんだけど……」

「構造的には同じ部分があるんだから、不可能ではないはずなのよね……人の因子と蛸の因子……そこに魚の因子が複雑に絡み合ってる……私が普通の人魚だったらもうちょっと簡単だったんだろうけど……うぅん」

「やっぱり、ここよね……人化する、ということは現在蛸の足になっている部分は人の足にならなければならない……しかし、そこの情報が違いすぎる上に……こっちの方が質量も上だし、人の因子で侵略しようにもこっちの方が強力だしで……とくに質量がな~、やっぱり可愛い女の子らしい足にしないとよね? そうなると質量保存の法則が真っ向から敵に……」

 来客の音

「ん?誰? ……あぁ、久しぶりね? 確か……300年ぶりくらいだっけ? どうしたの?こんなところまで来て?」

「あは、は……ええ、そうよ。まぁ、ちょ~っと恥ずかしいんだけど、ね。私は好きな人と結ばれるためにこうして薬の研究ね。そっちは?」

「……ん?どうしたのよ?同じ蛸足同士……スキュラの仲間じゃない? 遠慮せずに、言ってみなさいって」

「……ん?その、好きな人?あれ?話したことあったっけ? ここ最近は会ってなかったから言ったことなかったと思うけど……」

「う、うん。人間の男の人でね? すっごくカッコよくて優しいんだ。私のことを見ても化物って言わなかったし、それどころか可愛いって、言ってくれたし……てへへ」

「で、それが?」

「……え? まぁ、そうね。今はこの通り研究してるからあんまり会ってないけど……それが何だってのよ?」

「…………へ?」

 呆然と呟くように
 それからまた呆然と

「………………え?」

 少し間を空けて

「……あの、洞窟で、女と楽しそうにしてるのを、見た? 嘘?」

「え、だって……彼には、私が……私が、居るんだよ?」

「う、うん、そりゃ、ほんの少しばかり会ってなかったけどさ……でもたかだか五年くらいだよ? それで……」

「え? 五年って、人の間じゃ結構な時間なの?」

「いや、いやいやいやいやいやいや! 私は信じないよ!」

「だ、だって!彼が、私を裏切るはずないもん! 私を、友達だって言ってくれた……私と居ると楽しいって言ってくれた……他の……あいつらなんかとは、違うもの……そんなはず」

「そんな……はずは……そんなはずはっ!」

「……うん、とりあえず、ありがと。私、行ってみるから」

 間を空けて

「嘘……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っ」

 書いてある数は気にせずに段々と早口で呆然と口にするイメージで

「そこ、は……そこは、私の場所だよ?」

「何で、知らない女の人と楽しそうに話してるの?」

「何で、私が教えた景色を、私以外の女と一緒に見てるの?」

「何で……人間の女と楽しそうに笑い合ってるの?」

 しばらく見て呆然と呟く感じで

「…………そう……なら、仕方ない、かな」

「君は……君だけは、絶対に、私だけのものなんだから……他の女なんかに渡さないから……待っててね?」


 間を空けて

「見ぃつっけた♪ ふふ、こんなところに居たんだ?」

「やっほ♪ 五年ぶりだね? 迎えに来たよぉ?」

「……ん?久しぶり?……ふぅん、そうなんだ……聞かされたときには信じられなかったけど、人間からしたら本当にそうなんだ……へぇ」

 少し暗い声で

「うん。私たちはね、結構長く生きるからさ? これくらいはそんな時間たってないつもりだったんだよ? だから、まぁ、そんな……待たせてるつもり、なかったんだけど、ね」

「それじゃぁ、そっちに合わせて……ねぇ?久しぶりに二人っきりで話そうよ」

「あの……私たち二人だけの洞窟で、さ」

 耳元で

「いいよね?」

 少し暗い声で
 離れて

「うん、ありがと♪ちょっとばかり聞きたいこともあるからさ。ゆっくり……ゆ~っくり、お話しようね?」

「じゃあ、行こっか……」

 間を空けて

「ここで話すのも久し振りだねぇ? あの時以来かな? 研究に集中して、段々と会う頻度を減らしていって……終わるまでは、って思ってたんだけど」

「ん~? あぁ、研究は……まぁ、上手くはいかなかったかな? もう少しってところまでは来てたと思うんだけど、ね……ん~、もうどうでもよくなっちゃってさ~」

「もう、使い道が、無いから」

「まぁ、成果は出たよ? それも……すぐに見せてあげられると思う。楽しみにしててね?」

 明るく口にしてから
 少し暗い声で

「それで……さ。私が聞きたいことなんだけど……うん」

「あの女、誰?」

 暗い声で↑

「この間さ、見ちゃったんだ。君がここで、女の人として楽しく遊んでる姿を、さ……あれは、どういうこと?」

「なんで、私以外の女とここに来ちゃったのかな?」

「……そう、ここの景色が綺麗だから、か」

「私はね、君とここの景色を見るために教えたんだよ? それなのに……他の女と来るなんて、それはないんじゃない?」

「うん……酷い行いだと思う。反省して? 許さないけど……」

「だって、さ。私言ってたじゃない?」

「研究が終わったら迎えに来るって、すごいサプライズをあげるから、それまで待っててって、さ?それなのに……」

「あぁ、でも、うん。ちょっと取り乱しすぎたかな? もうちょっと、聞かなきゃいけないことあったね。君の口から、直接……これ次第では、少し話も変わるかもしれないから」

