命を奪うことが大好きなアサシンちゃんに、命の尊さをわからせようとひと芝居打つ！
だが、違うそうじゃない。

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ご主人様、ただいま戻りました。

ええ、仕事はばっちりこなしましたよ？
なんせ、私はこの世で一番のアサシンなのですから。

忠誠を誓うご主人様のためなら、どんなにつまらない仕事も……仕事も……。

つまんなーい！！

ご主人様！！
つまんないです！！

毎日毎日、お花の水やり、家庭菜園、メダカの水槽掃除！！
つまんないつまんないつまんない！！

私はアサシンなんですよ！！
なんで、こんな仕事させるんですかー！！

私は！
命を！
奪いたいのです！！

だからこそ、ってなんですか。

私を洗脳しようたって無駄ですよ。
「命を大事に」なんて綺麗事、大っ嫌いですから。

だから、いくら花を咲かそうが、野菜を育てようが、メダカをさばこうが――。

あ、違――。

さばいてませんよ？
あんなちっさな魚、三枚おろしに出来るわけないじゃないですか。

はい。
三枚おろしにしました。

己の技量を試したくてー。
あはは、楽しかったですー。

あんなに生き生きと綺麗な目で泳いでたあの子が……私の手の中で……。
ふふ、ふふふ。

ねえねえ、ご主人様ぁ？

私を「まとも」な人間にしようなんて馬鹿げた話ですよ。
頭のネジ外れちゃってるの、わかるでしょ？

だからぁ？
使えばいいんですよ。

消したい人間、みんな、みーんな、このアサシンちゃんが始末してあげますよ。

ふふ、かたくなですねぇ？

ねえ、ご主人様。
どうして私があなたの側にいるか、知ってます？

あの時助けてくれたから、じゃないんですよ。

ご主人様、あまりにも綺麗だから。
汚したくなっちゃったんです。

この世のいいところを全部ぜーんぶ集めたようなあなたを真っ黒に染め上げたくて。

いい人ですよ、ご主人様は。
私が見てきた人の中では、ね？

ねえねえ、ご主人様。
欲に負けて、私に命令してくださいよ。

嫌な人間を消せ、って言ってくださいよ。

はぁ……。
つまんない。

もうやめやめ。
ご主人様のアサシン辞める！

つまんないもん！

だからさ、最後にご主人様の命を私の手で――。

あ、なんか昂ってきた。

こういうの初めてだな。
愛着のあるものの命を消すのって。

ああ、いいなあいいなぁ。

やっぱり私は慈しむよりも消す方が好き。
大好き。

だから、ご主人様。
さよなら。

……。

ご主人様？

胸に手をあてて。

祈りでも捧げてるんですか？

あはははは！
馬鹿にもほどが――。

え、ちょっと。

心臓、痛いんですか？

ご主人様、ご主人様！？

落ち着いて息をしてください！

そんな、なんで、なんで！？

私、何もしてない。
何もしてないのに！！

やだやだやだやだ！！

勝手に死なないでよ！！
ご主人様！！

つまんない仕事もするから！！

ねえ、何でもいいから言ってよ！！

……お願い。
死なないで。

え、ご主人様。

だ、大丈夫なんですか！？

よかった……。

……はい。
ご主人様がいなくなると思ったら私――。

とっても、とっても辛くって。

う、うぁああ。

ごめんなさい。
もう二度とご主人様のこと消そうとしないから。

いなくならないでッ……。

うぅ……。

その、ご主人様、病気とか、その。

へ？　苦しむフリ？

フリ！？

ひどい！！

すっごく心配したのに！！

う、でも、おっしゃる通りです。

ご主人様のおかげでやっと理解できました。
命の尊さというものを。
その愛しさを。

だから私――。

ご主人様の敵を殲滅しますね。

違うそうじゃない？

何がですか？
あの名曲ですか？
歌いましょうか？

むぅ。
何が違うんですか。

まったく、ご主人様は意味不明です！

でも、好きですよ。

何照れてるんですか。
可愛いですね。

ふふ、あなたが気づかせたんですよ？
この愛しいという気持ちを。

責任取って、私に命の慈しみ方を教えてください。
愛し方も。

私とあなた、二人ですることといえば。
ふふ、簡単ですよね？

え、収穫したエンドウの皮むき？

違うそうじゃないー！！

・台本（ゆるボイ！）
サイコパスなアサシンちゃんをわからせたかったが、違うそうじゃない。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト