騒がしいハロウィンパーティを抜け出すと、みんなに優しくてちょっと心配な先輩が。
――君、私のこと嫌いでしょ？
突然問われ、驚いていると……。

可愛らしい青春の話。

pixivでも公開しています。

おやおや、そこにいるのは？

やっぱり君か。

ハロウィンパーティ、楽しんでるかね？

あはは、やっぱり。
君ってこういう場所、苦手そうだもんね。

お疲れさま。
お姉さんがジュースを恵んであげよう。

はい。

お金なんていいよ。
君は後輩なんだから、先輩に甘えなさい！

それに、君のコスプレ姿すっごい素敵だし。

吸血鬼、好きなの？

ああ、君の友達、ちょっと押し強そうだもんね。

でも、似合ってる。
ナイスチョイス！

え、私は裏方だからコスプレなんていいよ。

私は縁の下の力持ちだから。
みんなが楽しんでくれるのが一番！

なーんていうと、君は嫌そうな顔するよね。
知ってるよ。

ねえ、君。
私のこと嫌いでしょ？

嘘つかなくていいよ。
いつも私のこと、何とも言えない顔で見てるよね。

ふふ、君は私に何を感じ取ったの？

自分より他人を優先する、優しい優しい先輩のどこが嫌いなのかなぁ？
教えてくれる？

また黙る。
ねえ、言葉にしてくれないと分からないよ？

ああもしかして、口に出せないほど酷いことを言いたいのかな？

例えば、偽善者、とか。

びっくりした顔、可愛いね。
図星だった？

そんな否定しなくても。
面白い。

でも、その通り。

優しくてとってもいい人。

このポジションを買って出るのは、みんなに好かれたいから。

好かれると得なんだよー？
いろいろ、ね。

確かに。
都合のいい人間と思われてるんだろうね。
自覚はしてるよ。

……でも、別にそれでもいい。

みんなが私を好きになってくれるなら。

さて、そろそろパーティに戻らないとみんな心配してるんじゃない？

ん、どうしたの？

ああ、これ？
もし、コスプレを要求されたらって思って一応持ってきただけ。

欲しいんだったらあげるよ。

わっ、ちょっと何するの！

はぁ。
ただの猫耳のカチューシャで可愛いって褒められてもね。

っていうか、さっきの私の話聞いといてよく可愛いなんて言えるね。
バカじゃない？

ここで笑う？
不愉快なんだけど。

そうだよ、これが本当の私だよ。

何言ってるかさっぱりだね。
君が心配してたのは、みんなに優しい先輩でしょ？

さっきのが私の本音。
損得勘定で優しい人を演じてるだけ。
無理なんてしてないし。

はぁ？
しつこいなぁ。

違うって。

……違うけど。

ああ、もうめんどくさい。

ちょっと手を握っただけでしょ？
何びっくりしてるの？

ほら、行くよ。

どこにって……。
察しが悪いなぁ。

この会場を抜け出すの。

そうだね。
二人でいなくなったら、みんな心配するだろうし、噂にもなっちゃうかもね。

でも、それも悪くないかな。

なーんて。

ちょっとした気まぐれだよ。
私の偽の優しさを上回る、お人よしの君が気になっただけ。

また笑う。

あはは、もう。
ほんっと、気に喰わないな！

あと、そうだな。

……ありがとう。

さてねぇ？
偽善か本音か、見抜いてみなよ？

君だったらできるでしょ？

さぁ、見つかる前に行こう。
ほらほら、早く！

いっくぞー！

【終わり】

・台本（ゆるボイ！）
ハロウィンパーティで、優しい先輩（偽善者）と仲良くなる話。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト