あらすじ

　音が聞こえるの……
　そう呟く彼女が語るのは、過去の記憶。
　前世の自分の記憶……多分、そうじゃないかと彼女が思う、そういったもの。
　能天気そうに見える彼女ではあるが、ぼんやりとした顔の裏で深刻に悩んでいた。
　前世での相手があなただったから、だから、声に従って愛しているのか？
　前世の人格のせいでこうなっているのか？
　自分は自分の気持ちだけで愛してるんじゃないの？
　そう、悩んでいる。
　ソーセージを振りながら
　その姿にあなたは小さく溜息を吐くしかなかった

本編

「ねぇ、自分のこの感情がどこから来ているものなのか……考えたことある？」

「頭から？　それとも……心から？」

「私は、ね……最近、すっごく、すっごく……思うの……この想いは、どこからなんだろうって」

「あなたは？」

　少し待ち

「……そっか……そう、言ってくれるんだ……ありがと」

「私も好きだよ、大好き……でも、ね」

「私は……ちょっと、悩んでる……それっていうのが、ね」

「音が……聞こえるの」

「ぼうっと、耳を澄ませていると……剣と剣がぶつかり合う剣戟音、大地を走る馬たちの蹄の音……」

「それで、昔の私が、ね、言うの……」

「この人を愛しなさい……もう二度と、運命を手放さないで……今度こそ、添い遂げてって」

「その人の顔が、ね……あなたなの」

「離すなって……言う、その運命の人の顔が……あなたなの」

「だから、ね……分からなくなる」

「私は……私があなたを好きになったから、あなたと共に居るんだと思ってた……好きになって、結ばれたんだと思ってた」

「でも……もしかしたら、前世のせい、なのかな？」

「今の私じゃなくて……前の……私じゃない私の気持ちが、出どころ、なのかなって」

「それって……納得出来ないの」

「だって、前の私は、私じゃないから……」

「今の私とは関係のない……まったく別人の気持ちに引っ張られてるんじゃ、ってそう思ったら……私の、この気持ちが、途端に弱いものに思えてきて……」

「私は……前世とか関係なく、私が私だから好きになった……その、はずなのに」

「やっぱり……そう、なのかな？前世の、せいなの、かな？」

　何かを振るう音

「あ、折れた……負けちゃった……あんまり、楽しくないね。このソーセージチャンバラ……後で焼きそばに入れるから、別に、いいんだけど……具が、ソーセージばっかりになっちゃう……栄養が、偏る……」

「……んぅ？何？その顔？」

「…………？別にいいじゃない、ソーセージ振りながら真剣な話しても……可笑しかった？」

「……んぅ？　えと、どうして、そうなるか、分からない、んだけど」

「何？その、私らしいから気にするなって……」

「意味わかんない……それとこれと、何の関係があるの？」

「私は真剣に悩んでるのに……前世は関係ないって言いきっちゃってさ……」

「……はぁ、でも、そうだよね」

「悩む前に、証明すれば、いいだけ……だよね」

「仮に前世が関係しているのだとしたら……それ以上に愛を示せばいいだけ」

「大好きだって、証明すればいいだけ」

「前世なんかに、私は負けない」

「私は、私だからあなたを愛した……そこに、特別な理由なんて関係ない」

耳元で

「大好き、だから……前世の私なんかに、負けないから……」

「ねぇ？今度は……ソーセージじゃなくて……バナナで勝負しよ？」

「あなたが持つ……たった一つの、バナナで」

「私……負けないから、ね？」

「絶対に……絶対に絶対にっ、あなたは、誰にも渡さない」

「あなたは、私のモノ」

「前世の私になんか……絶対に渡さない……この想いは、私の想いは私のモノ……負けたりなんかしないから」

　囁き

「しよ？」

「遊んで、笑って……幸せになって……」

「絶対に、絶対に……私の想いは私のモノだって証明してみせる、から」

「だ・い・す・き♡だよ？」

「いただきます♡」

・台本（ゆるボイ！）
ダウナー系不思議ちゃんはソーセージを振りながら呟く、ヤンデレな悩み
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
泣きんぎょ