「ねぇ?」

「君にとって……あの女は、何?」

「ただの、友達?」

「それとも知り合い?」

「……もしくは……」

 耳元で

「恋人?」

 更に耳元で

「ねぇ? 答えてよ?」

 少し待ち、離れて

「そっか……そっかぁ……恋人、かぁ、うぅぅ」

 泣きながら言う感じで

「なん、で? どう、して? 待ってて、くれなかったのぉ?」

「好きだったのに……ずっとずっと……あの時から大好きだったのに……何、でぇ?」

「ひぐっ、えぐっ、うぅ、うぇぇぇぇぇぇっ」

「やだ、よう……嘘だって、言ってよぉ……信じたく、ないよぅ……うぅぅ」

「……たった、五年だよ? たった、それだけで……他の女にとられるなんて……そんなの、ないよぅ……うぅぅぅ」

 ひとしきり泣いて、慰められた感じで
 
「……うん、うん、そう、なんだ……うん……五年、も経ったから、もう会えないと思ったんだ?」

「そう、なんだ……だから、私を忘れて……あっちの、女に?」

「ぅ、うる、さい……うるさいっ!そんな言葉、聞きたくないよっ! また、会えてよかった? なら……なら!私をお嫁さんにしてよ!私を愛するっていってよっ! 私を……好きだって、そう言ってよぅ……うぅ、うぅぅ」

「そっか……そう、なんだ? なら……ねぇ?最後に、お願いして、いい?」

「私、あなたとキスしたい……」

「そうしてくれたら、もう忘れるから……人間に恋したことは綺麗さっぱり忘れて海に帰るから……だから」

「……そう、最後だっていうのに……それでも恋人は裏切れないってそういうこと、言うんだ?」

「じゃあ、いいよ。それで……ギュッとハグしてくれたら、それで、忘れるから……だから、ね?」

 耳元

「最後に……私を、思い切り抱き締めて?」

 抱きしめられる音
 片側の耳元から

「ふ、ふふふ、ありがと……やっぱり、思った通りだ……好きな人に抱き締められるのって、温かいね?」

「本当に、ありがと……これで……これで……」

「自分の中での踏ん切りがついたよ」

 絡みつく音

「あはっ♪あはははははははははっ!つ~かまえた♪」

「これでもう、好きな人を別の女の元になんかやったりしない!」

「私の元から離したりしない!」

 耳元で

「これからはずっと一緒だよぉ?」

「あ・な・た♡」

 水に入る音

「さぁ、誰にも邪魔の入らない深海の世界へ行きましょう?」

「大丈夫……そういう魔法は得意だから♪」

 耳元で

「一緒に、海の底で幸せになろ?」

「大丈夫♪きっと……戻る気なんてなくなるから♪」

「そうなるくらいにまで……私が幸せにしてあげるからね♡」


 場面転換

「いってらっしゃ~い、サメには気を付けるのよ? あいつら割と見境なく襲ってくるからね~?」

 扉を閉める音

「ふぅ、あの子行ったわ。今日はお友達とサンゴ礁を見に行くんですって、怪我しないか心配ねぇ」

「で・もぉ……ふふ♪」

 耳元で

「あの子が産まれてから久しぶりの二人っきりね? あ・な・た♡」

 離れて

「ふふ、照れちゃって♡ もう夫婦になってからどれほど経つと思ってるのよ? いつまで経っても初心なんだから♡」

「……でも、はぁ、無事に今日まで家族皆で幸せに暮らせてきてよかった」

「こんなふうにのんびりと過ごせるようになるまで、色々な試練があったもの……」

「あの子、結構病弱だったものね……本当に、無事にすくすくと育ってくれて……よかったよかった」

「あなたもそう思うわよね?」

「ふぅ、こうしてると……何だか昔を思い出すわね」

「あなたと初めて出会って、あの洞窟で逢瀬を重ねたから……ずっと幸せだったけど……あの頃の幸せは今でも忘れられないなぁ……甘酸っぱい恋物語だもの」

「あなたも、そうよね?」

少し間を空けて

「……ん~? 昔は人の足だった気がする? ぷ、あはは♪」

「ま~たそれ言ってるの?」

「あなたの足は~、昔も今も……」

耳元で

「タコの足だったでしょ?」

 離れて

「あなたは産まれた時から私と同じスキュラだったじゃない?しっかりしてよね?」

「もう、あれから五百年も経ってるんだから♪」

「……あ~、ごめん。今のはこっちの話、気にしないで」

「ねぇ?それよりぃ」

耳元で

「久しぶりに二人っきりなんだからさぁ?」

「こ・の・あ・とぉ♡」

「ふふっ、ふふふふふふふ♪」

「私、そろそろ二人目が欲しいなぁ、なんて♡」

 囁き

「今日は寝かさないからね? 私の旦那様♡」
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
人魚伝説に憧れたスキュラ…… もうこれであなたは海から出られない
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
泣きんぎょ
ライター情報
 ASMR、シチュボ台本を主に書いています。
 細かい指定や、指示が書いてあることがありますが、不可能な場合や不明瞭なことがあれば代替あるいは無視してもらっても結構です。
 また勢いのまま書き連ねているため誤字や脱字が見られる場合がありますのでご使用の際はお気をつけ下さいますようお頼み申し上げます。
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