オカルトサークルの先輩に呼び出された。
恋人である先輩はある告白をする。
己は宇宙人であると――。

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午後九時。
ぴったりだ。
君は律儀な男だな、後輩君よ。

さて、君に問う。

宇宙人は好きか？

いい答えだ。
我々オカルトサークルの副部長にふさわしい答えだ。
そして、私の恋人としてもふさわしい答えだ。

だが、私は知っている。
君が浮気をしていることを。

最近、都市伝説に心を奪われているそうじゃないか。
宇宙人関係の本を売って、資料を買いあさるまでにな。

ああ、知っている。
私は君の全てを知っている。

今まで黙っていたんだが実は君にはチップを埋め込んでいてね。
四六時中監視していたんだよ。

冗談じゃない。

何を言ったら信じてもらえるかな。

そうだ。
私は知っている。

君が都市伝説である八尺様で興奮していることを。

そんな背の高い女が好きか？
八尺、八尺だぞ？
二百四十センチだぞ？
いいのか？
キスするのも大変だぞ？

この変態。

いや、なんだその顔は。
罵られて喜ぶな。
そういう趣味があったのか？

え、ウソ。
ちょっと引いた。

（咳払い）

だが、私は君を愛している。
だから、やっぱり君には宇宙人を愛してほしい。

どういうことか？

そうだな。
ついにこの時がやってきたか。
うん、仕方ない。

そう、私は宇宙人なんだ。

心配そうにするな！
本気で言ってるんだぞ、ばーかばーか！

だから、私は宇宙人なんだ！
よしよしするな！

何？
都市伝説にうつつを抜かそうが私への愛は変わらない、だと？

そ、それは嬉しいことを言ってくれるな。

だが、いつかはその心も離れていくんだろう？
私のものではなくなってしまうんだろう？

宇宙人から都市伝説に乗り換えたように。

だったら、私は君を奪う。
そう、君を私のモノにするんだ。

キャトル・ミューティレーションでな。

君も知っているだろう。
あの宇宙船がほわんほわんってのを出して、牛や豚をさらっていくやつ。

それは知っている？
だったらどうしてそんな不思議そうな顔をするんだ。

宇宙船はあるぞ。
私の自家用宇宙船が。

もう少しで迎えに来る。

待って待って。
頭なんか打ってない。
病院に連れて行こうとするな。

ほら、空を見てみろ。

あれ。
あれが私の宇宙船。

またたいている星じゃない。
宇宙船だ。

もぅ、信じてくれよ。

ち、違う。
かまってほしいからとかじゃなくて。

嫌なんだ。

私はこんなにも君のことが好きなのに。
君は私のもとから離れていく。

君がどれだけそれを否定しようとも、私は今回のことで確信したんだ。
いつか、君は宇宙人である私を捨てると。

だって、宇宙人なんて不気味だろう？
好きな人間なんてそんなにいない。

君は珍しいんだ。

笑顔で宇宙人のことを語ってくれた。
それがどんなに嬉しかったか。

こんな場所に不時着してしまった私をどれだけ救ってくれたか。

そう、五十年前に不時着したんだ。この星に。
そこから、人間の頭をいじくり、時に殺し、ここまで生きてきたんだ。

そこで君に出会えたんだ。

もうすぐ迎えが来る。
一緒に行こう？

見ろ。
宇宙船が近づいてきた。
な？　星じゃなかっただろう？

怯えないでくれ。

大丈夫。
必ず幸せにする。

宇宙の隅々まで旅行しよう？
煌めく星々を見て回ろう？
ミステリーサークルを作るなんていうイタズラもしながらさ。

そうだ。
私の故郷にも来てほしい。

なに、私の家族は君が思い浮かべる宇宙人そのものの姿だが、怖がることはない。
君を受け入れてくれる。
だって、君は私の婿になるのだから。

逃げるのか？
逃がすとでも思ったのか？

はぁ……。
これを使うのは嫌だったんだが……。

仕方ない。
今から君の頭をいじくろう。

恐怖も嫌悪も都市伝説も、全て消してやろう。

ほら、おいで。
こっちに。
そう。
一歩、一歩。

いい子だ。

さあ、君を作り変えていこう。
目覚めたら君も立派な宇宙人だ。

だから、今はおやすみ。
愛しい、君。

・台本（ゆるボイ！）
オカルトサークルの先輩はヤンデレ宇宙人。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト