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約束
written by 山葵餅
  • 恋人同士
  • 切ない
  • 先輩
  • 幽霊
  • 悲しい
  • 約束
公開日2022年02月22日 22:00 更新日2022年02月20日 12:54
文字数
2081文字(約 6分57秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
先輩(幽霊)
視聴者役柄
後輩(高校生)
場所
神社
あらすじ
とある神社に、一人の幽霊と彼女に会いに来る一人の少年がいた。
二人を繋ぐ約束と思い出とは・・・
本編
やぁ後輩くん、今日も来てくれたんだね。
会えて嬉しいな。
私は後輩くんに会いたいと思ったとき、声を聞きたいと思ったとき会いに行くことができないから、ちょっぴり苦しいよ。
そもそもここはあまり人が来ないから私が見る人は後輩くんと、あとは告白をしてカップルになる初々しい若人だけなんだけどね。
まぁ若人と言っても、歳自体は私とほとんど変わらないんだけど。
幽霊になったせいか自分が何年もここにいるみたいに感じるよ。
まぁ実際は私が死んでからまだ一年なんだけどね。
日にちなんてよく分からないけど、学校の始業式の日と、このあたりの春祭りの日が同じだから昨日が私の命日だってことだけは分かったよ。
それに君も少し大きくなった気がするし、一年前は新品だった制服もピカピカだった鞄も少し使われている跡があるしね。
私が卒業するとき君から告白してきてくれたでしょ。
その時は告白を断ったけど私と同じ学校に進学できたら付き合ってあげるよ、って言ったじゃない?
何も私は勉強できる人間なら誰とでも付き合うってわけじゃないんだよ。
君が告白してきてくれたときは本当に嬉しかったんだ。
正直今すぐにでも付き合いたいと思ったし。
だけど私が君の可能性を潰してしまうのだけは避けたかったんだ。
君は頭がいいくせに真面目にしてなかったからね。
私はね、君が勉強を真面目にするところを見たかったんだよ。
そして君は私の思惑通りちゃんと勉強して、この近辺だと一番難しい学校に合格してくれたわけだね。

だからあの日、私が死んだ日つまり君の入学式の日に「この樹の下で恋が成就した恋人同士は将来をともにする」っていう迷信を信じてここに来てもらったんだよね、私から告白するために。
告白のときに近くの木が倒れてくるなんて思いもよらなかったけど。
《視聴者が泣く》
ってどうして泣いてるの?
私は大好きな君の命を守ったんだよ。
仮にも運動部だったからね、君を突き飛ばして守るくらいはできたんだ。
だから笑ってよ、ありがとうって言って笑ってよ。

今日から君は後輩くんじゃなくて同学年になってしまったでしょ、だってほら私って留年してるし。
それで昔話もいいかと思ったんだけどな。あぁけどこれからも一生君のことは後輩くんって呼ぶつもりだから。
〚少し間を置く〛
って先輩の一生はもう終わってるじゃんとかツッコんでよ。
昔話はこれくらいにしてこれからの話もしよっか。
後輩くんはもう私と会うのをやめるべきだと思うんだ。
後輩くんはいつまでも私に固執するべきではないよ。
これからは今みたいに後輩くんが泣いてるときに後輩くんと一緒に泣いて、後輩くんの涙を拭ってくれる人を見つけてほしいんだ。
多分だけど私の未練って後輩くんの幸せな姿を横で見ることができないからだと思うんだよね。
後輩くんが足繁くこの場所に来てくれてることは素直に嬉しいんだよ。
だけどね、私に縛り付けてるように感じてどうしようもない気持ちになるの。
だから他に好きになれる人を見つけてほしい。
それでその好きな人を、後輩くんの選んだ人を私に紹介してよ。
そうしたら私は成仏できる気がするから。
なかなか首を立てに振ってくれそうにないね。
それならこうしよう、君と君の好きな人が夫婦になったときに私は君の赤ちゃんになるよ。
これだけこっちに留まってるといろいろあるからね。それくらいのわがままなら多分許してもらえるよ。
だから今日はもう帰って。
次私に会うときは恋人を連れてきてね。
バイバイ!

〚長く間を置いて〛
もう私の声は聞こえないかな。
〚泣きながら〛
どうして、どうして私が後輩くんのそばにずっといられなかったの。
私はまだ後輩くんと恋人らしいことが何もできてなかったのに。
あの日から恋人としての日々が始まると思ってたのに。
まだ後輩くんに名前すらちゃんと呼んでもらえてないよ。
ずっと先輩呼びだったから、恋人になったのを機に名前を呼んでもらう予定だったのに。
〚視聴者を見つける〛
ってなんでまだいるの!
ちょっと待って、一回気持ちを落ち着けるから。
スー、ハー。よし、落ち着いた。
本当に恥ずかしいところを見られちゃったな。
あんなにカッコつけたこと言ったんだからこういうところは見られたくなかったよ。
全部知られてるのに言うのは恥ずかしいけど、私は本当に私のことを忘れるべきだって思ってるよ。
もちろん、忘れてほしくはないけどね。
分かったらほら、早く帰って。
次私と会うときは絶対に彼女を連れてきてね。


【以下省略可】
後輩くんに別れの言葉を言って何度季節が巡ったんだろう。
あのあとも会いに来てくれた後輩くんの前に姿を現さなかったのは悪い気もするけど、許してくれるかな。
後輩くんと話すことができた一年間と、後輩くんのいなかった数年間。
同じ場所から同じ景色だけを見てたはずなのにまったく別のものに感じられたな。
けどそれも今日で終わりだ、やっと後輩くんがここに来てくれたから。
私は一生の中で一番大切な後輩くんとの約束を果たせなかったんだ。
死んでからした約束すら守れなかったから後輩くんにどう顔向けしたらいいのか分からないよ。
もう私の姿は見えないみたいだけどね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
約束
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅
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